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5話

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-05-29 22:13:33

 トニはなんとなく室内を見回す。収納棚があって、その上には写真立てがあった。どこかの公園を背景に、マーサと小さな男の子が写っていて、ふたり共幸せそうに笑っている。きっと、この子がトムなのだろう。

 何故か写真立てが割れているのが気になった。

「この写真が気になるのかい?」

 トムの目線に気づいたマーサは、写真立てを持ってトニの隣に座った。近くで見ると、イロイロの外にある公園だと分かった。

「その子がトム?」

「そうだよ、トムだよ。可愛い孫でねぇ。優しくていい子だったんだ」

「へぇ、今どこにいるの?」

 その質問に、マーサの表情が一瞬険しくなるが、すぐ穏やかな笑みに戻る。

「今は、田舎町にいるのさ。この辺は車が多いでしょう? トム坊やは体が弱いから、空気が綺麗な田舎に引っ越したのさ。前はここで、トムと、娘と、娘の旦那が暮らして、それはもうにぎやかだったんだけどねぇ」

 マーサは寂しそうに目を細め、写真を見つめる。だから分からなかった。どうしてそんなボロボロの写真立てを使い続けているのか。

「そうだったんだね。そんなに大事な写真なら、綺麗な写真立てに入れてあげないと。割れてるから、怪我しちゃうよ。マーサばあちゃんが怪我したら、トムも悲しむだろうし、僕もいやだ」

「あぁ、そうだね。私もそう思って、イロイロで探すんだけどねぇ。あそこは広いだろう? だから、写真立てを見つける前に、疲れちゃってねぇ」

 マーサは諦めたように目を伏せ、ため息をつく。トニはどうにか力になりたくて、彼女の手を握った。

「それなら今度、僕が一緒に探してあげる」

「いいのかい?」

 トニの言葉にマーサは顔を上げ、目を丸くして彼を見つめる。

「うん。僕、しばらくはイデアルにいるから」

「いい子だねぇ、トム」

「僕はトニだよ」

「そうだったそうだった。ごめんね、名前が似てるから」

「ううん、いいよ」

「トムは優しい子だね」

 トニは訂正しようと口を開きかけたが、やめた。きっとこの老婆は、大好きなトムと離れ離れになって寂しいのだ。自分だって彼女を、マーサばあちゃんと呼ばせてもらっている。それなら、自分もトムと呼ばせてあげよう。

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