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第779話

作者: 魚ちゃん
樹は、楽しそうに笑う胡桃の横顔を愛おしそうにちらりと見た。

彼女は明里と何を話しているのか、くすくすと笑い続けている。

樹は思わず本音をこぼした。「諦められるわけがないだろう」

「それなら頑張れ」潤は短く励ました。

「命ある限り、絶対に諦めない」樹は静かに、しかし力強く宣言した。「俺が棺桶に入る前には、なんとしても胡桃からの『YES』を手に入れてみせるさ」

以前、明里から樹の胡桃への献身ぶりを聞かされたことが何度かあった。でも今この瞬間、潤は初めて、樹のことを心の底から気の毒だと感じた。

愛する女との間に子供までいて、共に暮らしているのに、夫としての法的な立場だけが永遠に与えられない。もしこれが自分の身に降りかかったら、どれほど辛く苦しいことか。

「まあ」樹は自分に言い聞かせるように続けた。「突き詰めれば、結婚なんて、ただの法的な契約書みたいなものだ。今だってあいつと一緒にいて、可愛い子供だっている。あいつがどうしても嫌だと言うなら、最悪、一生このままでも構わないとも思ってる」

そう強がってはみても、入籍というのは婚姻を法的に認め、社会的に二人の絆を証明する唯一の手段だ
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