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第3章

Author: Sky_1431
last update publish date: 2026-10-08 17:00:15

第3章

妹の病室の外の廊下を行ったり来たりしながら、エヴィの頭の中は完全にパニックに陥っていた。先ほど起きた出来事が頭から離れない。男たちが自分に銃を突きつけ――真っ直ぐ顔面に狙いを定めていたなんて、今でも信じられなかった。

先ほどエレベーターに乗り込んだものの、すぐに降りて U ターンし、この廊下へと戻ってきたのだ。まだサンシャインの病室に入る気にはなれなかった。こんなにも動転した姿を見せて、妹にまで無用な心配をかけたくなかったからだ。先ほどの光景が脳裏で何度も何度も再生される。まるで生涯探し続けていた答えを見つけたかのような目で見つめてきたあの幼い少女と、恐ろしい存在でありながら、どこか奇妙で圧倒的な威厳を放っていたその父親。

突然腕を掴まれ、エヴィは飛び上がらんばかりに驚いた。瞬時に身構えて振り向くと、そこには背の高い筋骨隆々の男が立っていた。険しい顔つきに、冷たく感情の読めない瞳。先ほどアモラが「ブルース」と呼んでいた男だ。自分のうなじに銃口を突きつけてきた、まさにその男だった。

「一緒に来てもらおう」

腕を握る力を強めながら、男は冷淡に告げた。

彼女は振りほどこうと腕をひねった。「ちょっと待って! あんた一体何様のつもり!? 離してよ! どこにも行く気なんてないから!」

「嫌でも来てもらう。ボスの命令だ。痛い目に遭いたくなければ、騒ぐんじゃない」

誰か気づいてくれと祈るように周りに視線を走らせたが、廊下には誰もいなく、完全に静まり返っていた。

「どうして私がアンタたちについていかなきゃいけないのよ!?」必死に冷静さを保とうとしながら、彼女は問い詰めた。

ブルースはさらに強く腕を締め上げる。「無駄な質問はやめろ。黙ってついて来い」

エヴィの胸の奥底に深い恐怖が忍び寄ってきたが、彼女は必死で取り乱すまいと踏みとどまった。「分かったわよ! 行けばいいんでしょ!」彼女は歯を食いしばって吐き捨てた。「でも言っておくけど、誘拐したって大人しく従うと思わないでね!」

ブルースは返事すら寄越さなかった。彼は彼女をエレベーターへと連行し、そのまま通用口から外へと連れ出した。そこには一台の黒い車がエンジンをかけたまま待機していた。彼はドアを開けると、ほとんど押し込むように彼女を後部座席へ押しやり、自らは助手席へと乗り込んだ。

「一体私に何の用なの!? 私が何か悪いことでもしたっていうの!?」

苛むような強い不安から、彼女の押し殺した声が鋭く響いた。

彼は答えない。エヴィは窓の外を虚ろに見つめながら、震える両手を必死に抑えつけた。車が自分をどこへ連れて行こうとしているのか見当もつかない。心臓が激しく脈打ち、今にも胸を突き破って飛び出してしまいそうだった。

「お願いだから、どこに行くのか教えてよ……」彼女は再び乞うように尋ねた。

だがブルースはまるで分厚いレンガの壁のようで、何の反応も示さず、完全に無感情なままだった。

数分後、車は誘拐犯の隠れ家というよりは、大富豪の邸宅と呼ぶにふさわしい壮麗な建築物の前に停車した。

「降りろ」彼は彼女を車から引きずり出しながら命じた。「ボスがお待ちだ」

他に選択肢もなく、彼女は従うしかなかった。男の案内で豪奢な廊下を進み、薄暗い光に包まれた豪華な調度品で飾られた応接室へと足を踏み入れた。室内は重厚なダークウッドと本革のインテリアで統一されており、一目で桁違いの富裕層だと分かる空間だった。部屋の中を見回すと、巨大な執務机の向こうに、先ほど出会ったあの男――あの小さな女の子の父親が座っていた。

男は静かに腰掛け、その鋭い眼光を真っ直ぐ彼女に向けていた。

「エヴィ、だったな?」彼は尋ねた。

胸を打つ不安の波を押し返し、彼女はその場に仁王立ちになった。「そ、そうよ。それが何か?」

「ラッセル・ラクロワだ」視線を外すことなく、男は名乗った。

彼女は身を守るように顎を強く上げた。「病院から私を拉致させた理由を説明してもらえる? 娘さんのことなわけ? さっき全部説明したはずでしょ!? 娘さんが触れ合った女性全員にこんな真似してるの!?」

ラッセルは眉ひとつ動かさなかった。「座れ」と、向かいの椅子を指さした。

「立っていたほうがマシよ」恐れを押し殺しながら、彼女は即座に言い返した。武装した男たちに囲まれた男に口答えするなんて、自分から墓穴を掘っているのだろうか?

ラッセルの唇の端に、かすかな薄笑いが浮かんだ。どこか面白がっているようにも見えた。「好きにしろ」

「いいわ。それで、一体何の用なのよ?」立ち尽くしたまま、彼女は問いただした。

彼の目が細められる。「娘のアモラが……すでに不運にも君に執着してしまってな。実に厄介なことだが、事実だ」

彼女は眉をひそめた。「執着? たった今、今日初めて会ったばかりじゃない」

「その通りだ。だが、子供の行動に論理など存在しない」彼は答えた。「あの場所を離れてからというもの、あの子は泣き続け、君を求め続けている」

エヴィはあの少女の涙に濡れた瞳を思い出した。「あの子……すごく寂しそうだった」

ラッセルは一度だけ深く頷き、椅子の背もたれに体を預けた。「あの子には、身近に安心できる存在が必要なんだ。君のような人間がな」

信じられないといったように、彼女の眉が跳ね上がった。「はあ? 娘さんがたまたま私を気に入ったからって、ここまで連れてきたわけ!? 金持ちのやり方っていつもそうなの!? 私たち貧乏人を何だと思ってるのよ!?」

「仕事のオファーだ」彼は平然と説明した。「あの子のシッターになれ」

彼女は乾いた、可笑しくもない笑いを漏らした。「私はベビーシッターなんてやってないわ」

「無職だろう?」ラッセルは淡々と尋ねた。

恥ずかしさでエヴィの耳がカッと熱くなった。「あなたに何の関係があるの!? 無職だったら何だっていうのよ!?」

「調べさせてもらった。職はなし、妹は入院中。莫大な医療費がかかっているはずだ」

心臓が胃の底まで落ち込んでいくような感覚がした。「私の身元調査をしたの……!?」

「徹底的に調べる必要があった。君が適任かどうかを知るためにな」

彼女の表情が完全に強張った。「あいにく、適任じゃないわ。返事はノーよ。もうほっといてくれない? 娘さんのシッターになるなんて気はサラサラないから」

ラッセルは瞬きひとつしなかった。「相談しているわけではない」

彼女の眉間に激しい怒りの皺が寄った。「強要するつもり!?」

「君にはアモラのシッターになってもらう。あの子には君が必要だ。そして君には金が必要だ。この条件は互いにとって都合がいい」

「絶対に嫌よ」彼女はきっぱりと繰り返した。「私には私の責任があるわ。私の人生があるの。妹には私が必要なのよ! すべてを投げ打って妹を捨て、あなたの娘のシッターになれだなんて無理に決まってるでしょ!」

ラッセルは沈黙を守ったが、その瞳はまるで彼女の価値を品定めするかのように、一挙手一投足を冷静に計算していた。そしてついに、彼は口を開いた。

「妹の……入院費を全額持とう。彼女にかかるすべての医療費を支払う」

彼女の動きがピタリと止まった。「……どういう意味?」

「治療費はすべて私が負担する。さらに、回復した後の職も保証しよう」

部屋の空気が一瞬にして胸から吸い出されたかのようだった。そんな都合のいい話には必ず代償が伴うことくらい分かっていた。だが……それは彼女にとって、到底断ることのできない破格の条件だった。

「心動かされたようだな」ラッセルの唇に、かすかな薄笑いが浮かぶ。

必死に必死に、エヴィは自分の焦りを隠そうとした。「ふ、解ったわ。交渉しましょう」

「交渉?」彼は彼女の返答を心底面白がっているようだった。

「オファーを引き受ける代わりに、妹の入院費を払うだけじゃ足りないわ。私があなたの娘を世話している間、妹に安定した仕事を保証し続けてちょうだい。これが私の条件よ」

ラッセルの瞳に怪しい光が宿った。彼女がここまで強く押し返してくるとは予想していなかったようだ。「いい度胸だ。認めてやろう」

「私が必要なら、私の条件を呑んで。呑めないなら、今すぐ他のシッターを探し始めることね。どんなに痛い目に遭わされたって、首を縦に振る気はないから!」

彼女は組んだ腕の裏で、激しく震える両手を必死に隠した。

男は重苦しい沈黙の中で、じっと彼女を見つめ続けた。そしてついに、彼は静かに頷いた。

「いいだろう。君のやり方で進めよう」

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