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第二話 カップカレーラーメンと北斗七星(その三)

last update Last Updated: 2025-04-17 11:00:12

 お湯を沸かしている間、私が星空を観察するようになったきっかけを振り返ろうと思う。

それは、私たちが結婚する前のお話である……。

 ——交際して半年くらい経った時のこと。

「もしもし?」

「空、今時間ちょっといいか?」

「うん? いいけど、どうしたの?」

恭弥さんから電話が掛かり、次回のデートの予定日を聞かれた。

どうしても見せたいものがあるからと、彼の家でのお泊まりを招待してくれた。

今はここを拠点にして本格的に住んでいる。

けれど、その当時は彼曰く別荘という形で買ったそうだ。

「お待たせ、恭さん」

「おう、お疲れ」

駅前の待機所で恭弥さんの車を見つけた。

窓を軽くコンコンとノックで合図をする。

すると彼は窓を開け、私を覗くような姿勢で労いの言葉を掛けてくれた。

「大分……待った?」

「いや、俺もさっき来たところ。ほら、助手席に乗って」

「うん」

恭弥さんは笑顔で私を招いてくれた。

彼からの指示に助手席用の扉を開け、車に乗り込んだ。

私のお迎えをしてくれた後は、外食で夕飯を済ませることにした。

そして、そのまま恭弥さんの運転で約二時間程の距離を駆けていく。

——二時間が経った頃……。

エンジンを止め、車が止まっていた。

どうやら、ようやく目的地である彼の家に着いたらしい。

すやぁ……と車の中で気持ちよく寝ていた私に、恭弥さんは声を掛ける。

「空、起きてー。 ほら、俺ん家に到着したよ」

「んん……」

彼の声と温かい手で、寝惚ける私の肩をポンポンされた。

目尻を

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