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エプロンとハイヒール
エプロンとハイヒール
Author: シンデレラ

第1話

Author: シンデレラ
大学を卒業してすぐ、私は遠藤浩介(えんどう こうすけ)と結婚し、「完璧な妻」という役割に、心地よく馴染んでいた。

彼は外で働き、私は家を守る。それが私たちの役割分担だった。

しかし、親友の岡山理沙(おかやま りさ)が浩介と共同で会社を立ち上げてから、状況は一変した。二人は残業や出張を共にし、あらゆる種類のパーティーに一緒に出席するようになった。

私は浩介の瞳の中に、理沙に対する隠しきれない賞賛の光を見るようになったのだ。

ある夜、打上げの喧騒の中、理沙が何気なく尋ねる声が聞こえた。

「今日の打上げ、どうして真由美(まゆみ)ちゃんを連れてこなかったの?」

浩介は反射的に眉をひそめ、その声には隠しきれない不快感が滲んでいた。

「真由美は何も知らないただの専業主婦だ。連れてきても、正直場違いで面倒なんだよ」

その隣から、私の弟、島村健司(しまむら けんじ)の声が聞こえてきた。健司も浩介の意見に同調した。

「そうだよ、姉さんはただ運が良かっただけだよ。義兄さんと結婚できたから今の生活があるんだ。姉さんは何もできない、ただの専業主婦だ。理沙さんみたいに、着こなしも上手で、仕事の能力も桁違いなのとは比べ物にならないよ」

浩介が飲みすぎて胃を悪くしないようにと、私はわざわざ酔い覚ましのスープを届けに行った。その結果、私は夫と、そして実の弟の心の奥底にある本音を聞いてしまった。

宴会場から逃げるように飛び出すと、胸がひどく痛み、道端にしゃがみ込んでしばらく泣き続けた。それからやっと携帯を取り出し、母に電話をかけた。

電話が繋がるやいなや、私は泣きながら尋ねた。

「お母さん、私って、本当に役立たずで、何もできない人間なの?」

母はすぐに否定した。

「誰がそんなことを言ったの?うちの娘は素晴らしいわ。役立たずなわけがないでしょう!」

私はむせび泣きながら尋ねた。

「そうなの?具体的には、どんなところ?」

「真由美は顔も心も美しくて、気立ても最高じゃない」

少し慰められたと思ったのもつかの間、母の次の言葉が私を再びどん底に突き落とした。

「真由美が家を完璧に守ってくれたからこそ、浩介さんは今日の成功を収められたのよ。

料理も上手で、働き者で、家事もテキパキこなして、子供の面倒もよく見てる。これって、他のどんな女性よりもずっと優れているのよ!」

せっかく浮かびかけた私の笑みは、みるみるうちに薄れていった。適当に用事があると言って電話を切った。

行き交う車の流れを見つめながら、一瞬、どうすればいいのか分からなくなった。

「合格点の専業主婦」であること。それだけで、立派だと言えるのだろうか?

翌日の午後二時、娘の遠藤杏(えんどう あん)の幼稚園で親子会が開催された。

朝、私は浩介にメッセージを送って念を押したはずだ。

しかし、今、一時五十分。彼の姿はどこにもない。

私は怒りを抑えながら電話をかけたが、誰も出ない。

今度は秘書に電話をかけると、ようやく繋がった。秘書は「遠藤社長は岡山社長と仕事の打ち合わせに出ています」と答えた。

電話を切ると、杏はパパが来られないことを悟り、その瞳に寂しさが浮かんだ。

だが、すぐに杏は気丈に私の手を引いた。

「いいの、パパはお金を稼いで私たちを養うのに忙しいんだもん。ママが来てくれれば十分だよ」

その言葉に、私は胸が締め付けられる思いがした。

親子会が終わった後、杏を慰めるために、わざわざケンタッキーに連れて行った。

家に帰ると、リビングのソファに理沙がいるのを見つけた。

彼女は洗練されたスーツ姿で、顔色は少し青白く、ソファにもたれかかっている。

そして、普段決してキッチンに入らないはずの浩介が、今、台所でお粥を煮ている最中だった。

私が帰ってきたのを見て、浩介は杓子を置いた。

「真由美、理沙の胃の調子が少し悪いんだ。会社から近かったから、少し休ませてあげようと思って連れてきたんだ」

私は頷き、理沙に挨拶をしてからキッチンに入った。

「今日、杏の親子会、どうして来なかったの?あの子、すごくがっかりしてたわ」

浩介は一瞬戸惑ったが、すぐに申し訳なさそうに私の手を握りしめた。

「会社が忙しくて、つい忘れてしまったんだ。明日、杏の好きな人形を買って、機嫌を直させよう」

そう言いながら、彼は私を抱きしめた。
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