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第3話

Author: エッグタルト君
私の心は、底なし沼に沈んでいくように、どんどん重くなっていった。

本当に3日後まで待っていたら、私と和也は持たないだろう。

和也はどんどん弱っていくし、私はスタンガンを当てられたせいで喉が潰れて血が滲み、全身からも力が抜けて、いつ倒れてもおかしくない状態だった。

だが、私に何ができるというのだろうか?

悠斗は、何を言っても信じてくれない。

私はただ和也を強く抱きしめ、心の中でひたすら神々に祈りを捧げるしかなかった。

お願い、和也を奪わないで。こんなにいい子なのに。この子はまだこんなに小さいのに。それに、今まで浩平をいじめたことなんてなかった。なのに、どうしてこんな目にあわないといけないのだろうか。

……

夜になり、悠斗は誕生日の浩平を楽しませるために、会場を移した。

そして、夜は危険だからと言って、家にいたボディーガードが玲奈たちの警備につくことになった。

抱いている和也の呼吸は次第に弱まり、私も話す力すら残っていなかった。

ドアの向こうから足音が聞こえてきた。

家政婦だった。

ドアを少しだけ開けて、隙間から私たちの食事を置こうとする。

これは、希望の光だ。

私は隙をついて彼女の手を掴み、息を弾ませながら頼んだ。

「お願い。私とこの子を助けて」

家政婦は情に厚い人で、以前、私が玲奈たちから濡れ衣を着せられた時も、悠斗に本当のことを伝えてくれていた。

彼女だけが、今の私の希望だった。

しかし、彼女は困ったように顔を曇らせる。

「奥様。私には養わなければならない家族がいるんです。もし奥様を逃がしたことが旦那様に知られたら、クビになってしまいます。

今はまず、これを食べて体力を温存してください……」

そう言い残し、辛そうな表情で食事を置いて出て行った。

希望が消えた。もう死ぬしかないのだと諦めかけた。

だが、和也のことだけは……

これ以上考えるのは怖かった。

涙を拭い、雑炊をすくって和也に少しずつ食べさせる。

私は後ろに体をずらし、ドアにもたれかかって目を閉じようとした。

寄りかかった瞬間、ドアが小さな音を立てて動いた。

家政婦が鍵をかけないでいてくれたのだ!

感謝する間もなく、私はふらつく足で和也を抱えると、外へと駆け出した。

数歩進むだけで息が切れる。今までこの家がこれほど広く、恐ろしい場所だと思ったことはなかった。

私は必死に歩みを進めた。

ようやく人通りのある場所に出たが、もう限界だった。力が尽き、その場に膝から崩れ落ちる。

通りかかる人たちは、私と和也を気味悪そうな目で見るだけで、誰一人近づこうとはしなかった。

その時、悠斗の仕事仲間である渡辺社長が偶然通りかかった。

「野村さん?それに和也くんまで、どうしてこんなひどい怪我を……すぐ旦那さんに連絡してあげますから」

そう言って彼は慌ててスマホを取り出し、悠斗に電話をかけた。

「野村社長!奥さんと息子さんが重傷を負っています!あなたは、確か医療チームの支援もしていましたよね?すぐにヘリを飛ばして救急病院まで運んでもらってください!一刻を争う事態ですよ!」

しかし、電話に出た悠斗は、渡辺社長に二言三言、調子を合わせるような挨拶をしたあと、ふっと声を低くして言い放った。

「渡辺社長、気にする必要はありませんよ。どうせ全部、あいつの芝居ですから。頭の中はいつも、俺の義姉をどうやって陥れるか、そればかりなんです。そんな手口に、どうか騙されないでください。

地下室に入れておけばいいんです。3日後には、俺が自分でなんとかしますから」

電話を切った後、渡辺社長は不憫に思ったのか、自分の秘書の田中洵(たなか じゅん)に連絡して私たちを救急まで連れて行くように行ってくれた。

しかし、仕事が忙しい渡辺社長は私に洵を待つように言い残し、その場を離れた。

……

私は何度も和也の鼻に手を当て、呼吸を確認し続ける。

幸い、洵はすぐに駆けつけてくれた。

私たちを乗せると、洵は困り果てた顔で言った。

「野村社長が浩平くんの誕生日会のために道を塞いでしまっていて、病院までの道が全て渋滞で動かないんです。行く手は遊具で邪魔され、車では進めません」

そんな状況でも、洵は私を励ましながら、車を降りて警備員たちに状況を説明してくれた。

しかし警備員たちは聞く耳を持たない。

「野村社長が今、お祝いのためにここを使われているんです。それに、私たちが知る野村社長の奥さんは、中にいるあの方一人だけですから!」
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