ログインとある場所に鳥さんたちの楽園がありました。そんな楽園の森の中、アヒルさんとカラスの子どもが一緒に住んでいました。 二人は違う鳥さんだけど、仲良しな親子なのでした。 ※表紙イラストはイラストレーター「ヨリ」氏からご提供いただいた。ヨリ氏のプロフィールは以下 イラストレーター ヨリ 保育士の傍ら別名義で作品制作を行う。 Instagramアカウント @ganga_ze
もっと見るこの世界のどこかに、アヒルたちが平和に暮らしている国がありました。その国の名前はアヒル帝国。とてもやさしい皇帝アヒルが治めている国です。そんな国の外れ、カラス王国との国境付近の森に、1羽で住んでいる変わり者のアヒルがいました。名もなきアヒルはある日、森の中で小さな小さなカラスの子どもと出会いました。これは変わり者だけどやさしいアヒルさんと、小さな小さなカラスの子どもの楽しい日常のお話です。
さてさてカラスの子どもを自宅に連れ帰ったアヒルさんですが、まずなにをすればいいのかわかりません。アヒルさんにはつがいはおらず、もちろん子育ての経験もありません。ともかくカラスの子どもが弱っていることはわかるので、どこかケガをしていないか調べることにしました。 あちこちきょろきょろ。あちこちさわさわ。あちこちツンツン。特にケガはなさそうです。喉が渇いているのかもしれない。アヒルさんはグラスに水を注ぐと、カラスの子の口元に差し出します。でもカラスの子に飲む元気はないみたい。困ったアヒルさんはグラスにストローを差し、そのストローの先端をカラスの子のくちばしに差し込んでみました。すると弱々しくですが、カラスの子は水を吸ってくれました。お水を飲んで少し落ち着いたのか、カラスの子の呼吸が穏やかになり、アヒルさんもひと安心です。 次はなにかを食べさせた方がいいだろうか。アヒルさんは考えます。とりあえずお庭に出ると立派なリンゴの木からひとつ実をもいでくると、皮ごとすりおろしてみました。それを木でできたスプーンでカラスの子のくちばしの中にいれてみます。カラスの子はゆっくりとですがリンゴを飲み込みました。そうしてリンゴを食べさせ終わると、アヒルさんはカラスの子を自分のベッドに寝かせました。その顔を心配そうに覗き込みながらその夜は更けていくのでした……。お花見からしばらく経って……完全復活を果たしたアヒルさんはにわとりのこっこちゃん、カラスの王様ノワールと共に王宮の庭でお茶をしていました。お茶菓子は八咫烏印のようかんです。そこに槍をもった衛兵カラスが飛んできます。「国王陛下、ご歓談中失礼いたします。部下が怪しい生き物を捕獲いたしました」「変な生き物? 見たい!」 まずはコッコちゃんが食いつきます。「かあも!」 そこにノワールも参戦します。 アヒルさんは、危ない生き物だったらどうするんくわ? と難しい顔をしています。 見たい見たーい! と騒ぐ二人にアヒルさんが困っていると、衛兵カラスが、アヒルさんに耳打ちします。「ひとまず危険はないか検査しておりますし、檻にも入れてあります。ご安心ください」 アヒルさんはため息をつくと、ノワールたちをともなって地下に様子を見に行くことにしました。◆◆◆「だせー! うーちゃんは鳥さんだー!」 檻の中で暴れているのはうさぎさん。アヒルさんははっきりと言いました。「おまえはうさぎ、哺乳類くわ。鳥じゃないくわ」「ちがう! ぼくらは鳥! 一羽二羽って数えるでしょ!」「へえ、こんな鳥さんもいるんかあねえ」 ノワールはすっかり信じてしまい、アヒルさんは自分の額を押さえました。「うさぎさんがカラスの国でなにしてるの?」 コッコちゃんが尋ねます。「うーちゃんも鳥さんの一員として、カラスさんたちと友達になりたいぴょん!」 アヒルさんはなんだかあざとそうなうさぎくわなあと思いましたが、ノワールは違いました。「ありがとうかあ! ぜひお茶会に参加してってかあ」 ノワールのカラスの一声で、うーちゃんの釈放がきまりました。
永い永い夢の中をまどろんでいたアヒルさん。でもずっとずっとずっと、だれかに呼ばれている気がしました。だからアヒルさんはがんばって目を開きました。するとそこには泣きながらも笑う、カラスの子とこっこちゃんがいました。「どうして……」 泣いているんくわ? という言葉は声になりませんでした。カラスの子とこっこちゃんに抱き着かれたからです。2人に抱き着かれたアヒルさんは、そのぬくもりにほほえみました。 優しいものがたりは、これからも続きます。 というわけで、カラスの子とコッコちゃんはアヒルさんの回復祝いをすることにしました。 アヒルさんのおうちの庭には、唯一人間界から持ち込みアヒルさんが育てた大きな桜の木がありました。 その木の下にレジャーシートを敷いて、コッコちゃんががんばって用意したごちそうを並べます。 いつもは料理をするアヒルさんも今日はお祝いされる側、しずかに桜の木の下でさくら色をしたジュースを飲んでいました。 アヒルさんにカラスの子が質問します。「アヒルさん、アヒルさん、この桜の木にはどんな想い出があるんですかあ?」「くわ? そうくわなあ。この木はくわが人間界から逃げるとき、助けてくれた存在からもらった小さな木から育てたのくわ。いつの間にかおっきくなったがなあ。くわくわ」「……人間界、やっぱり怖い場所なのかあ?」「……人間にもいろいろいるくわが、凶悪なのが多いくわな」「そうなのかあ」 人間とお友達になってみたいカラスの子はざんねんそうです。「まあまあこけこけ、とりあえずたべましょうこけ」 コッコちゃんがお通夜ムードを盛り上げます。 新鮮な卵を使った野菜の揚げ物をカラスの子に勧めます。「いただきます。……おいしいかあ!」「こういった「料理」をつくったのも人間くわあ」「かあ? 人間って不思議かあ」 カラスの子が首をかしげる中、お花見は続きました。
それからカラスの子と白カラスの盛大な結婚式が開かれました。お后様をえたカラスの子は成長し、立派な王様になりました。そしてたくさんの子宝にも恵まれました。 カラスの子はアヒルさんへの今までの感謝の気持ちを込めて、彼にナイトの称号を与えました。なんとカラス以外がカラスの国のナイトになったのは初めてのことでした。そしてナイトになったアヒルさんはいつまでもカラスの子と一緒にいて、公私ともにカラスの子を支えました。 さてひよこのコッコちゃんも立派なにわとりになりました。そして熱烈な求婚をへてアヒルさんと結婚しました。にわとりになったコッコちゃんは毎日カラスの国に朝を伝えるお仕事をすることになりました。 そんなたいへんながらも楽しい日々は過ぎていき、アヒルさんはかつてカラスの子と過ごしたアヒル帝国の家に帰ってきていました。アヒルさんは重い重い病気になってしまったからです。 アヒルさんはかつてカラスの子と一緒に寝た思い出のベッドで、ぐったりと横になっていました。その周りにはカラスの子とコッコちゃん、そしてアヒルさんとコッコちゃんの子どもがいました。「かあ……死なないでアヒルさん……」「……もう、おまえはひとりぼっちじゃないからだいじょうぶくわ」「そんなこと言わないでかあ……父さん……」 カラスの子はずっと呼びたかった呼び方でアヒルを呼びました。「父さん」と呼ばれたアヒルは少しだけ微笑みました。「……ノワール、コッコ、そしてくわが子よ。楽しかったぞ」 そういってアヒルさんは目を閉じました。カラスの子やコッコちゃんたちが泣いているような気がしましたが、アヒルさんにはもうどうすることもできませんでした。 そしてアヒルさんは永い永い夢をみるのでした。生まれてから、今日までのことを。 カラスの子と過ごした日々。 コッコちゃんと過ごした日々。 すべてがアヒルさんの大切な思い出です。 優しい眠りの中でアヒルさんはとても、幸せでした。
「こほこほ」 にわとりの里からカラスの国の宮殿に帰ってきたアヒルさんは、1人自室で咳をしていました。もともとヒナの頃にひどい環境でそだったアヒルさんはあまり身体が丈夫ではありませんでした。そんな折、部屋の扉がノックされました。「どうぞくわ」「失礼しますか。アヒルさん、相談があるかあ」「どうした?」「実は……」 カラスの子は1枚の写真をアヒルさんに見せました。そこには珍しい白いカラスが写っていました。「かあ、この子にひとめぼれしてしまいましたか! どうすればいいか?」「くわあ?」 アヒルさんもあまり恋愛関係は得意ではありませんでした。とはいえカラスの子の悩みをむげにもできません。「とりあえずラブレターを書くわあ」「かあ!」 さっそくつくえにむかったカラスの子は、アヒルさんの添削を受けながらラブレターを書きました。そうしてラブレターを送ったカラスの子ですが作戦は見事に成功。愛しの白カラスと文通にこぎつけました。しばらくは手紙のやり取りをつづけていましたが、カラスの子はアヒルさんのアドバイスで、お城で開かれる舞踏会に誘ってみることにしました。そして今日は舞踏会の日、カラスの子は朝から緊張していました。「そんなに固くなるなくわあ」「でもおでもおかあ」 そんな状態で舞踏会は始まりました。カラスの子がきょろきょろと白カラスを探すと、舞踏会のはじっこにちょこんといるのを見つけました。カラスの子は急いで駆け寄ります。「か、かあ! はじめましてか!」「はじめまして。カラス王様。この度はお招きいただき誠にありがとうございます」「あ、あの! かあと1曲踊っていただけませんか!」「もちろんです」 2人はしっとりとした曲が流れる中、ゆっくりとダンスを楽しみました。でもカラスの子は白カラスの羽を握ったことでドッキドキでした。2人の長くて短いダンスはやがて終わりを迎えました。でもカラスの子は白カラスの羽を離しません。白カラスは不思議そうにしましたが、カラスの子は意を決したように口を開きました。「……かあと、かあの、お后様になってくれませんかあ」 白カラスは驚きましたが、すぐに優しく微笑みました。「わたくしでよろしければよろこんで」「……え? ほんとにいいかあ?」「はい」「……やったかあ!」 カラスの子はうれしくて白カラスを抱きしめました。そ
旅館にお泊りした次の日。荷物を旅館から宅配してもらうことにしたアヒルさん一行は、せっかくなので帝都を観光していくことにしました。帝都にはたくさんのお店が立ち並び、たくさんのアヒルたちで賑わっていました。その様子にカラスの子とコッコちゃんは目を輝かせましたが、人混みが嫌いなアヒルはちょっぴり辟易です。「あれはなにかあ?」「これはなにぴよ?」 なんにでも興味を示す2人のお世話をしていると、不意に後ろから声がかけられました。「お、王子!? 王子ではありませぬか!?」「?」 三人が振り返ると、そこにはおじいさんカラスがいました。「おお、そのご尊顔! 間違いなく王子! よくぞご無事で!
遅くまで海で遊んだアヒルさんたちは、アヒルさん御用達の海辺のお宿に向かいました。少し古そうな宿を見てコッコちゃんは一言。「ぼろっちいぴよなあ」「文句があるなら帰れくわ」 慣れた様子でチェックインするアヒルさんをしり目に、カラスの子とコッコちゃんは宿の中をきょろきょろ。外見はぼろいけど、中はしっかりお掃除されていて綺麗でした。「ほら部屋いくぞ」 鍵を受け取ったアヒルさんに連れられて部屋に入ったカラスの子とコッコちゃんはオーシャンビューの窓からの景色に歓声をあげます。「ぴよー! 夜の海きれいぴよー!」「かあかあ!」 はしゃぐ二人をしり目にお茶をいれたアヒルさんは静かに一服するの
夏のとある暑い日。またひよこのコッコちゃんがアヒルさんの家を訪ねてきました。「ぴよー! 海いくぴよ!」 ひよこは水着にうきわにシュノーケルにゴーグル。泳ぐ気満々です。「しょうがないくわね……。いくかノワール」「海? よくわからないけどいくかあ!」 アヒルさんとカラスの子も海パンを履くとコッコちゃんを伴ってまずは川に向かいます。「かあ? ここは川かあよね? 川が海なのか?」「川を下ると海にいけるのくわ」 そういってアヒルさんはもってきたゴムボートを膨らませると、カラスの子とコッコちゃんを伴って乗り込みました。「かああああああ!!」 カラスの子の絶叫とともに激流川下りは始ま
カラスの子がアヒルさんと暮らし始めてからしばらくたったとある日、またひよこのコッコちゃんがやってきました。コッコちゃんは浴衣姿です。「ぴよよー! 今日は花火大会ぴよ! みんなでいくぴよ!」「……花火大会。もうそんな時期くわか」「かあ? はなびってなあに?」「花火はね! お空にぱあん! 打ちあがってぴかあ! と光ってきれいなんだよ!」「かあ?」 コッコちゃんの感覚的な説明に、カラスの子はますます首をかしげてしまいます。「まあ行ってみればわかるくわ」 そういうとアヒルさんはタンスをガサゴソと漁り、カラスの子にサイズの合いそうな浴衣を出してやりました。「ほら、くわの昔の浴衣くわ