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第5話

Auteur: ロックされた心
母はすでに悪い予感を感じていたのか、父の腕を掴んで、爪が食い込むほど強く握りしめる。

「被害者は……息子さんの北斗君です」

母はその場にへたり込んで、信じられないというように呟く。

「北斗?どうして……そんなはずない……」

父は崩れ落ちそうになる母を慌てて支える。部下の刑事が小声で報告する。

「殺害現場が特定されました。遺棄現場の廃ビルの近くにある、違法建築の長屋です」

父は即座に決断を下す。「まずは現場へ行く。科捜研の奴ら、絶対に何か間違いを犯してるはずだ」

パトカーの中で、母は何度も俺のスマホに電話をかけ続ける。

父は前だけを凝視してハンドルを握って、自分に言い聞かせるように言う。

「落ち着け。北斗の奴、署に忍び込んで科捜研の連中と結託して俺たちを騙そうとしてるに決まってる」

だが心の底では、それは不可能であることは痛いほど分かっていたはずだ。

どんな感情なのか言葉にはできないが、まるで毒蛇に全身を締め付けられるような息苦しさを感じる。

その長屋周辺は、怪しげな連中が吹き溜まるスラム街だった。偽造の身分証明書を持っている者も多くて、警察の捜査など誰も恐れてい
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  • エリート両親は俺の死に気付かない   第8話

    観客席に両親と姉の姿を見つけた竜は、得意げな笑みを浮かべる。俺がいなくなった今、自分がこの家で一番愛される存在になったと確信しているのだろう。ハーフタイムの休憩中、竜は甘えるように父の腕に抱きつく。「お父さん、お母さん、お姉ちゃん!見に来てくれて本当に嬉しいよ」表彰台の上で、竜は満面の笑みでメダルを掲げる。記者のインタビューに対して、彼は愛想よく答える。「僕が今日ここに立てたのは、家族のサポートのおかげです。これからも、お父さんとお母さんの誇りで、お姉ちゃんが一番愛する弟でありたいです!」誇らしげな竜の姿を見て、激しい吐き気を覚える。こいつの幸せは、全て俺の苦痛の上に成り立っているのだ。俺を地獄へと突き落としておきながら、自分は花束と拍手を浴びている。どうしてこんなことが許されるんだ。観客席から、ヒソヒソという話し声が聞こえてくる。「彼のお兄さん、少し前に亡くなったんでしょ?あんなに可哀想なのに、立派よね」「あのお兄さん、札付きの不良だったらしいわよ。何股もかけてて、痴情のもつれで殺されたって噂だわ」その声は竜の耳にも届いていた。彼の顔の笑みはさらに深まって、まるで俺を殺した勝利を高らかに宣言しているかのようだ。だがその時、数人の警察官が突然現れて、笑顔が凍りついた竜へと歩み寄る。「人違いじゃないですか!?僕は今回の大会の優勝者ですよ!」姉が冷たく言い放つ。「あんたで間違いないわ。優勝のメダルを首に下げたって、その腹黒さは隠しきれないわよ」一番注目を浴びている最高の舞台で、竜の偽りの仮面は無残に引き剥がされた。彼は荒い息を吐いて、目をひん剥いて叫ぶ。「証拠はあるのかよ!?お父さん、お母さん、助けて!お姉ちゃんがおかしくなっちゃった!」母は信じられないものを見るような目で、静かに問いかける。「犯人からボイスレコーダーが提出されたの。お前が言ったこと、全部聞かせてもらった」俺に「死んでほしい」と言い放ったことも、両親を「ジジババ」と呼んだことも。すべてが録音されていたのだ。犯人は、レコーダーの隠し場所を教えながらこう嘲笑ったという。「なんで俺があのガキを見逃したか分かるか?お前たちが溺愛してる偽物の息子が、実の息子を殺したんだ。その事実を知ったほうが、お前たちはもっと苦しみを味わうだろうから

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  • エリート両親は俺の死に気付かない   第4話

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  • エリート両親は俺の死に気付かない   第3話

    優しく竜を宥めて電話を切った直後、今度は姉から母へ着信が入る。「結衣、出張はいつ終わるの?弟が試合を見に来てほしがってるわよ」姉が口を開く前に、母は急かすように尋ねる。俺が家に引き取られた日、両親は泣きじゃくる竜にかかりきりだった。そんな中、姉だけが俺の手を引いて、家の中へ案内しながら「もう怖がらなくていいのよ」と声をかけてくれた。この家で俺が感じた唯一の温もりは、彼女からのものだけだった。電話の向こうで、姉は一瞬戸惑う。「えっと、北斗の全国模試のこと?あれは来月じゃなかったかしら……」母は苛立ちを露わにして遮る。「北斗、北斗って!ずっと一緒に育ってきた弟は竜よ!何度も言ってるけど、北斗は外でろくでもない育ち方をしてきたのよ。栗原家の人間としてふさわしくないわ」姉はため息をついて、母の俺に対する憎悪が理解できないというように言う。「お母さん、竜の言うことを鵜呑みにしないで。北斗は根は優しくて努力家よ。普段からもう少し見てあげれば、絶対にわかるはず。さっき北斗に電話したんだけど、出なかったの。この数日間のメッセージにも返信がないし。家にいないの?」母は鼻で笑い、冷淡に答える。「あいつにも足があるんだから、鎖で繋いでおくわけにもいかないわ。またどこかで遊び呆けてるんじゃないの。明日は竜の大事な試合よ。帰ってこれないなら、もういいわ」少し間を置いて、母は冷酷な言葉を言い放つ。「北斗に伝えておきなさい。失踪したふりをして気を引こうなんて無駄だってね。明日、竜の試合に来ないなら、二度とこの家に入らせないわ。どうせ、あんな奴いないほうがいいんだから!」電話の向こうで俺を庇おうとする姉の声を無視して、母は電話を切る。ちょうど捜査から戻ってきた父が、不機嫌そうな母を見て不思議そうに尋ねる。「遺体の身元特定がそんなに難航しているのか?」母は首を振って、愚痴をこぼす。「違うわ、北斗よ。きっとまた結衣に泣きついたのね。結衣を巻き込んで、失踪ごっこをしてるみたい」父は荒く息を吐き出す。「俺たちが仕事で忙しいのを知ってて、そんな下らないことを!なんて恩知らずな奴だ。今すぐ電話して説教してやる!」しかし、何度電話をかけても、「ただいま電話にでることができません」という冷たいアナウンスが響くだけだ。「あいつ、見つから

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