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第914話

Author: レイシ大好き
確かに、やり手だ。

緒莉は話を本題へと戻した。

「あのメッセージ、本当に私からだなんて証拠はないでしょう」

緒莉は堂々と反問した。

必死に心を落ち着けようとする。

何しろ、辰琉のスマホに登録されていた番号には、自分の名前が残っていなかった。

だからこそ、彼女は強硬手段に出て、徹底的に否認するしかなかったのだ。

「いや、あるさ」

今西は冷たく鼻を鳴らした。

「発信元を特定した。背後の銀行口座も調べたが、すべて同じ人物に繋がっている」

彼は耐えきれず緒莉に身を寄せ、耳元で低く囁いた。

「さて、二川さん。この『同じ人物』って、一体誰のことだと思う?」

その言葉に、緒莉の胸が一気に締め付けられる。

「わ、私に分かるわけないでしょう」

彼女は必死に笑顔を作った。

大丈夫、証拠はそれだけ。

自分が否定し続ければ、それで通せる。

帰国さえできれば、母が必ず助けてくれる。

A国でこんなふうに囚われ続けるなんて、母が許すはずがない――

そう信じていた。

そのとき、今西はとうとう辰琉をこちらに引き寄せた。

近づいた瞬間、緒莉と坂井の鼻先を、何とも言えない異臭が突き刺す。

緒莉は思わず鼻をつまみ、顔を上げる。

そこにいたのは、真っ黒に汚れた顔の辰琉だった。

かつての軽薄な色男の面影など完全に消え失せ、ぼんやりとした輪郭だけが残っている。

だが、それでも一目で彼だと分かってしまった。

そして次の瞬間、辰琉は反射的に動き、緒莉の首に手を伸ばした。

その口からは、憎悪に満ちた叫びが飛び出す。

「このクソ女!全部お前のせいだ!

お前さえいなければ、俺がこんなふうになることはなかった!

お前を、お前を呪ってやる!!」

辰琉の言葉は、血を吐くように一言一言が突き刺さる。

その目は緒莉を射抜き、まるで仇敵でも見るかのような殺気を放っていた。

実際には、そこまでのことではないのに。

彼の狂乱した姿に、緒莉の胸にも恐怖が広がる。

思わず今西の背後に隠れた。

「辰琉の精神状態はもうこんなです。

これじゃ訊こうとしても、まともな答えなんて返ってこないでしょう?

やめにしたほうがいいと思います」

彼女に言わせれば、大袈裟にするほどのことでもなかった。

だって紗雪だって、結局は何事もなかったのだから。

あれこれ深読みすれば、かえって
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