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第640話

Author: 魚ちゃん
そう尋ねた直後、何かに気づいたように、明里ははっと目を見開いた。

「彼は知らない。そう、前に別れを告げたのも、それが理由だった」朱美はそう伝えた。

明里の目から再び涙が溢れ、どうやっても止めることができなかった。

朱美の体に異変が起きていたことも、その胸にどれほどの苦悩を抱え込んでいたのかも、すぐそばにいながら全く気づけなかったのだ。

朱美は体のことを理由に裕之へ別れを告げるなんて、どれほど辛く、身を切られるような思いだったに違いない。

それなのに、自分は何も知らずに、呑気に構えていた。

朱美はゆっくりと、ことの顛末を明里に語って聞かせた。

すべてを聞き終えると、明里はたまらず声を震わせた。「お母さん、そんな大事なことがあったのに、どうして富永さんに隠して別れたりしたのよ……」

「私だって……」朱美は短くため息をついた。「もし本当に体が悪かったら、もう彼のそばにはいてあげられないと思ったの。長く引き延ばすより、早く終わらせてしまった方がお互いのためだと思ったから」

「そんなの、絶対に間違ってるわよ!」明里は怒りと切なさが入り混じった声で叫んだ。「お母さん、もし今日私に
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