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第1035話

Penulis: レイシ大好き
加津也の胸の奥に、重く沈むような痛みが走った。

以前の初芽とは、まるで別人だ。

本当に、比べものにならない。

彼はマンションのドアの前に立ち、いつものようにパスワードを入力した。

だが、画面には何度も「エラー」の文字。

眉がぴくりと動く。

不穏な予感が、心の底からじわりと湧き上がった。

以前、初芽が「家政婦さんのために、分かりやすい番号にした」と言っていたのを思い出す。

もしかしてと思い、最も単純な数字を入力してみた。

それでもエラー。

その瞬間、加津也の頭の中が一気に冷えた。

つまり、初芽は完全に彼との関係を断ち切った、ということか。

そんなはずはない。

この家は自分が贈ったものだ。

彼女のためにどれだけの年月を費やしてきたと思っている?

簡単に手放せるものか。

初芽は自分の女だ。

たとえ自分が手に入れられなくても、他の誰にも渡すつもりはない。

顔が歪み、目に狂気の光が宿る。

自分の女が、自分の許可なく離れていく――

そんなこと、あってはならない。

家を与え、自由を与え、事業の支援までしてやったというのに。

その結果が裏切りだというのか?

証拠はまだない。

だが、初芽の態度を見れば、もう十分だ。

あの頃の想いなど、もう残ってはいない。

ふたりの関係は、すでに壊れていた。

けれど、これまでの年月を思えば、簡単に終わらせられるはずがない。

加津也はすぐに電話をかけた。

今日こそ、はっきりさせなければならない。

言い訳なんて聞く気はない。

とにかく、説明をさせる。

初芽はちょうど、伊吹と一緒に海外行きの手続きをしているところだった。

スマホの画面に「西山加津也」の名前が光った瞬間、その瞳には明らかな苛立ちが浮かんだ。

もう、彼に価値はない。

以前は多少、利用できる相手だと思っていた。

けれど今は違う。

伊吹がいる。

そして、彼への信頼も、感情もある。

加津也なんてもう必要ない。

あの人のことを思い出すだけで、嫌悪感が湧く。

紗雪をあんな形で捨て、堕ちていく姿を何度も見た。

情けなくて、見るに耐えなかった。

今の彼女には、自分の人生がある。

無駄な過去に縛られる理由なんてない。

時間も気力も、もう浪費したくない。

そう思いながら、初芽は何のためらいもなく通話を切った。

ほんの一秒
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