Semua Bab アリスは醒めない夢をみる。: Bab 1 - Bab 10

20 Bab

1.おはよう、アリス

苦しい。辛い。消えてしまいたい。頭の中でぐるぐるぐるぐるそんな言葉ばかりが浮かんでは消える。「ねぇ、どうしたら私もここへ行けるんだろう」そう言って少女はまた絵本のページをゆっくりとめくった。少女の手にある1冊の絵本。それは少女のお気に入りの絵本で、少女はいつもその絵本を読んでいた。絵本のタイトルは〝不思議の国のアリス〟だ。絵本の世界は楽しいことばかり。どんな困難にあったって最後にはハッピーエンド。「私も幸せになれるのかな」少女は叶うはずのない言葉だと半ば諦めながらもそう呟いた。*****「おはよう、アリス」「へ?」朝、まだベッドの上。目覚めた私の上にちょこんと座っている白ウサギを見て、私は朝から間の抜けた声を出した。え、今この白ウサギ喋った?流暢に〝おはよう〟って挨拶してきた?自分の耳をどうしても疑ってしまう出来事に頭の中がたくさんの疑問で埋め尽くされ、理解が追いつかない。そもそも喋るだけでもおかしなことなのに、よく見ればこの白ウサギはおしゃれな服まで着ていた。水色と白のスーツに赤の蝶ネクタイは普通におしゃれで、白ウサギにもよく似合っており、可愛い。じゃなくて。「お、おはよう?」これも違う気がする。喋るおしゃれ白ウサギに対して色々考えた結果、私から出てきた言葉は〝おはよう〟の一言のみ。もっと今言うべき言葉があるはずなのに。「ふふっ、アリスは変わらないね。さぁ、行こう!」白ウサギはいまだにベッドの上で状況を飲み込めずにいる私なんて気にも留めず、嬉しそうに笑うと、ピョンッと私の上から飛び降りて走り出した。「え、ちょっ、待って!どこ行くの!?」訳が分からなかったが、とりあえず私も体を起こして白ウサギの後を追うために走り出す。まずは部屋を出て、階段を降りた。それから廊下の突き当たりを曲がって玄関へ。え!?もしかして外に出ちゃうの!?今の私の格好は当然寝起きなのでパジャマだ。しかもこの純日本人には珍しすぎる長い白髪も寝癖でぐちゃぐちゃ。私だって一応これでも華のJK、今のこの格好が外に出られるような格好ではないことくらいすぐに判断できる。それでも私は足を止めなかった。ただただ無我夢中で白ウサギの後を追った。ガチャッと白ウサギが器用に玄関の扉を開けて、予想通り外へ出てしまう。そして……白ウサギは飛び込
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-13
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2.チェシャ猫

「はぁ」初めこそ、この壮大な世界に興奮したし、感動もした。だが、いざ前へ進むとなると、あまりにも広すぎる世界にため息が出てしまう。もう何時間歩いたのかわからない。白ウサギに呼びかけても返事はないし、何よりも永遠と景色が変わらないので、自分がどこまで進んでいるのかもわからない。扉ももうとっくに見えなくなってしまっている。流石に疲れた。帰りたい。ふと帰ることを考えたのだが、そういえば帰り方が全くわからないことに気がついた。何も考えずにここまで来てしまったが、帰りはどうしたらいいのだろう。確か絵本の不思議の国のアリスでは、何やかんやで夢オチでした、目が覚めたらお姉ちゃんの膝の上でしたって話じゃなかったっけ?これも夢だとして帰りたくなったら目覚めてしまえばいいのかな?夢ならばと思い、頬をつまんでぐーっと思いっきり引っ張ってみる。「痛い」痛みを感じるということはここが夢ではなく、現実だということなのか。夢ではないのならますます帰り方がわからない。白ウサギを追いかけるよりも帰り方を深く考え始めていた時だった。「あっれー?人形が動いてる」どこからか可笑しそうに笑う声が聞こえてきたのだ。「……?誰かいるの?」どこから声が聞こえたのかわからず辺りを見渡す。誰かが居ればそれは大いに助かる。白ウサギの行方やこの不思議な世界からの帰り方など聞きたいことがたくさんある。「返事をして!!誰かいるの!!?」なかなか辺りを見渡しても誰も見当たらないので、今度は大きな声で誰かに呼びかけてみる。するとドスンッと突然上の方から大きな何かが降ってきた。いや、何かではない。降ってきたのは、ピンクと紫の服を着た派手な見た目の美少年だった。ふわふわのピンクの髪には紫の猫耳。「アナタもしかしてチェシャ猫?」私が知っているチェシャ猫とは随分身なりが違うが、色や猫耳、あと何よりそのニヤニヤしている表情が、いかにも私が知っている不思議の国のアリスのチェシャ猫にそっくりだったので本人に聞いてみた。ちなみに私の中でのチェシャ猫はそもそもこんな綺麗な美少年ではなくて、ただの色の派手な猫だ。「あれれー?俺のこと知ってんの?喋るお人形さん?」チェシャ猫が私の言葉を聞き、にんまりと笑う。「知ってる。あと私は人形じゃない」そんなチェシャ猫に私は人形ではないことを
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-13
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3.お茶会

チェシャ猫とどこまでも続く森を歩き続けてやって来たのは、大きなお屋敷の立派な庭だった。今まで歩いてきた森とは違い、ここの草木や花たちは綺麗に整えられており、人の手を感じる人工的な場所だ。そんな庭の開けた場所には、白いテーブルクロスがかけられたとても長い机があり、その上には大量のお菓子が並べられていた。どうやらここがチェシャ猫の言っていたお茶会の会場のようだ。「うぁ…」そこに広がっていた不思議の国のアリスのお茶会と同じ世界に、私は目を奪われ、感嘆の声を漏らしていた。絵本で見た世界そのものだ!「やぁチェシャ猫。先日ぶりかな?」私たちが庭へ訪れたことに気がついた、お洒落で特徴的な模様と装飾のハットをかぶった美青年がこちらへ声をかける。私たちに話しかけてきたのは、身なりからして、おそらく私たちが会いに来た帽子屋だろう。お洒落で特徴的な帽子をかぶっている不思議の国のアリスの登場人物と言えば帽子屋しかいない。「そうだね。帽子屋」チェシャ猫の受け答えを聞いて「やっぱり」と心の中で納得した。彼はやはり帽子屋だったようだ。「で、そちらの可愛らしいお嬢さんはどちら様かな?見かけない顔だけど」チェシャ猫とお互いに軽く挨拶を交わしたところで帽子屋は今度は私に話を振る。「こんにちは。私はアリス。白ウサギを探しているんだけど、帽子屋は白ウサギがどこへ行ったか知らない?」「おや、これは驚いた。お嬢さんは私の名前を知っているのかい?」「もちろん」私としては自己紹介などしなくとも、彼らのことは知っているので、さっさと白ウサギの情報を帽子屋から聞き出したかったのだが、帽子屋はそうではなかった。「それは何故なのか聞いてもいいかい?」すでに帽子屋のことを知っていた私を、帽子屋は興味深そうに見つめてきた。うっかりまだ自己紹介が終わってないのに〝帽子屋〟とか呼ぶんじゃなかった。少し……いや、かなりめんどくさいなと思いながらも、どう説明すればよいのか考える。絵本で読んだことがあるから、というのが彼らを知っている理由なのだが、今目の前で生きてる当人たちにそんなことを馬鹿正直に言っても、きっと信じられないだろうし、正直に答えるのは違う気がする。「そう言えばアリス、俺の名前も初めから知っていたよね」どのように伝えればよいのか、なかなかいい案が思い浮かばず、思案し続
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-13
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4.手がかり

どれくらいお茶をしていたのかわからない。だが、随分長い時間ここでお喋りをしていたことは確かだ。「つまりアリスはこことは違う世界から白ウサギを追ってやって来たんだね。だけど白ウサギの行方はわからないし、帰り方もわからない、と」「そう、そうなのよ」机を挟んで私の目の前に座る帽子屋が、私の話を的確にまとめてくれたので、私はうんうんと力強くそんな帽子屋に頷く。初めこそ、のんびり参加するわけにはいかないと、思っていたお茶会だったが、いざ参加してみると悪くなかった。悪くないどころかむしろよかった。お茶とお菓子は美味しい、何よりも一緒に話をする帽子屋は聞き上手で、話し上手なのだ。帽子屋との会話は思っていた以上に楽しく、飽きる暇がなかった。帽子屋との話が好きだと言っていたチェシャ猫の気持ちにも頷けた。「それで帽子屋は白ウサギの行方を知っているの?」「うーん。残念ながら今日は見ていないね」「そうなんだ…」帽子屋の答えに私はガクンと肩を落とす。まさか帽子屋も知らないとは。ここからどうやって白ウサギを探せばいいのだろうか。手がかりがなくなってしまった。「じゃあ、帽子屋。〝元の世界〟への帰り方は知ってる?」期待していた答えがもらえず、落ち込んでいると、今度はチェシャ猫がニンマリ顔で帽子屋にそう質問した。「そちらも残念ながら…。そもそも私たちには元の世界も何もそのような概念などないからね。逆に私が知りたいくらい実に興味を引く話だよ」興味深そうに笑う帽子屋にチェシャ猫は「帽子屋でも知らないのかぁ」と、変わらずニンマリ顔を浮かべる。私もチェシャ猫と同じように「知らないのか」と心の中で思いながらも、本日何杯目か忘れてしまったアップルティーに口を付けた。口に含んだ瞬間に広がる程よい甘さと、りんごのみずみずしさを感じる味が、私好みの味で、何杯でもいけてしまう。「あ」アップルティーを楽しむ私の耳に、何かを思い出したかのような帽子屋の声が届く。「クロッケー大会に行ってみるのはどうだろう?白ウサギも参加するかもしれない」「クロッケー大会だぁ!?」帽子屋の言葉に私が反応するよりも早く反応したのは、何故か今の今までお菓子に夢中で全然話に入ってこようとしなかった三月ウサギだ。「あんなクソ大会にまさか参加するとか言うんじゃねぇだろうな!?」「毎回行かない選
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-14
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5.悪夢

1日の終わりには当然のように太陽が沈み、辺り一面が闇と静寂に支配される。この世界だってそうだ。ここはお茶会をしていた庭のお屋敷、帽子屋屋敷の数ある客室の中の1つである、豪華なお部屋。あの後、長い本当にながーいお茶会を明日のために終えた私たちは、各々何故か用意されていた部屋へと案内されていた。そのことを疑問に思い、何故なのかと聞くと、帽子屋曰く「客人は毎日のようにいるからね。慣れているのさ」とのこと。その後、三月ウサギとヤマネに視線を移していたので、おそらく〝毎日〟のお客様は三月ウサギとヤマネのことなのだと察した。「はぁー。疲れた!」用意されていたふわふわのベッドに私は体を沈める。今日1日だけで本当にたくさんのことがあった。まずは、喋る白ウサギが現れて、大きな穴に入って。EATMEセットで体が大きくなったり、小さくなったり。意地悪なチェシャ猫、お茶狂の帽子屋、乱暴な三月ウサギに、眠り続けるヤマネ。今日起きたことは、どれもヘンテコでおかしなことばかりだったが、まるであの不思議の国のアリスのアリスになり、絵本の世界を冒険しているようで楽しかった。明日は何が起きるのだろう。絵本と同じなら、明日はトランプ兵やハートの女王に会うことになるし、クロッケーの試合にも参加できる。だが、狂気のクロッケー大会は阻止しなければ。阻止する代わりにちゃんとしたクロッケーができるように私がきちんと教えよう。そしてみんなでクロッケーを楽しむんだ…。「……うん、なかなか、……いい」私は明日のことを考えながらも、ふわふわと襲いかかってくる眠気と戦い始めた。ーーーーーー白ウサギに会えたら必ず帰り方も聞かなくては。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「嫌っ!痛いっ!」座り込む私の白く長い髪をグッと掴まれ、乱暴に上へと引っ張られる。それによって走る痛みに、私から悲鳴にも似た声が発せられ、この空間に響いた。「はっ、離して!」頭皮と髪の境目が引き裂かれそうだ。だが、どんなに痛くても、実際にはなかなか引き裂かれることはなく、たくさんの髪と一緒に私は強制的に上へと向けさせられた。「気持ちが悪い」「何でそんな色なの?」「普通じゃない」「化け物」「近寄るな」「こっち見んな」「お前なんて生まれて来なければよかったのに」気がつけば私の周
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-15
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6.眠りネズミ

「…ん」カーテンから漏れ出る朝日によって、目が覚める。ゆっくりと瞼を開けた先に広がる天井は見慣れないものだったが、だからといって何か思うわけでもなく。私はさっさとベッドから出ると、昨日着ていたワンピースに早速袖を通した。揺れるワンピースから、ふわりと微かに香る柔軟剤の香りが私の鼻をかすめる。昨日丸一日着ていたはずのワンピースが、どうしてこんなにもいい香りで、まるで洗いたてのような状態なのだろうか。そんな小さな疑問を持ちながらも、私は昨日も使った洗面台へと向かい、いつものように顔を洗い、髪をとかし、慣れた手つきで身だしなみを整え始めた。「ふぅ」洗面台にある大きな鏡に映る私を見て、大きく息を吐く。鏡に映る私はいつも通りで、昨日あんな悪夢を見た割にはいい顔色をしていた。白ウサギが悪夢から起こしてくれたこと、その後、また悪夢を見なかったこと、この2つのお陰で、昨日は疲れていたこともあり、ぐっすり眠れたのだろう。だから顔色もいいのだと思う。そこまで考えて、私はふと、昨日の白ウサギの言動について、考え始めた。白ウサギは一体何がしたいのだろうか。あの口ぶりからして何かを知っているような感じだったが、何故かそれを私には教える気が全くなさそうな感じだった。勝手に追いかけて来たのは私だが、白ウサギが私をここへ連れて来たようなものなのだから、少しくらい教えてくれたっていいのに。いくら考えてももちろん答えが出るわけでもなく、身だしなみを整えた私は、とりあえず扉を開けて廊下へ出た。白ウサギのことも気になるが、今日はハートの女王とクロッケー大会だ。今日1番のミッションは、まずは狂気のクロッケー大会を中止させることだ。それから白ウサギのことを探しても決して遅くはないだろう。「すぅ、すぅ」「…?ええ?」朝ごはんも兼ねて、お茶会へと向かっていると、廊下の端っこで朝から眠りこけているヤマネを見つけ、私は目を見開いた。まさかこんなところで熟睡しているとは。本当にヤマネはどこででも眠れるらしい。「ちょっとヤマネ!?何で朝からこんなところで寝ているの!?起きて!」「ん……アリス?もう少しだけ寝かせて……」ヤマネの体を軽く揺さぶる私の声に何となく反応するヤマネだが、起きる気はゼロで。本当によく寝るよね。こんなところで寝てたら風邪引くし、どうしたら起こ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-16
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7.ハートの女王

  帽子屋屋敷の庭もかなり綺麗に整えられていると思っていた。だが、ここはさらにその上を行く場所だった。いや、正しくは、あまりにも鮮やかな赤色が多く、女王様の趣味全開という意味で、帽子屋屋敷より整えられており、上をいくという意味だが。しかしさすが女王様のお城の庭だ。豪華絢爛である。帽子屋、三月ウサギ、ヤマネ、チェシャ猫と共にやって来たのはハートの女王様のお城。どこを見渡しても赤、赤、赤で、綺麗なのは綺麗なのだが、赤色でお腹いっぱいになる場所だ。ちなみに道中で眠ってしまったヤマネは、ただいま三月ウサギに担がれる状態で移動をしていた。天敵のチェシャ猫がいても眠たい時は寝てしまうみたいだ。 「急げ!もうすぐ女王様が通られる時間だ!」「わかっている!ああ!人手が足りない!」「このままでは間に合わないぞ!」 道がよく分からないので、みんなの一番後ろをキョロキョロしながらついて歩いていると、見覚えのある光景が視界に入ってきた。3人の大きなリアルトランプの服を着た男の人達が、せっせと白い薔薇に赤いペンキを塗って赤い薔薇を人工的に作る姿だ。見覚え大ありだ。あれは〝不思議の国のアリス〟でも出てくる場面ではないだろうか。確か、庭の白い薔薇を赤くして、赤い薔薇にしないとハートの女王様に首をはねられるというやつでは?ということはあの人達はこのお城の庭師? 「どうして薔薇を塗っているの?」 だけどそれは絵本では、の話。ここでは違うかもしれない。そう思って私は足を止め、絵本のアリスと同じように庭師らしき男の人達に声をかけた。すると、 「赤い薔薇でなければ女王様に首をはねられる!」 と、全く予想通りの答えが返ってきた。&nbs
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-17
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8.狂気のクロッケー大会

水色の可愛らしいアリスモチーフのワンピースを着ていたのは、つい先程までの話。私が今着せられているのは、女王様の趣味全開の真っ赤で豪華絢爛な派手すぎるワンピースだ。そんな私を鏡で見た時は、驚くほど似合っていなかったので、着ることを全力で拒否したが、それが叶うことはなかった。ここでの女王様は、絶対の存在で逆らうことなど許されない、逆らえばそれはすなわち死刑、首をはねられることを意味すると、血相を変えたメイドさんに必死に訴えられ、渋々諦めるしかなかったのだ。さすがに死にたくはないので。「なるほど。白ウサギの行方ね…」絶対的な女王様なら知っているのではないかと、一緒に狂気のクロッケー大会に向かう途中で女王様に白ウサギの居場所を聞いてみる。すると少し考えてから女王様はこう言った。「残念だけれど、私にもわからないわ。アレはいつも気まぐれで同じ所に留まらないの。招待状を出そうにも出せないのが現状なのよ」「そうなんだ…」眉をひそめて答えた女王様を見てガクッと肩を落とす。女王様でもわからないって白ウサギは一体何者なの?「落ち込まないで!アリス!白ウサギは招待していなくても、たまにこちらに顔を出したりするわ!今はクロッケー大会だし、もしかしたらこちらに来るかもしれないわよ!」肩を落とす私の様子を見て、女王様が元気付けようと慌ててこちらに笑顔を向ける。その姿は気品がある美しい女性なのに、慌てているものだから、ものすごく可愛らしく見えた。小さいマスコットにして持ち運びたい。「ありがとう、女王様」「いいのよ、アリスの為だもの」そんな女王様にニッコリ笑えば、女王様も安心したかのように、私に柔らかく微笑む。そして…「けれどアリス?もし白ウサギがクロッケー大会に現れなかったらどうするつもりなのかしら?また探しに行ってしまうの?」と、笑みを深めて女王様はそう言った。「…っ」ゾクッとその笑顔になぜか恐怖を感じてしまい、すぐに言葉が出ない。優しい笑みのはずなのに、その瞳の奥の感情が全く見えず、どこか冷たく感じてしまう自分がいる。「……っ、も、もちろん、探しに行くよ、白ウサギには聞きたいことがたくさんあるから」それでも何とか言葉を絞り出して私は女王様を見つめた。だが、この絞り出した言葉が〝間違い〟だったことを、すぐに思い知ることとなる。「ダメよ、ア
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-18
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9.アリスの怒り

「おかしなことを言うね、アリス。怪我をしても死んでもいいじゃないか。彼らはクロッケー大会の時はいつもそうだよ?」帽子屋のあり得ない言葉に一瞬だけ、頭が真っ白になる。何を言っているの?怪我をしても、死んでもいいだって?パシンッ訳が分からなくて、でもすごく不快で、頭の中の血が一気に沸騰したと思った次の瞬間には、私は帽子屋の頬を平手打ちしていた。「おかしなことを言ってるのは帽子屋の方よ!粗末にしていい命なんてない!」帽子屋に怒鳴って今すぐこの狂気のクロッケー大会を中止させようと女王様の所へ向かおうとする。でも…「行ってはダメだよ、アリス。死に急ぐことはない」それは恐ろしいほど冷静に微笑む帽子屋に腕を掴まれたことによって阻まれた。「…っ、離して!」どんなに力を入れても、腕をブンブン上下に振っても、その手が離れることはない。暴れれば暴れるほど帽子屋は笑みを深め、腕を持つ手に力を込める。帽子屋は男で、私は女だ。いくら頑張っても、その差は大きく、どうにもこうにも逃れることができない。だけどどうにか帽子屋から逃れないと。目の前でみんな笑っている。フラミンゴとハリネズミだけが今にも死にそうな表情を浮かべているというのに。狂っている。こんなのおかしい。「……」ねぇどうすればいい?私は帽子屋から逃れようとすることを一度やめ、目を閉じて深く考える。この会場で私の味方になってくれる人は誰?私1人ではどうすることもできない。誰かに協力してもらわないと。私は今、〝不思議の国の〟アリス。ただのアリスではない。ねぇ〝不思議の国の〟アリスならどうする?一か八かだが、私に応えてくれそうなのは人が、この会場に1人だけいる。「チェシャ猫ぉ!面白いことしたくない!?」唯一頼れるかもしれない人物に私の呼びかけが届くように大きな声で私は叫ぶ。すると…「したい!」ルンルンの笑顔でチェシャ猫が私の目の前に現れた。「この狂気のクロッケー大会をめちゃくちゃにするわよ!」「だからそんなことはやめておいた方が……」「帽子屋は黙ってて!」私の言葉を聞いて『まだ言っている』と呆れ顔になる帽子屋の言葉を私は途中で遮る。「チェシャ猫!フラミンゴとハリネズミを助けるよ!」「んー。確かに今まで女王に逆らった奴っていないし、そのパターンは全く見たことないか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-19
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10.作戦決行

帽子屋の作戦内容はこうだ。1、女王様のお気に入りである私が女王様の所へ行き、女王様の気を引き、狂気のクロッケー大会から女王様の意識を逸らす。2、その隙に帽子屋率いるチェシャ猫、三月ウサギ、起きていればヤマネがハリネズミ達をクロッケー大会会場外に誘導する。3、そして誘導完了後、私が「突然全員消えた」と騒ぎ立てる。これなら、バレずに全員を避難させることができ、私が犯人の1人であると、疑われる心配もない。その後また開かれるであろう女王様のクロッケー大会をどうするかは、また考えるとして、とにかく、この作戦は1がとても重要で、ここが上手くいかなければ、何もすることができない。つまり私の任務は要中の要で、失敗が許されないものなのだ。「みんなシンプルなものだが、作戦は頭に入ったね?それじゃあ始めようか」帽子屋の言葉に、みんな1度だけ頷くと、それぞれが持ち場へと移動する。私が向かうのはもちろん女王様の所だ。「女王様!ただいま戻りました!」「あらアリス。帽子屋たちとの話は終わったのね」「はい!」にっこにこの笑顔で女王様の所へ向かうと、女王様は、待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに笑い、私を迎えてくれた。女王様は男性よりも女性の方が好き。そして大人の女性より、幼さの残ったちょうど私くらいの年齢の女の子が何よりも大好き。そう帽子屋が言っていた。『いいかい?アリス。女王はきっと君のお願いなら何でも聞くし、甘えてもらうことを何よりも望んでいるはずだ。…うまくやるんだよ?』先ほど、帽子屋が最後に念を押すように言っていた言葉を思い出す。つまり帽子屋からもらった情報を整理すると、女王様は、甘えん坊の妹のような女の子が好きなのだ。うまくやってやろうじゃないの。甘えん坊、妹アリス、いざ出陣!「ねぇ、女王様?私、ちょっと疲れちゃった。あっちで少しお茶しない?」するりと女王様の腕に手を回して、疲れたアピールをする為に、女王様の肩に頭をこてんと乗せ、私は少し向こうのお茶スペースを指さす。甘えつつ、場所移動願う攻撃!どうだ!「いいわよ。アリスの願いなら何でも叶えるわ」私の甘えん坊妹作戦が効いたのか、女王様は持っていたフラミンゴを地面に投げると、私の頭を優しく…それはもう優しく嬉しそうに撫でた。そして移動しながら「大至急そこのテーブルにお茶セットを!」と
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-09-20
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