Se connecterヴィヴィエンヌはついに、護衛たちに引き摺られるようにして連行された。豪奢なドレスは無惨に皺くちゃになり、髪は乱れ、その絶叫は石造りの回廊の奥へと遠ざかり、やがて完全に途絶えた。重々しい音を立てて大扉が閉まる。それは一つの章の終わりを告げる音であると同時に、さらに複雑で厄介な次章の幕開けを告げる音でもあった。未だ緊張の糸が張り詰める大広間の中央で、エステラは背筋を伸ばして立っていた。ヴィヴィエンヌが消えた扉から視線を外し、ディリアンとモルウェンナを交互に見比べる。皇妃の顔からすでに怒りは消え失せ、代わりに深い警戒心が浮かんでいた。地雷原に足を踏み入れてしまったことに、今更気づいたかのように。エステラはようやく口を開き、先ほどよりもずっと低い声で言った。「どうやら、本当にただの誤解だったようね。先ほど……ヴィヴィエンヌが、全てはモルウェンナの仕業だと糾弾するのを、誰もが聞いていたものだから」ディリアンは答えない。背筋を伸ばし、ただ静かに立ち尽くしている。その表情からは一切の感情が読み取れない。公爵の沈黙は、往々にして怒声よりも遥かに強い重圧をもたらす。モルウェンナが沈黙を破った。彼女は燃えるような赤い瞳をディリアンへと向け、鋭く言い放つ。「それなら、あの女たち全員が、私に這いつくばって謝罪するべきではないの?」そこには、未だ癒えることのない生々しい傷の痛みが込められていた。そして彼女は、広間全体をゆっくりと見回した。先ほどまで自分を声高に糾弾し、汚らわしい化け物でも見るかのような目で睨みつけていた貴族の女たちの顔を。ディリアンは深く息を吸い込んだ。分かっている。痛いほど分かっていた。あの病を放ったのがモルウェンナであることも、あの小瓶が単なる偶然ではないことも。だが彼には、もう一つ分かっていることがあった。モルウェンナを、皆の面前で引き摺り下ろさせるわけにはいかない。絶対に。今でもないし、こんな方法でもない。自らの計画を、今の段階で破綻させるわけにはいかないのだ。ディリアンはようやく口を開き、静かで、だが威厳に満ちた声で言った。「お聞きになりましたね、皇妃殿下」エステラが顎を上げる。「そういうことなら、純粋な誤解だったというわけね。私たちはただ――」モルウェンナがその言葉を遮った。声は微かに震えてい
大広間は、水を打ったように静まり返っていた。側面の階段から足音が響き、やがてモルウェンナが姿を現す。足取りはゆっくりと、いつものように優雅だった。エステラと帝国中の前で、まさに今自らの名が業火に焼かれようとしている人間にしては、その顔はあまりにも凪ぎ切っていた。ドレスの着こなしに乱れはなく、赤髪は完璧に結い上げられていた。外の世界が崩壊していることなど、欠片も気にかけていないかのように。彼女の視線が、目の前に並ぶ焼け爛れた顔の群れをゆっくりと舐める。ほんのコンマ数秒、極めて短い間だが、その瞳の奥に、誰の目にも留まらないほどの仄暗い満足感が閃いた。「皇妃殿下」モルウェンナは浅く礼をし、上品に口を開いた。「ご来訪とは……思いもよりませんでした」エステラが一歩、前に踏み出す。背後に控える軍隊も一斉に動き、その手はすでに剣の柄にかかっていた。「白々しい真似はやめなさい」エステラが歯の間から威嚇の音を漏らす。「私たちに、何を盛ったの?」モルウェンナは眉を上げ、大袈裟に驚いてみせた。「盛った、ですって?」柔らかくオウム返しにする。「皆様の方から、私に『贈り物』を届けに来てくださったのではありませんの?」貴族の女たちの間から、怒りの囁きが爆発した。「この呪われた魔女め!」一人が金切り声を上げる。その声は激しく震えていた。「私たちの顔を見なさいよ!」モルウェンナは彼女たちの顔を順にねっとりと見つめ、そして、薄く微笑んだ。「ああ……その腫れ物、本当に、お気の毒ですこと」ディリアンが鋭く彼女を睨みつけて警告した。「モルウェンナ、やめろ」しかし、エステラにはもはやそんな制止など耳に入らなかった。「あなたの三文芝居を見に来たわけじゃないのよ」エステラが氷点下の声で吐き捨てる。「もしこれがあなたの仕業だと証明されれば、帝国の法廷に引き摺り出してやるわ。ディリアン・レヴェンティスでさえ、あなたを庇いきれない法廷へね」モルウェンナはゆっくりとディリアンの方へ顔を向け、再びエステラへと視線を戻した。「証拠、ですって」囁くように、柔らかく響く声。「それなら、その証拠とやらを私に見せていただけますか、殿下?」再び、沈黙が落ちた。大広間の隅で、セレーネはイラルドと共に静かに
脅しも、弁明もなかった。そこにあったのは、ただ冷徹な決意だけだ。ヴィヴィエンヌはしばし押し黙った後、くすくすと短く笑い声を立てた。だが、その響きはどこまでも空虚だった。彼女は踵を返し、それ以上の言葉を残すことなく部屋を去った。扉が閉まる。モルウェンナは、再び一人になった。空になったテーブルを見つめ、やがて窓の外へと視線を移す。夕暮れの光は、今まさに夜の闇に呑み込まれようとしていた。その顔に達成感はない。喜びの欠片すらない。ただ一つの確信だけが、そこに静かに鎮座していた。先ほどまで自分を嘲笑っていた世界が、間もなく、はるかに苦い結末を味わうことになる。それは公開処刑でも、粗暴な復讐でもない。真綿で首を絞めるような、洗練された教訓だ。モルウェンナを見下すことが、二度と繰り返してはならない致命的な過ちであると、骨の髄まで刻み込んでやるための教訓だった。翌朝、帝国は狂乱の只中で目を覚ました。凶報は暁の鐘よりも早く駆け巡った。貴族の夫人たちが次々と病に倒れたのだ。宮廷の医術書にも記載がない、前代未聞の奇病。彼女たちの身体には、皮膚の下から滲み出たような、細かい傷跡に似た発疹が無数に浮かび上がっていた。焼け付くような熱と刺すような痛みが、徐々に体力を奪っていく。だが、最も奇怪なのはその症状ではなく、発症する「法則性」だった。無差別に広がる病ではない。特定の女たちだけが、狙い撃ちにされていた。その名が、広間から広間へ、茶室から使用人部屋へと囁かれる。彼女たちは皆、昨日のお茶会の出席者だった。高笑いし、嘲り、紅茶に口をつけることすらなく立ち去った者たちだ。小宮殿は封鎖された。腕利きの医師たちが急遽召集される。祈祷が行われ、ありとあらゆる霊薬が試されたが、確かな治療法は一つも見つからない。この病は伝染性ではなかった。接触でも、空気でも、食物からでも感染しない。まるで病自体が意志を持ち、標的を選び取っているかのように、極めて限定的に発現していた。そしてモルウェンナは……全てを把握していた。自室に静かに腰掛け、怯えきった使用人たちの囁き声を通して、その報告を聞いていた。表情に変化はない。勝利の笑みもなければ、狼狽える素振りもない。ただ深い静寂があるだけだ。まるで、事が自らの描いた完璧な筋書き通りに進んでいるとでも言うように。
翌日。モルウェンナは窓辺の椅子に静かに腰を下ろしていた。背筋は真っ直ぐに伸びていたが、その肩は鉛のように重く見えた。薄いカーテン越しに差し込む朝の光が、床に柔らかな影を落とす。彼女の胸の内で煮えたぎる、暗く、燃え盛る感情とはひどく対照的だった。彼女の目の前で、ヴィヴィエンヌとアニーが、わざわざ彼女宛てに届けられた「贈り物」を忙しなく開封している。一つ、また一つと。大きな笑い声も、過剰な当て擦りもない。だが、だからこそ、その侮辱はより鋭く胸を抉った。ひび割れたティーカップ。金継ぎでこれ見よがしに修復されており、その意味はあまりにも明白だった。高価な金箱に詰められた、安物の粗悪な茶葉。銀メッキの小さな箒。色褪せて使い古されたレースの手袋。鳥籠に囚われた鳥が彫られた小さな手鏡。針のない置き時計。古びて時代遅れな貴族の礼儀作法書。そして、真珠のネックレス……だが、真珠はたった一粒しかついていない。そのような品々が、次々と箱から現れた。これらは単なる品物ではない。メッセージだ。上品な微笑みと貴族の礼儀作法というオブラートに包まれた皮肉。自分の手を汚すことなく、最も残酷な方法で相手に恥をかかせるための手段だった。モルウェンナは動かなかった。テーブルを叩きつけることも、金切り声を上げることもない。しかし、その平静の裏側で、怒りは激しく沸騰していた。骨の髄まで噛み砕き、忍耐の限界を焼き焦がしそうになっていた。ヴィヴィエンヌはテーブルの傍らに立ち、アニーが品物を整理するのを手伝っていた。その口元には薄い笑みが浮かんでいる。礼儀正しいと呼べる程度には控えめだが、嘲笑だと読み取るには十分すぎるほど明確な笑みだった。モルウェンナはようやく口を開いた。声は静かだったが、薄い剃刀の刃のように鋭かった。「アニー」振り返らずに命じる。「私が指定した物を集めなさい」アニーの手が止まった。古いレースの手袋を握る指先が、無意識に強張る。その顔には明らかな躊躇いがあった。彼女は愚かではない。その命令が何を意味するのか、理解していた。「……畏まりました」彼女はついに答え、深々と頭を下げてから動き出した。ヴィヴィエンヌがモルウェンナをちらりと見た。「あいつら全員に、復讐する気?」モルウェンナはゆっくりと顔を向けた。その眼差しは
モルウェンナは凍りついた。ほんの一瞬だった。だが、怒りに引き攣る顔が再び爆発の糸口を探すのをやめるには、十分な長さだった。ディリアンの言葉が頭の中で反響し、これまで意図的に目を背け続けてきた一つの事実を容赦なく打ち据えた。呪い。絆。単なる意志や力では決して断ち切れない、三人をがんじがらめに縛り付ける運命。彼女は忘れていた。あるいは……思い出したくなかったのだ。セレーネを殺すことは、自分自身を殺すことと同義である。そしてそれは、ディリアンをも殺すことを意味していた。しかし、怒りは論理を曇らせる猛毒だ。モルウェンナは引き下がりたくなかった。屈服したくなかった。負け犬の姿を晒すことなど、断じて耐えられなかった。自分が渇望する男と、憎悪する女の目の前では特に。ディリアンは依然として彼女の腕を強く掴んでいた。乱暴ではないが、このまま逃げ去ることなど不可能だと悟らせるには十分な力だった。「どういう意味か、分かっているはずだ」ディリアンは再び口を開いた。低く、断固とした声。過剰な感情が削ぎ落とされている分、その響きはひどく残酷だった。「あの絆は冗談じゃない。お前がどれだけ否定しようと、気にしていないふりをしようと……もしセレーネが死ねば、直接的であれ間接的であれ、あの呪いがお前を呑み込む」モルウェンナは生唾を飲み込んだ。怒りが爆発して以来、初めて、その顔に躊躇いが差した。ほんの些細な揺らぎではない――闇を塗り固めて築き上げてきた彼女の絶対的な確信に、微細な亀裂が走ったのだ。「死ぬことなんて、怖くないわ」彼女は低い声で呻いた。それは挑発というよりも、脆く崩れ落ちそうな告白のように聞こえた。ディリアンは彼女を長く見つめた。「怖いか怖くないかの問題じゃない」と反論した。「結果、代償の話をしているんだ」彼は少し距離を詰めた。モルウェンナがその眼差しから逃れられないほどの近さまで。ディリアンは静かに続けた。「そして今日、俺は初めて、お前に『頭を使え』と頼んでいるんだ」二人の間に静寂が降りた。金切り声も、抵抗もない。ただ、モルウェンナの重く不規則な呼吸音と、未だ胸の内で渦巻く怒りの動悸だけがあった。消え去ってはいない。ただ、押さえ込まれているだけ。炎はまだそこにある。彼女の身を焦がしている。だが今、その炎
その場にいた全員が、凍りついたように息を呑んだ。まるで時間が止まったかのようだった。血走った目で荒い息を吐きながら、モルウェンナがレヴェンティス城で決して口にしてはならない言葉を放った、その瞬間。「この女を殺してやる!」決して大きな声ではなかったが、ひどく鮮明で、酷薄だった。聞く者全ての血の気を引かせるほどに、生々しい響きを帯びていた。ディリアンの体が強張る。モルウェンナの腕を掴む手に、反射的に力が入った。ほんの少しでも気を抜けば、彼女が本当にセレーネに飛びかかりかねないと危惧するかのように。「どういう意味だ?」地を這うような低い声だが、そこには危険な威圧感が込められていた。モルウェンナが顔を上げる。そこに涙はない。あるのは剥き出しの怒りと、もはや隠そうともしない憎悪だけだ。「殺してやるって言ったのよ!」彼女は繰り返した。今度はより鋭く、よりはっきりと。その場にいる全員に、確かに理解させるために。何人かの使用人が短い悲鳴を漏らした。護衛の騎士たちは顔を見合わせ、直ちに動くべきか、それとも命令を待つべきか戸惑っている。「そんな真似はさせない」ディリアンが断固として言い放つ。その声は氷のように冷たかった。モルウェンナは短く笑った。狂気を孕んだ、ひび割れたような笑い声だ。「どうしてできないの!?」彼女は金切り声を上げる。「今すぐ、この女を殺してやることだってできるのよ!」その言葉は、鋭い刃のように空気を切り裂いた。ディリアンがセレーネへと顔を向ける。一瞬、その眼差しが揺さぶられた。命令と、懸念と、そして言葉にする間もなかった、より深い何かが入り混じっていた。「セレーネ」彼は早口で促した。「ここから離れろ!」セレーネは彼を見つめ返した。一歩も動かない。「どうして私が、立ち去らなければならないの?」静かだが、はっきりとした声。その平静さの裏には傷があり、あまりにも長く抱え込みすぎた疲労が滲んでいた。モルウェンナが空を裂くような声で叫んだ。「そうよ!あなたはそこにいなさい!逃げるんじゃないわよ!さあ、私と殺し合いなさい!」セレーネは微笑んだ。友好的な笑みではない。薄く、冷酷で、突き刺すような笑み。「私は、薄汚い下賤な人間ではないの」彼女はひどく平坦に言い放った。
その朝、セレーネは違和感を覚えていた。朝食の席に、ディリアンがいる。しかも、同じ卓に腰を下ろしている。それは、ほとんどあり得ない光景だった。彼が屋敷にいる日でさえ、朝は執務室か自室に籠もるのが常だった。セレーネも、もう近づこうとはしない。どんな言葉も、どんな気遣いも。彼にとっては「邪魔」でしかないと、知ってしまったから。心の傷が、彼女の足を止めていた。「お祖母さんと母上が、後で来る」食器を置き、ディリアンが言う。セレーネは一瞬だけ彼を見た。「わたくしが、まだ療養中だとお伝えしましたか?」「だからこそ、見舞いに来る」淡々とした答え。セレ
その朝、空気は凍えるほど冷たかった。いつも通り、セレーネはディリアンの姿を見なかった。もはや慣れきっている。夫が屋敷に戻らないことなど、今に始まった話ではない。かつては、城の執務が忙しいのだと自分に言い聞かせていた。だが真実を知ってしまった今、胸に残るのは嫌悪だけだった。心の傷はまだ癒えていない。それでもセレーネは、時間が自分を強くしてくれると、必死に信じようとしていた。しかし、その朝は違った。突然、公爵邸に父、モロー伯爵が現れたのだ。「ヴィヴィエンヌに、いったい何を言った?」低く、重たい声。逃げ場のない問いかけだった。「何を?あの娘が、何か
食堂の空気が凍りついた。セレーネの言葉は氷のように落ち、ヴィヴィエンヌの顔色を奪い、ディリアンを立ち尽くさせる。まるで、初めて彼女を知ったかのように。「これは、お前らしくないな」ディリアンが低く呟く。セレーネは薄く微笑んだ。「わたくしのほうこそ、驚いておりますわ。ようやく、あなたがわたくしを見てくださったのですから」「その言い方、恥ずかしくないの?」ヴィヴィエンヌが堪えきれずに割り込む。セレーネの視線は平坦だった。「お二人に合わせているだけですわ。それで動揺なさるのは、なぜでしょう?」ヴィヴィエンヌは顔を引きつらせ、勢いよく立ち上がる。そのまま足
――流産したばかり?混乱しているだけ?ヴィヴィエンヌは一瞬、言葉を失った。不快感を押し殺すように表情が強張る。ディリアンは彼女の手を無造作に振りほどき、そのまま振り返りもせずに歩き去る。取り残されたヴィヴィエンヌは、その場で静かに目を細めた。唇が歪み、怒りを噛み殺すが、やがてその端に、かすかな笑みが浮かぶ。――セレーネが本気で、離婚するつもりなら……胸の奥で、期待が膨らむ。「レヴェンティス公爵夫人、ね?」その称号を、舌の上で転がすように囁く。ずるりとした笑みが広がり、低く喉を鳴らして笑った。そして何事もなかったかのように、ディリアンの後を追う。…