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第六話 梅雨時の部屋キャンプ(その三)

last update Tanggal publikasi: 2025-06-09 10:33:24

 ——数十分後……。

(ふぅ、食べたぁ……)

ポテトサラダとホットサンドを食べ終えた後、お腹がいっぱいになった。

けれど、昼食はこれで終わりじゃない。

(最後は、あのデザートが待っている!)

デザートを用意する前に、食べ終えたお皿などまとめて片付ける。

一度キャンプ部屋から出て、キッチンへ向かう。

昼食の締めは、先日に作ったお手製のプリンだ。

でもこのプリンは、スーパーの棚に並んでいるプラスチック製のカップのものではない。

ココット皿という約三~四センチぐらいの深さがある耐熱性の丸い陶器に入っている。

但し、今はカラメルが入っていない状態のもの。

(ここからがお楽しみ……)

先ほど下準備の際、プリンの上にザラメをかけてある。

それを今からガスバーナーの一つ、トーチバーナーで炙る。

(お寿司屋さんで魚の表面を軽く炙る時に使うものだけど、我が家でも使うとは思わなかったなぁ)

今回のプリンで、クレームブリュレ風にしてみたかったのだ。

バーナーのスイッチを入れ、火力を調整したらじっくりザラメに当てる。

火に当たったザラメの結晶が、一瞬だけ透明に溶けていく。

そしてまた一瞬、黄金色から今度はオレンジの色味ある茶色へと変化していく。

(慎重に……丁寧に……)

まるで化学反応を起こす、この瞬間を目の当たりで観察しているようだ。

でも、真っ黒にならないように細心の注意を払いながら当てていくのがポイントだ。

美味しそうな色加減になったところで、カチッとバーナーのツマミで火を消した。

(出来た! うむ、なかなかの仕上がり……)

真ん中は少しの焦げ茶色だが、周りはオレンジ色の艶があるカラメルが輝いている。

(ココットを持っても大丈夫かなぁ?)

そう思うのと同時にカラメルのパリパリ感が欲しい。

冷え固まるまで少し時間をおくことにした。

——五分ぐらい経った頃。

(そろそろ、大丈夫かな?)

カラメルの透き通るような透明の艶が見えている。

プリンの入ったココットを手で少し触ると、そんなに熱くなかった。

(いい感じになったし、部屋へ持っていっていただこう!)

こうして至福のデザートが完成した。

キャンプ部屋へ戻った後、チェアへ腰掛ける。

ココットを手にしたまま、パリッとガラスのようなカラメルを突き破りながらスプーンで一すくい。

そして、口に運ぶ。

(お、カラメルに少しほろ苦さが出てる。けど、プリンの甘さも補っているから丁度いい)

デザートは、やっぱり別腹だな。

私は、甘い物に目がないぐらいの甘党である。

食べるだけではなく作る方も好きだ。

手作りクッキーやホットケーキがほとんど。

昔は、時間やイベントがあればホールケーキやタルトを作ったこともある。

(今度は、庭で簡単にできそうなデザートを作ってみたいなぁ)

——ピコンッ!

そう思っていたら、スマートフォンから通知がきた。

(あ、恭弥さんからだ)

恭弥さん「今、休憩中。空、そっちの天気はどう?」

空「こっちは朝からずっと雨だよ」

恭弥さん「もう梅雨入りしたから雨の日が多いよなぁ。まさか、庭でキャンプが出来ないって悶々してたんじゃない?(笑)」

——ギクッ!

(うぅ……バレてる……。なんで分かったんだろう?)

遠く離れているはずなのに、なぜか恭弥さんに私の心情を読み破られてしまった。

ここは正直な気持ちでメッセージを打って答えることにした。

空「ハイ……ソノトオリデス」

恭弥さん「素直で宜しい(笑)」

(あっ! そうだ!)

せっかくだから、私が部屋でキャンプごっこをしているところの写真を撮って送ることにした。

(これが一番良いかな? よし、送信っと!)

数分後、恭弥さんから返信が来た。

恭弥さん「なぁに? 部屋で楽しく満喫してるじゃん!」

空「うん。梅雨に入ったからキャンプ出来ないし、部屋で雰囲気だけでもと思って」

恭弥さん「あぁ、確かに部屋でやるのも悪くないな」

そのメッセージの後、恭弥さんから写真が送られてきた。

雨上がりの後に差し込む、大きな虹の写真だった。

(綺麗……なんか神秘的な感じだ)

おそらく、彼のお気に入りである一眼レフのカメラで撮って編集した作品だ。

空「すごく綺麗だね」

恭弥さん「綺麗に撮れただろ? 本当に偶然だったんだけど、逃さず夢中になってシャッター切ってたわ」

空「うん、奇跡のタイミングだったんだね」

その偶然に『奇跡の作品が生まれる』という意味って、このことかもしれない。

恭弥さん「あっ、クライアントの人に呼ばれたからそろそろ仕事に戻る。また夜にメッセージ送るから」

空「うん、わかった。行ってらっしゃい」

(恭弥さんも、頑張ってお仕事に励んでいるなぁ……)

近々、風景の写真集を出すらしい。

それの打ち合わせだったり、購入特典用のポストカードの写真を撮ったりと詰めてるみたい。

私は、彼の写真は大好きだ。

何気ないものでも、色んなメッセージ性がある。

実は、私もこの写真集の中のメッセージを一部だけ担当している。

前回出した写真集も、おかげ様で好調に売れていた。

だから今回の写真集も恭弥さんから頼まれたから嬉しかった。

雪絵さんの仕事と同時進行で少しづつ書き溜めもしている。

(今度、打ち合わせの日程が合えばリモートで仕事を一緒に出来るから、楽しみだなぁ)

私も恭弥さんが出す写真集のサポート役だから、気を引き締めて頑張らないといけない。

ゆっくり昼ごはんを食べ終えた私は、次の仕事に精を出すことにした。

梅雨入りした雨の中のキャンプごはん、ごちそうさまでした。

(あとは、梅雨明けするまで大人しく待っていよう……)

——夏に向かう雨上がりの虹を見るのが、待ち遠しくなるこの頃である……。

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