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5.遊園地

مؤلف: 立坂雪花
last update تاريخ النشر: 2025-05-17 07:48:49

 次の日の朝。

 緊張してあまり眠れなかった。

 起きてすぐに朝ご飯の準備をする。手軽に食べられる食パンと、ヨーグルトに缶詰のミカンを入れたもの。ちなみに朝はいつもこんな感じ。

 お出かけ用に買っておいた、柚希とお揃いのカットソー着ようかな? 白地に小さな水色の花が散りばめられていてふんわりした形のチュニック。下はデニムのスキニーパンツ。着替えてから柚希と並んで全身鏡に映ると、柚希は嬉しそうだった。

 迎えに来てくれる予定だった七時をちょっとすぎてしまった。急いで柚希の胸元まである髪の毛をツインテールにして、準備が完成。ちょうどその時『着きました!』と彼からLINEが来た。

 急いで外に出ると、彼が車から降りてきた。

「江川さん、おはようございます。予定時刻少し遅れてすみません」

「いえいえ、大丈夫です。朝バタバタしてて、実は準備終わったの、ちょうど生田さんからLINEが来た時でした」

「朝はバタバタしますよね……。あっ、服、親子お揃い! 可愛いですね」

「ありがとうございます」

 すぐお揃いなことに気がついてくれた。

 しかも可愛いだなんて――。

 ふわっとした気持ちになりながら、車に乗り、席に着く。

「じゃあ、出発します!」

 彼がそう言うと、車が走り出した。

 途中何回か休憩しながら、遊園地に着いたのは、十時くらい。

 車から降りる時、彼は「ちょっと待っててください」と言って、紙袋から何かを取り出した。ウィッグだ。

「これ、結構前に仲良いヘアメイクさんから『変装に使って!』ってもらったんですけど、今初めて使います」

 ちょっと照れくさそうに、初めての割には慣れた手つきで、そのウィッグを彼はかぶった。

「どうでしょうか?」

 どうでしょうか? って言われても。

 格好良いに決まっている!

 いつもはサラサラヘアーの黒い髪。

 今は明るい茶色の緩いウェーブ。

 どんな姿になってもイケメン。

「いいね! パパカッコイーよ!」

「いいと思う!」

 斗和ちゃんが言うと、柚希も続けて言う。

「私も、似合っていて良いと思います」

 彼が優しく微笑んできた。

 更にマスクをした彼は、もう別人。周りに正体バレなさそう。

 遊園地なんて何年ぶりだろう。

 最後に行ったのは学生の頃かな? 久しぶりすぎる。

 空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっている。

 遊園地内でかかっている最近の流行りの曲が駐車場にいる時点で、すでに聞こえてくる。

 遊園地入口にある受付で、彼が四人分の乗り放題一日券を買った。各乗り物の前にいる係員に提示する、リストバンドタイプのチケット。私はうちの分の、大人一人分と子供一人分の料金を彼に渡した。それから柚希と自分の腕につけた。

 中に入ると、色鮮やかな観覧車やジェットコースターなど、沢山の乗り物が、常に沢山のお客さんを乗せて動いている。ヒーローショーもあるからなのか、とても混んでいた。小さな子供の叫び声が大きなBGMに混ざり聞こえる。とにかく賑わっていた。

 パンフレットを彼と眺める。乗り物一覧表や地図が載っている。身長制限や年齢制限で子供たちが乗れないものもあるけれど、思ったよりも乗れるものが多くて、楽しめそう。

「どれから乗りましょうか?」

 私は彼に訊ねる。

「そうですね……。まずはここからスタートして、ここまで乗ったら、ちょうどお昼ご飯の時間でしょうか? それから……」

 彼はテキパキと計画を考えて、伝えてくれた。

 まずはゆっくりめの乗り物から。

 速く動く乗り物とか、子供たちは大丈夫かな?って私は心配していたけれど、意外にはしゃいで「もう一回乗りたい!」なんて言い、楽しんでいる様子だった。

 柚希が楽しんでいる姿を見て、私はとても幸せな気持ちになった。

「お昼ご飯にしましょう!」

 鞄からスマホを出し、時計を見ると、十二時十五分。彼が予想した通りの時間。午前の部は、時間があっという間に過ぎていった。

 大きな建物の中へ。そこにはテーブルや椅子が沢山並べられていて、軽食系、ガッツリ系、両方の食べ物屋も並んでいる。

 昼時だから混んでいた。

 空いている席を探す。

 ちょうど四人掛けのテーブルが空いていたから、そこに座った。

「何か食べたいものある?」

 彼は子供たちに質問する。

「私、ポテト!」と柚希が先に答え、続けて斗和ちゃんが「あれ食べたい!」と、売り場の上にある、フランクフルトの大きな写真を指さした。

「江川さんは、何か食べたいものありますか? 僕、買ってきますから、子供たちと待っていてください」

「ありがとうございます。私は……」

 私はこういうのを決める時、いつも時間がかかってしまう。早く決めないと。座りながら見える大きなメニュー表を見ながら、ちょっと焦る。

「お任せでも大丈夫ですよ? 苦手なものありますか?」

「すみません。じゃあ、お任せでお願いします。苦手なものは、ないです」

 彼は微笑むと、売り場に向かった。

 まずは子供たち用に、ポテトとフランクフルト、そしてサンドイッチセットを買って持ってきた。もう一度彼は売り場に行き、次はラーメンとカレーライス、そして、取り分ける用のお皿とお椀を持ってきた。

 取り分け用の器は、子供たちのかな?って思っていたら「どれ食べようか迷ってしまって……。もしよければ、ラーメンとカレーライス、半分こずつ食べませんか?」って。

 迷って? 嘘! だって、映画を宣伝するために彼が出演していた、日帰りツアーの番組。それを録画して何回も観ていたんだけど、ランチの時に、彼が餃子定食を選ぶのが早すぎて共演者に「選ぶの早すぎますね!」って言われてた。しかも彼「いつも迷わないですぐに決まるんです」って。

 私のこと考えてくれたのかな?

 食べ終えたら、午後の部。

 帰りは遅くなりすぎないようにしたいから、ちょっと乗って、終わりな感じ。まずはメリーゴーランド、それからトロッコ列車に。

 ラストは観覧車に乗った。子供たちを乗せてから、私、彼の順番に乗る。子供たちは並んで座り、外を眺めて相変わらずはしゃいでいる。私は彼の隣に。

 上がっていくと、遊園地内の全体が見渡せるようになる。カップルや家族連れが多い。

 ――私たちは他の人から見たら、家族のように見えるのかな?

 それがリアルであれば、どんなに嬉しいことか。でも彼には相手が――。そして、この時間が終われば、またいつもの日々。

 まるで夢の世界にいるようだった。

 私はぼんやりと外を眺めていた。

 遊園地を出て、帰りの車の中。

 はしゃぎすぎた子供たちは、爆睡。

「今日は、いきなりのお誘いにお付き合いいただいて、ありがとうございました」

「こちらこそ、楽しみました。ありがとうございます」

 ルームミラーを通して彼と目が合う。

「あ、やっと江川さんと目が合った」

「えっ?」

「あ、いや、気のせいかもなんですけど、今日の江川さん、僕と目を合わせてくれないなぁって思って」

「……」

「今日の遊園地、本当は嫌だったのかなとか、僕、何かやらかしちゃったかなぁとか色々考えちゃって……」

「いや、全然そういうのじゃなくて……」

「じゃなくて?」

「あの! いや、なんでもない、です」

 本当は、撮られていた写真の、一緒にいた女優さんとはお付き合いしているのですか?って質問をしたかった。けれど、マイナス思考が頭の中を支配してくる。落ち込む答えが返ってきそうだったし、なんでそんな親しいわけでもないのに、プライベート質問してくるの? みたいになって嫌われても嫌だし――。

 帰りは子供たちが眠っていて、休憩タイムも一回だけ。道もそんなに混んでいなくて、行く時よりも時間がかからず家に着いた。

「生田さん、今日はありがとうございました」

「こちらこそありがとうございました」

「柚希ちゃん、バイバイ!」

「バイバイ!」

 夢のような時間は、終わった。

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  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   その後

     あれから三年が経った。  子供たちは小学三年生に。「はい、OKです!」と、監督さんの声。 今日はうちのリビングで、とある空気清浄機のCM撮影をしている。出演者はパパと、一歳になった私の娘、羽花(うか)。撮影が始まる前に、一日の流れの説明と共に見せてもらった絵コンテの通り、順番にひとつひとつのシーンを撮り終えていく。ちなみに撮影現場を見るのは初めてで、子供たちと私は、興味津々。 邪魔にならないように、荷物置き場になっている寝室で「上手く行きますように!」と、ドキドキしながら撮影を見守っている。 今、監督さんと彼、スタッフさんで撮れたものをモニターで確認している。「大丈夫そうですね、これで全部撮り終えました。お疲れ様でした!」 撮影が終わった。羽花が出来るだけ普段通りでいられるようにと、本番中、外で待機していたスタッフさんたちが入ってきた。そして撮影に使った道具の片付けを始める。 私はリビングのふわふわした白い絨毯の上で眠っていた羽花を抱っこした。 監督さんに話しかけられる。「奥様、今日は素敵なお家を使わせていただき、撮影にご協力くださり、本当にありがとうございました」 「こちらこそ、貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました」 「子供が遊べるスペースもあって、本当に綺麗で素敵なおうちですね」 「ありがとうございます。夫が、家建てる時に子供が過ごしやすいようにって考えた設計なんです」 「そうなのですね。生田さんらしいです。生田さん、いつも撮影現場でもひとりひとりに気を遣ってくださるし、羽花ちゃんが産まれたばかりの頃かな? 現場一緒になった時、奥様の寝不足や子供たちのことをとても心配されていたりもして、素敵なパパなんだろうなって、スタッフと話していましたよ」 噂の彼を見ると、スタッフさん達と一緒に撮影道具を片付けていた。 はい! 私の夫は世界一素敵です!  私は心の中で叫んだ。    皆がいなくなり家族だけになると、彼は大きなため息をついた。「こんなに撮影で緊張したの、初めてかも。羽花がきちんと笑ってくれるのかな?とか、眠ってくれるかな?って。そんな理由で撮影緊張するなんて、考えたことなかったな」 「私もすごく緊張した。無事終わって良かったね! 羽花とパパの共演、放送されるの楽しみ!」 私もほっとしながらそう言った。

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     今年も寒い季節がやってきた。 たしか去年の今頃は、斗和ちゃんのジャンパーが小さくなったってLINEが彼から来て、服のおすすめサイト教えてたっけ?   そして、彼がそのサイトを使ってくれて、柚希とお揃いのジャンパーを買ってた。 どんな些細なことでも、彼と関われるのが嬉しかったな。今もだけど。 ちなみに今は、一緒にそのサイトを見ながら選んだり、お店に買いに行ったりもしている。  あの時よりも進展している。 今年もそのお揃いのジャンパーをふたりは着ていた。 進展といえば、お付き合いを始めてから、彼の家で過ごすことが多くなっていった。「ねぇ、パパ! 今日、柚希ちゃんと一緒に寝たい!」    いつものように、ご飯を彼の家で食べていた時、斗和ちゃんが言った。 私は彼と目を合わせる。  彼の家に泊まったことは、まだない。「斗和、柚希ちゃんたち、もうすぐ帰らないといけないんだよ! また今度きちんとお約束してからにしようね」 「私も斗和ちゃんと一緒に寝たいな」  柚希も言い出した。 「柚希、もう少ししたら帰ろうね?」 「私、帰らないよ!」 「じゃあ、ママひとりで帰るの?」 「うん」  帰ろうって柚希に言ってるのに、私はその言葉に反比例して、泊まりたいという気持ちがふつふつと湧いてきた。「生田さん、明日は土曜日ですが、お仕事ですか?」 「いえ、休みです」 「私もお休みです」  ここで私は言葉を止める。 「……じゃあ、江川さんがご迷惑でなければ、泊まっていきますか?」  素直に泊まりたいって言えばいいのに、明らかに今、この言葉、察して?みたいなところで私は言葉を止め、彼に気をつかわせてしまった。申しわけない気持ちになった。    ――彼の家でお泊まり。心がそわそわする。 「柚希ちゃんも斗和と一緒にお風呂入れちゃって、大丈夫ですか?」 「あ、はい。ありがとうございます」 「もうお風呂沸くんで、三人で入っちゃいますね!」 「じゃあ、私、その後のことするので、子供たちが上がった後は、ゆっくりお風呂に入ってください」 「ありがとうございます! じゃあ、子供たち上がる時、お風呂から呼び出し音ならしますね! 僕たちの後は、江川さんもゆっくりお風呂入ってくださいね!」 「ありがとうございます!」 柚希が着るパジャマ、下着は斗和ち

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   8.彼の家

     お迎えの時間に間に合った。 さっき、彼と付き合い始めたけれど、この保育園での様子は、特に何も変わらずにいつもの光景。 これからもずっと変わらずにこんな感じなのかな? そう思っていたのに――。「今日は、うちでご飯食べませんか?」 「えっ? 生田さんの家でですか?」 「はい、そうです」 どうしよう。いきなりおうちご飯に誘われる展開がきた。「柚希ちゃん、うちに来てー」と斗和ちゃんが言うと「ママ、行こっか!」って、柚希はすでに行く気満々な様子だった。 断る理由、もう何もないよね?「じゃあ、よろしくお願いします」 私の家を通り過ぎ、十分ぐらい更に進んだ場所に、生田さんの住んでいる家があった。 白くて大きな家。大きな庭もあって、モデルハウスみたいにとても綺麗!  一軒家かぁ、憧れる。 立ち止まり、彼の家を眺めながら私は言った。「ちょっと偏見かもしれないですけど、生田さんは駅前にある豪華なマンションに住んでいるイメージでした。しかも最上階」「はは、そんなイメージでした? 江川さんすごいです。実は昔、そのマンションに住んでいました!」 なんと、正解だった。「この家、斗和が産まれてから建てたんです。子供が過ごしやすい家になるように、一緒に笑い合いながら過ごしている場面を想像しながら。工務店の人に何回も相談に乗っていただいて完成しました。ここは今、一番大切な僕の居場所です」 彼は本当に子供のことを一番に考えているんだな。 それにしても、子供が産まれてから家を建てるって忙しそう。家全体を考えたり、ひとつひとつの部屋の壁とか床とか、考えること沢山あるよね? 育児しながら俳優のお仕事もして、彼は他にも色々やってそうで。 私は柚希が生まれた頃は、彼のように考える余裕なんてなかったな。 玄関のドアを開けた瞬間、新築の香りと花のような?いい香りもしてきた。 リビングへ行く。私の家みたいにおもちゃが散らかっていたりしないで、とても綺麗だった。斗和ちゃんがトイレに行きたくなって家に来た時、散らかった部屋を見られてしまったことを思い出し、ちょっと恥ずかしくなる。「見学しても良いですか?」 「はい、どんどんしてください」 「私、お部屋教えてあげる!」 「斗和、二階も全部教えてあげてね! 僕はささっと何かご飯作ってますね!」 「すみません! ありがとう

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   7.彼の気持ち

     暑い季節がやってきた。 斗和ちゃんのパパが『生田 蓮』だと知ってからちょうど一年くらいが経つ。 彼と距離を置いてから、LINEをすることもなくなり、ご飯も一緒に行かなくなった。 でも保育園で会うといつも彼から話しかけてくれる。挨拶や子供の話をしたりする程度だけど。 最近は彼への気持ちが少し落ち着いてきた気がする。無理やり自分自身でそう思うようにしているだけかもしれないけれど。 いつものように保育園へ迎えに行き、家に帰ると、柚希が私に言った。「ねぇ、斗和ちゃんのパパがね、ママと一緒にいたいんだって!」 柚希にどういうことか訊ねると、今日保育園で斗和ちゃんが柚希にそう言っていたらしい。まさか彼がそんなこと言うわけがない。最近柚希は妄想話もよくしてくるから、そのたぐいかなと思っていた。 柚希からその話を聞いてから、三日が経った。  朝、保育園の門の前で、彼と会う。「おはようございます」 「おはようございます」 いつものように、彼から挨拶をしてくれて私も挨拶を返す。 四人で玄関に入った時、斗和ちゃんが私に言った。「ねぇ、柚希ちゃんのママー、パパがね、一緒に遊びたがってるよ!」 「えっ?」 「斗和、そういうこと言わなくていいの!」 「えー、だってパパ、泣きそうだったからね、柚希ちゃんのママに教えてあげたの!」 「斗和! すみません。今の斗和の発言、本当に気にしないでください」 無理。  気にしないなんて、絶対に無理! 斗和ちゃんの言葉を聞いてから、気まずい。そんな気持ちと共に淡い期待も心の中でフワフワしてる。 私は年長さんの『きりん組』の教室まで、柚希と一緒に向かう。斗和ちゃんも同じクラスで、しかも柚希と仲が良いから一緒に向かうことになる。親同士は微妙な雰囲気。いつものように先生に挨拶して、柚希とハグをする。なんとなく教室から彼が出ていくのを確認してから、私も教室を出る。彼に追いつかないように、ゆっくりと玄関に向かって歩いた。それから、外に出て、彼が車を走らせたのを確認。私も自転車の鍵を開け、乗ろうとした。 その時、彼の車が戻ってきた。 ――なんで?  彼は駐車場に車を停めて、降りてきた。  私は自転車にまたがった状態で、彼の行動に目を離せずにいた。「江川さん、あの!」 強めに彼は私の名前を呼んできた。その一声で私は

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   6.距離

     その日の夜、柚希を寝かした後、彼からLINEが来た。『今日はお付き合いくださり、本当にありがとうございました』 返事どうしようかな?って画面を眺めながら考えている最中、再び彼からLINEが来る。『遊園地で江川さんの様子がいつもと違ったこと、やっぱり気になってしまいます。今日、もしも無理やり遊園地に付き合わせてしまっていたり、本当に僕が何かやらかしてしまっていたら、ごめんなさい。何か言いたいことがあれば遠慮なく言ってください。いえ、無理して言わなくてもいいのですが。とにかく気になってしまいました。今日はお疲れ様でした。おやすみなさい』 やらかすだなんて……。 彼が私との関係を、適当な間柄だと思っていたのならこんなLINE、送って来ないよね? 自分の気持ちを伝えるのが得意ではないけれど、今思っていることを素直に伝えてみることにした。『実は私、生田さんと元カノさんが一緒のところを撮られていた記事を見たのですが、生田さんと彼女さんは、現在お付き合いしていらっしゃるのかな?って気になっていまして。プライベートに踏み込むなって感じですよね。すみません。今日はありがとうございました。おやすみなさい』 こんな内容、迷惑だろうなって、送るのをためらってしまったけれど、勢いで送信を押した。送ってから後悔。返事、来ないだろうな。っていうか、今、生田さん、彼女さんと一緒にいそう。 そして、斗和ちゃんも。三人で楽しく過ごしているのかも。 想像なんてしたくないのに、勝手に三人一緒にいる映像が頭の中に流れてくる。復縁の記事を見てからずっと。そして私は今、その頭の中に流れてくる映像に、嫉妬してる。    ――こんなの、私ひとりだけが辛いやつじゃん。 送ってから、一分もしないうちにスマホの画面に『着信 生田さん』の文字が。 彼からの着信は予想外。  心臓が跳ね上がり、鼓動が速くなる。 マナーモードにしてあったから幸い音は出ず、そばで寝ていた柚希を起こさずにすんだ。 私は話し声で柚希を起こさないように、寝室から離れた。そしてトイレへ行き、ドアを閉めた。 震えながら、電話に出るマークを押した。「もしもし」 トイレのドアは閉めたけれど、一応声が漏れないように、ささやくような声で私は電話に出た。「もしもし、あの、柚希ちゃん寝かせてる途中だったとか、忙しい時間にか

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   4.気持ち

     本格的に寒くなってきた季節。  彼からLINEが来た。『ちょっとお聞きしたいのですが、柚希ちゃん、ピンクの可愛いジャンパー着ていましたよね? ボタンが花になってて、フリフリしたデザインの。あれってどこで買いました? 今日、去年着ていた斗和のジャンパーが小さいことに気がついて、駅前にある子供服のお店をまわってみたのですが、もう、あんまりサイズと種類がなくて』『多分、もう売れちゃったのでしょうかね? 柚希が今着ているジャンパーは、ネットで買いました。一応サイトのURL貼っておきますね! そこ、女の子向けの服が売っているんですけど、手袋も靴も可愛いのが揃っています! しかもお値段もお手頃で

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   3.彼と食事

     送ってもらった日から一ヶ月ぐらいが経った。  いつもは十七時くらいにお迎えに行けるんだけど、いつもよりも遅くなってしまって十八時になっていた。 保育園の門の前で久しぶりに彼とばったり会う。 「この前、あ、もう一ヶ月前になりますけど……。あの時は送ってくださり、ありがとうございました」「いえいえ、こちらこそ、トイレを貸してくれて、ありがとうございました」 お互いに深々とお辞儀をする。 教室まで行き、いつものように帰る準備をして玄関へ。「柚希ちゃんの家にまた行きたい!」 斗和ちゃんが玄関で突然言いだす。「斗和、もう夜ご飯の時間だから、また今度ね」 と、彼が穏やかな口調で

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   2.生田蓮さん

     いつものように、柚希を保育園に連れていった時だった。「おはようございます」「おはようございます」 柚希と同じクラスの女の子、斗和(とわ)ちゃんのパパと保育園の門の前で会い、彼から挨拶してくれて、私も返した。お互い、子供が靴を脱ぎ終えるのを待ったりして、子供と一緒に教室に向かう。 斗和ちゃんのパパが、先生に挨拶をすると先に外に出ていく。 私も先生に挨拶するといつものように柚希とハグをして、外に出た。 斗和ちゃんのパパが車に乗り、黒いマスクを外し、発車させようとした時、私は分かってしまった。 彼は、この前パートの和田さんが見せてくれた表紙の人『生田蓮』。 もう何回も会っている。

  • イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。   1.日常

     まさか、あのイケメン俳優、生田蓮(いくたれん)さんと、こんなことになるなんて――。*** 朝の八時。自転車に乗り、家から約五分くらいの距離にある保育園に、娘の柚希(ゆずき)を連れて行く。「じゃあまた後でね!」 年中さんのクラス『うさぎ組』の教室で寂しそうな表情をしている柚希と思いっきりハグをして保育園を出る。 園を出ると、そのまま近くにある私の仕事場であるスーパーに向かう。 「おはようございます!」「おはよう、葵ちゃん。今日も暑いね!」「暑いですね、ちょっと自転車で走っただけなのに、もう汗だくですよ」 女子ロッカー室でパートの人たちと軽く会話をしながら制服に着替え、胸元

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