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第六話 梅雨時の部屋キャンプ(その二)

last update publish date: 2025-06-09 10:32:47

 ——空き部屋を改め、キャンプ部屋にて。

(やっぱり、最初はコーヒーで一服してから……)

家の中でいつも使用しているヤカンに水を入れ、シングルバーナーで火をつけた後沸かしてる。

時折考え事しつつもクルクルとハンドルを回しながら、手動タイプのコーヒーミルで無心に豆を挽いている。

——シュー……。

(あっ、そろそろお湯が沸いてくる)

マグカップの上にフィルターを入れたドリッパーをセットし、粉状に挽いたコーヒーをその中に入れた。

(さて、お湯を入れるとしますかぁ)

ゆっくりとドリッパーの中のフィルター周りを注ぎ入れる。

一滴が、コーヒーの雫になりポタポタと落ちていく。

お湯はフィルターからちょっとずつ通過し、マグカップの中へ入り切る直前に二回目のお湯を注ぎ入れる。

お湯を二、三回に分けて、少しづつ継ぎ足す。

(コーヒーの香り、いい香りだ……)

これが、私のキャンプを行う前の至福のとき。

お湯を注ぎ終わったら、ドリッパーを外して受け皿に置く。

マグカップを手に取って一服する。

(はぁ~……やっぱりこの瞬間が好きだ……。何もかも忘れて落ち着ける時間っていい……)

コーヒーを飲んでホッとした後、ボーッとして心が休まる時間。

それが都会に住んでいた時でもできたら良いなあ……と思うこともあった。

今は山奥の中の田舎暮らしだけど、そんな時間を作れたのは嬉しい。

私にとって幸せな時間を作れたから叶っているんだなぁと。

(さて、そろそろご飯を作らないと! もうお腹がペコペコ……)

台所で作っておいたドライカレーの入ったパンは、ホットサンドメーカーで既に挟んである。

あとは焼く作業を行うのみだ。

コーヒーのお湯沸かした時に一度火を消したから、再度シングルバーナーを着ける。

(パンが焦げると苦いから、火力は心持ち弱火よりに……)

バーナーのツマミで回し、調整しておく。

メインディッシュのカレーサンドが入ったホットサンドメーカーを五徳の上へ乗せる。

大体の目安として、片面三分間ずつで焼いていこうと思う。

そのため、火の加減も大事だ。

(まずはこっちの面から……)

自分のスマートフォン内のタイマー機能を使い、三分セットして待つ。

(ちゃんといい焼き色になっているかなぁ……?)

焼き目の色味がわかるまで、まだ少しの辛抱だ。

——ピピッ、ピピッ!

タイマーの音が鳴った。

次はひっくり返して焼く面を交代し、再び同じように三分タイマーを設定した。

(カップ麺のときもそうだけど三分って、あっという間のようだけど意外と長く感じることもあるなぁ)

二回目のタイマーの音が鳴った。

反対にしていたホットサンドメーカーを元に戻す。

取っ手に引っ掛けていた金物の留め具を外し、いよいよホットサンドとのご対面の時が来た。

この瞬間が一番ドキドキする。

(どうか、上手く焼けてますように……)

ホットサンドメーカーのレバーを上げてみる。

煙が少し立ちこもっていくけれど、すぐに跡形がなくなっていた。

その先には、パンに黄金色とほんのり焦げ茶色の焼き目が付いていた。

(おぉ……良い感じ。これは大成功だ!)

焼けたホットサンドを木のカットボードに移し、ナイフで斜めに切った。

(うん、完璧! 我ながら上出来なもの)

カフェ雑誌やメニューの写真を想像しながら、美味しそうな盛り付けに出来上がった。

メインディッシュが揃ったところで、なるべく温かいうちにごはんをいただこう。

「いただきます」

私は、手を合わせて食事の合図を声に出した。

ホットサンドをいただく前に、まずはポテトサラダでひと口つまむ。

我が家のポテトサラダはじゃがいもときゅうり、ハムといった具材三つだけ。

今回はゆで卵を含めているから、四つの具材で少し贅沢なものになった。

だが、味はいたって家庭にあるシンプルなもの。

(ん! ピリッときてるぅ~)

味付けのメインはマヨネーズだけではなく、粒マスタードも使用している。

粒マスタードの辛味と粒のプチプチ感が、味のアクセントをつけてくれて堪らない。

じゃがいもの品種は特に決まってなく、全て潰しているわけではない。

少しホクホク感を出すために、適度な割合で残している。

ゆで卵はエッグスライサーで平等に細かくするときもあれば、あえて均一にせず、不揃いに潰したりとその日の気分次第で決める。

(うん、我が家のいつもの味だ……)

家庭料理には『いつもの味』って言える力がある。

それがすごく、食に対しての安心感があるなぁとしみじみ思う。

 ◇ ◆ ◇

さぁ、いよいよお待ちかねのメインであるホットサンド。

中身は先程述べた通り、昨日の晩ごはんとして作ったドライカレーだ。

合挽肉と細かくした人参や玉ねぎを炒め、市販のコンソメスープとカレールーで合わせた味に仕上げている。

斜めに切った片側の尖っている方から、一口食べてみよう。

——カリッ!

こんがり焼かれた端の部分を噛んだ瞬間から、勢いよく音を立てている。

(パンの耳付近のカリカリ感がいい! サンドイッチ用に使う八枚切りのものにして良かった)

今度はカレーのぎっしり詰まった部分を食べよう。

ドライカレーに限らず『カレー』というメニュー。

なぜか二日目のものが美味しかったりと不思議なもの。

余りものとはいえ、好きな食べ物の一つであるのは確かだ。

あと、煮物料理自体が大量に作るイメージでもある。

(なぜだろう……? 味が少しずつ染みるから奥深くなるのか……)

他にも、肉じゃがのような煮物やシチューといった煮込み料理も……。

そんな疑問を浮かんで出てくることは、時折ある。

自分で言うのはどうかと思われるが、まるで哲学のような疑問の持ち方みたいな。

だけど自分の中では、あまり深く考えずこう割り切っている。

(食べて、自然と幸せが出るんだから……もう、それで充分だ)

——とにかく美味しいものは美味しい、結論はこれに尽きるのだから……。

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