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第301話

Author: 木憐青
「......わかった」

遥太は深く息を吐き、肩を落とした。

「そう言うなら、俺も従うよ」

「ありがとう」

深雪は真剣な眼差しで言った。

「君が復讐に燃えているのは分かってる。でも、今は冷静でいなきゃ。憎しみに飲まれてはいけない」

遥太は小さく頷いた。

「全力で協力するぞ」

「うん」

深雪は微笑んだ。

「必ず成功する。私はそう信じてる」

三人はさらに細かい計画を打ち合わせ、それぞれの持ち場へと散っていった。

パーティーが終わった後、深雪はオフィスに戻り、机に山積みになった書類に向かった。

そこへ延浩が温かいミルクを手にして入ってきた。

「これ飲む?」

延浩は優しく差し出した。

「ありがとう」

深雪はカップを受け取り、ひと口飲んだ。

「早く休んでね」

「俺は平気だ」

延浩は首を横に振った。

「君が終わるまで一緒に残るよ」

「いいえ、ここは私ひとりで大丈夫」

深雪は柔らかく言った。

「それでも、傍にいたい」

延浩の声は穏やかだが揺るぎなかった。

「君もあまり無理はしないで。早めに休むんだ」

「......うん、わかったわ」

延浩が部屋を出たあとも、深雪は書類を片づけ続けた。

気を抜くわけにはいかない。

静雄を完全に倒し、寧々の仇を討つために。

夜更け、ようやく書類を終えた深雪は窓辺に立ち、煌めく街灯を見下ろした。

「寧々......聞こえてる?」

彼女は小さく呟いた。

「必ず仇を討つから。待っててね」

翌朝、深雪は早く出社し、幹部を集めて次の作戦会議を開いた。

「みんな、これまでの成果に満足してはいけない」

深雪は真剣に言った。

「松原商事はいま苦境にあるとはいえ、依然として最大の競合相手よ。気を緩めることは許されない」

社員たちは力強く頷き、完全に彼女に心を預けていた。

仕事が始まったあと、深雪はひとりオフィスに戻り、机の上に置かれた寧々の写真に視線を落とした。

そこへ延浩が花を抱えて入ってきた。

机にそっと置き、静かに尋ねた。

「......寧々のことを考えていた?」

深雪は否定せず、写真を手に取ってそっと撫でた。

胸の奥に、また鋭い痛みが走った。

「もう随分経ったのに......まだすぐそばにいる気がするの。もし寧々が生きていて、先輩に会えたら、きっと喜んだはずよね....
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