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第1114話

Author: レイシ大好き
彼女には分からなかった。

答えなんて最初から決まってるのに。

その瞬間、京弥の機嫌は一気に良くなり、紗雪の言葉にすぐさま言い返す。

「俺も、他の人に譲る気はない。君のパートナーは俺だけだ」

真剣そのものの表情で言い張る姿は、どこか子どもっぽい。

端正な顔立ちなはずなのに、今はすっかり拗ねた少年みたいだ。

ただひたすら彼女を見つめ、頑なに答えを求める。

紗雪は思わず吹き出してしまう。

「うん。京弥しかいないよ」

その言葉に、京弥の表情がようやく緩む。

胸の奥までふっと温かくなるのを感じた。

「明日のパーティー、何か準備いる?」

「鳴り城の企業トップが大勢来るから、フォーマルな格好で行くほうがいいと思う」

紗雪が考えながら答える。

京弥もそれは納得だったが、ふと気になった。

――上層の人間が多い。余計なことを言われたりしないだろうか。

まあいい、臨機応変でいくか。

彼の正体を知っている会社なんてほとんどない。

匠に少し根回しさせれば問題ない。

「じゃあ明日は会社まで迎えに行く。何時にする?」

「夜六時開始だから......午後四時でいいかな。ヘアセットするから」

「了解」

夕食を終えると、京弥は皿を食洗機に入れる。

その背中を見ているだけで、紗雪は幸福感に包まれた。

――やっぱり、家庭のことをちゃんとできる男じゃないと。

そういう人とじゃないと、人生は続いていかない。

どうして以前はそれに気付けなかったのだろう。

二人でいると、衝突は多かった。

なのに向き合おうとせず、いつも問題を放置して、時間に任せてしまった。

そのことを思い出すと、胸の奥が少しだけ苦くなる。

あの三年間の空回りは、一体誰が責任を取ってくれるのだろう。

結局、全部自分で乗り越えるしかない。

過去の自分と折り合いをつけていくしかない。

それが、当時見えていなかった答えだった。

今は気づけた。

そう思うだけで、身体がふっと軽くなる。

多角的に見ること。

生活も同じで、そうしてこそ二人は続いていく。

片付けを終えた京弥が手を拭いて戻ってくる。

顔を上げた瞬間、紗雪がまるで恋する乙女みたいな目でこちらを見つめていて、彼は思わず固まった。

「え......?俺の顔に何かついてるのか?」

「ついてるよ」

紗雪は笑って言った。

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