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第1110話

Penulis: レイシ大好き
今はあまりにも突然で、どう説明すればいいのか分からなかった。

京弥は小さく息を吐く。

「さっちゃん、前にも俺、自分の家のこと話しただろ」

「本当に私に嘘ついてないの?」

紗雪の瞳は潤んで揺らぎ、目尻は赤く染まっている。

その姿を見た瞬間、京弥の胸には強烈な保護欲が湧き上がった。

こんな彼女を前に、彼の胸には罪悪感がじわじわと広がる。

せっかく関係が良くなってきたばかりなのに、今ここで真実を言って壊したくはなかった。

「俺がさっちゃんに嘘なんてつくわけないだろ。できるはずがないよ」

京弥は真っ直ぐにそう告げる。

だが心の中では、自分に吐き捨てるような嫌悪が渦巻いていた。

――後で、必ず埋め合わせる。

紗雪はしばらく彼の顔を見つめ、それから小さく頷く。

「分かった、信じるよ」

「ありがとう、さっちゃん。早くうどんを食べよう」

促され、紗雪は黙って最後の一口まで麺を食べきった。

そしてその夜、二人は寄り添いながら眠りについた。

翌朝。

紗雪が出社すると、吉岡と契約締結の時期について話し合った。

吉岡はスケジュールを確認し、眼鏡を押し上げながら提案する。

「紗雪様、やはりパーティーのあとが良いかと。契約後のフォローにも力が必要ですし」

紗雪はうなずく。

「確かに......じゃあそうしましょう」

そして書類を渡しながら言う。

「柿本社長にも連絡を」

「はい」

吉岡が出て行こうとした瞬間、紗雪がふと思い出したように呼び止める。

「ついでに柿本社長を監視して。加津也と接触していないか確認を」

吉岡は一瞬驚くが、すぐに深刻な表情で問い返す。

「まだ柿本社長を信用できない、ということですか?」

紗雪は眉を寄せ、静かに答えた。

「そうよ。もし二人が手を組んでいるなら、こちらも万全の備えが必要だから」

その洞察力に、吉岡は思わず背筋が伸びる。

――さすがうちの社長だ。この人だからこそ、ここまで来れた。

「承知しました」

吉岡が力強く頷くと、紗雪も安心して頷き返した。

多くの年月を共にした信頼がそこにはある。

だからこそ、こうした細やかな任務も安心して任せられるのだ。

吉岡が出ていき、紗雪は静かに仕事に戻った。

「......何だって?もう会った?」

加津也は勢いよく立ち上がり、目を見開く。

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