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7.ハートの女王

Penulis: 朝比奈未涼
last update Terakhir Diperbarui: 2025-09-17 11:30:00

帽子屋屋敷の庭もかなり綺麗に整えられていると思っていた。

だが、ここはさらにその上を行く場所だった。

いや、正しくは、あまりにも鮮やかな赤色が多く、女王様の趣味全開という意味で、帽子屋屋敷より整えられており、上をいくという意味だが。

しかしさすが女王様のお城の庭だ。

豪華絢爛である。

帽子屋、三月ウサギ、ヤマネ、チェシャ猫と共にやって来たのはハートの女王様のお城。

どこを見渡しても赤、赤、赤で、綺麗なのは綺麗なのだが、赤色でお腹いっぱいになる場所だ。

ちなみに道中で眠ってしまったヤマネは、ただいま三月ウサギに担がれる状態で移動をしていた。

天敵のチェシャ猫がいても眠たい時は寝てしまうみたいだ。

「急げ!もうすぐ女王様が通られる時間だ!」

「わかっている!ああ!人手が足りない!」

「このままでは間に合わないぞ!」

道がよく分からないので、みんなの一番後ろをキョロキョロしながらついて歩いていると、見覚えのある光景が視界に入ってきた。

3人の大きなリアルトランプの服を着た男の人達が、せっせと白い薔薇に赤いペンキを塗って赤い薔薇を人工的に作る姿だ。

見覚え大ありだ。

あれは〝不思議の国のアリス〟でも出てくる場面ではないだろうか。

確か、庭の白い薔薇を赤くして、赤い薔薇にしないとハートの女王様に首をはねられるというやつでは?

ということはあの人達はこのお城の庭師?

「どうして薔薇を塗っているの?」

だけどそれは絵本では、の話。

ここでは違うかもしれない。

そう思って私は足を止め、絵本のアリスと同じように庭師らしき男の人達に声をかけた。

すると、

「赤い薔薇でなければ女王様に首をはねられる!」

と、全く予想通りの答えが返ってきた。

「じゃあ、私も手伝「何で白い薔薇があるのかしら?」

庭師の話を聞いて、手伝おうとした私の声を威圧的な女の人の声が遮る。

この威圧的な声、そして何よりもこのタイミングでの登場、まさか…

「「「じょ、女王様!」」」

私が気づいて声を出すよりも早く、庭師達が一斉に恐怖で支配された声を上げ、固まった。

庭師たちの視線は私の後ろだ。

私は女王様の姿を確認する為に、恐る恐るその視線を辿るように後ろへと振り向く。

すると、そこには年齢不詳の美女が、数十人…いや、ここから見えないだけで、もっとたくさんのトランプの男たちを従え、凛とした佇まいで立っていた。

真っ黒で艶かな綺麗な髪を後ろにまとめ、真っ白な肌。

印象的な真っ赤な口紅はその真っ白な肌に映え、身にまとうドレスも真っ赤で豪華絢爛な見た目だ。

まさに私のイメージしていたハートの女王様そのものである。

「今日はクロッケー大会の日よ?皆が集まるというのに私の自慢の庭に白い薔薇があるだなんて…。いつも何故できないのかしら?腹立たしい」

バサッとどこから出したのか真っ赤な扇子を広げ、パタパタと自身を扇ぎながら、女王様が庭師を順番に睨みつける。

「全員死刑でよろしくて?」

声音は優しい。

だが、目も顔も何もかも笑っていない。

女王様が怒っていることが傍で見ているだけでもひしひしと伝わってくる。

「「「……っ」」」

女王様の言葉は絶対なのか、庭師たちは絶望した表情を浮かべながらも、何も言えずただ下を向いていた。

え!?ちょっと待って!

「な、何でそうなるの!そんなことで死刑とかどう考えてもおかしいでしょ!?」

あまりにも突拍子のない話に、驚いて私は思わず声を上げてしまう。

どう考えたら逆にそうなるんですかね!?

「何?私に盾突くというのか?この小娘が…」

女王様のぶっ飛び具合に驚いていると、女王様が初めて視線をこちらに向けた。

前半こそ怒りそのままに私を睨みつけていたが、後半に差し掛かるにつれ、次第に様子が変わっていく。

私を睨んでいた目が、いつの間にか柔らかくなり、まじまじと女王様は私を見つめていた。

な、何だ?

「あぁ、愛らしい。なんて愛らしいお嬢さんなのかしら」

「へ?」

何故か頬を赤く染めた女王様が、グイッと私の顎を人差し指で上へと向かせる。

何だ、これ。

「もっと。もっとよく見せておくれ」

「…は、はぁ」

今度は両手で顔を挟まれてまじまじと楽しそうに女王様に見つめられ、私は状況がよくわからず気の抜けた返事をしてしまった。

頭の中はたくさんの?マークでいっぱいだ。

「お名前は?お嬢さん?」

「ア、アリス…です」

「アリス!名前まで愛らしい!」

この状況は何ぞや状態がそのまま続いていく。

楽しそうな女王様とわけがわかってない私。

「アリス!」

困り果てた所で、向こうの方から誰かがこちらに声をかけてきた。

誰かではない。この声は帽子屋だ。

声のする方へ顔を動かせば、そこには、

「女王様、本日はお招きいただきありがとうございます。そちらのお嬢さんは私の友人なのです。返していただけますか?」

と、涼しい顔で言っている帽子屋が立っていた。

もちろんその後ろには、にまにま顔のチェシャ猫に、不機嫌そうな三月ウサギ、そんな三月ウサギに担がれているヤマネがいる。

どうやら私がなかなか来ないので引き返してくれたみたいだ。

「これはこれは帽子屋御一行、よく来てくれたわね。今日は存分に楽しみましょう。そしてアリスは本日より私のもの。貴方のご友人ではもうなくってよ」

帽子屋に視線を向けていると、同じく帽子屋に視線を向け、微笑んでいた女王様がするりと腕を私の腰に回し、私を抱き寄せた。

はい?

「私の可愛い可愛いアリス。さぁこちらへいらっしゃい」

「え?」

女王様に腕を引かれて、帽子屋たちの横を通り抜け、真っ直ぐお城へ向かって歩いて行く状況に私はついていけず、女王様のなすがままだ。

ちなみに私がみんなの横を通る時のみんなのリアクションは完全にスルー。

え、ええ?

ちょっ、連れて行かれてるんですけど?

助けてくれないですか?

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