魔女狩りの果て

魔女狩りの果て

last updateLast Updated : 2025-11-17
By:  パンチ☆太郎Ongoing
Language: Japanese
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出生率の低下、色恋詐欺、托卵、痴漢冤罪。女が怖くなった男たちは、ついに、「魔女狩り法」と呼ばれる、治安維持法を制定させ、女性たちの血みどろの戦いが勃発する。

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Chapter 1

第1話

 女は、逃げていた。

 虫が鳴いている。

 樹林に囲まれている。

 足の踏み場が悪く、走りにくい。

 汗がじっとり、体にねばりついていた。

 息も上がっている。

 浅い呼吸を繰り返しながら走っていた。

 ぼきぼき

 小枝が折れる音がする。

 それに続く音がなくなった。

 はあはあ

 誰もおってきてないな

 ここで初めて後ろを振り返る

 といっても、どれくらい走ったのか正確には分からない。

 無我夢中で走ったからだ。

 こんな夜道を...

 何で自分はこんな...

 そんなこといってもしかたない

 走れ。

 雑念を捨てろ!

 そう言い聞かせる。

 これからのことを考えないと

 胸が焼けるように痛い。

 そう思っていると、樹林の方から音がした。

 女は手に持っているナイフを、音がした方向に向けた。

 かさかさ

 みんみん

 そのような音の中に、ざっざっと言う音だけを抽出し、それに注意する。

 誰だ?

 その音が徐々に大きくなる。

 近づいているのだ。

 影が月の明かりに照らされて、その姿を現した

「誰?」

 背は普通くらいの女だ。

 香水のにおいが鼻をついた。

 それほど、感覚が鋭敏になっているのだろう。

「由紀奈ちゃん?」

 その影は実態をもって近づいてきた。

「比留田先生?」

 由紀奈は、安堵した顔をした。

 相手が比留田であったからだ。

「よかった。無事だったのね」

 比留田は、由紀奈に微笑みかけた。

 自然な足取りで、由紀奈に歩み寄る。

 由紀奈は、構えていたナイフを下げた。

「怖がらないでいいのよ」

 比留田は、両手を広げた。

 由紀奈は、比留田の胸元に吸い込まれるように、抱擁した。

 その瞬間

 ぱん

 音がした。

「おやすみ。由紀奈ちゃん」

 由紀奈はその場に倒れこんだ。

 胸からは血を流している。

 由紀奈は、二ッと笑っている比留田の顔を見ている。

 東京都のとあるオフィスビルで、パソコンの光る画面に向かって何かを話している人たちがいた。

 同じような光景がその社内にあり、蛍光灯は明るいが、室内の雰囲気は、やや鈍重になっており、その一人である、森智子の心中はやや重いものになっていた。

「何か、就活で困っていることがあれば...」

「いや、もう面接したくないんで。何かあったらラインするんで」

 画面の向こうにいる肥満体の男が、森に冷たく言った。

「そ、そうですか...それでは、就活応援しております。失礼します」

 笑顔を残したまま、通話終了ボタンを押した。

 ふうっとため息をつく。

 こんなことは一度や二度ではないが、上手くいっている時が続くとどうしても落ち込んでしまうものだ....

 森はパソコンから目を離し、デスクの遠くにあるボードを見る。

 視力はあまりよくないが、毎日見ているので、文字が見えていなくてもなんて書いてあるかは分かる。

 そこには、「就職実績前年比50%増!!」と赤文字で書かれている。

 森は、その文字を見てため息をついた。

「どう?順調?」

 髪を左右になでつかせたしゃらくせえ男が話しかけてきた。

 年齢は、森と三歳しか変わらないが、役職には天と地ほどの差がある。

「はい。さっき一件片づけたところで....」

「落ち込んでるみたいだけど?まあ、7月の夏採用までには、十分時間あるから焦らず頑張ってよ」

「はい」

 男はそう言って去っていった。

 正直鬱陶しい。

 自分は誰よりも努力を積んでいるつもりだ。

 デスクに座って楽に仕事をこなしているだけのくせに、役職が高いからってふんぞり返りやがって。

 そう思いながら、二人目のクライアントのアポに向けて準備をする。

 パソコンを色んなタブを開きながら操作している。

 会話の糸口にするために、ニュースサイトもタブで開いていた。

 すると、ニュースの見出しは

 痴漢冤罪!!都内無職の男、21日間の不当拘留

 過去最低の出生率。新生児67万人

 タレントの浅野早苗。夫のユーチューバーの波乱の結婚生活

 といった記事がざっと流れている。

 そして、森の心を掻き立てたのは

 大阪府の「魔女狩りバトル」優勝者決定!!と言った記事だった。

 仕事を終え、レターボックスから書類を取り出し、自分の部屋に入る。

 書類は、新聞やチラシと言ったものが多い。

 そういうものは、とりあえず、机に置くが、今見ておかないといけないのは、水道料金や税金の封筒などであり、今日はそれがない。

 しかし、無視できない書類を発見し、ため息をついた。

 町内会からであった。

 町内会からの手紙を無視すると、後日少なからず後悔することになるので、注意してみている。

 そこには、懇親会のお知らせとあった。

 正直、内容がどんなに魅力的であっても、行きたくなかった。

 まあ、内容はどうせ、ブドウ狩りかいちご狩りか、ゲートボールか、そんなところだろう。

 婦人たちのご機嫌を一々取らないといけないほどこっちも暇じゃないのだ。

 しかし、行かないと後で近所の目が怖い。

 このマンションの大多数は町内会と懇意な人間だ。

 町内会と懇意じゃなくても、懇意であるふりをしておかないと、あとでどうなるか分かったものではない。

 そういった、帳尻を合わせながら、上手く生きているのだ。

 しかし、今回は、浮上に目を引くものであった。

 序文には、さすがに惹かれない。

 行き先が、某有名な三ツ星レストランなのだ。

 誰もが、人生で一度は行きたいと言っている。

 町内会にそんな金があったのか?

 まあ、会長他幹部は相当な年寄りだから金が余っているのか?

 そう言ったことも気になったが

 めったに行くことができない。

 しかも、基本自由行動とある。

 夕食もヴァイキングなので、自分一人で食事することができる。

 メリットだらけじゃあないか。

 しかも、町内会の貸し切りである。

 近所の目が怖いというのも多少はあったが、森は、この懇親会を前向きに検討した。

 森は、その週を張り切って乗り切った。

 週末は、リゾートホテルが待っているからである。

 正直躊躇したこともあったが、水曜日にはいくことを決めた。

 なぜなら、水曜日に、町内会の中の婦人会が、女性限定で話しを進めたからであった。

 長老たちは基本暇なので、日夜会議をしているが、会長の体力が低下したこともあってか、副会長である、会長の奥さんたちが、婦人会の懇親会に変更することに決めたのだ。

 家族がいる者であっても、女性限定ということになった。

 その分食事代や乗り物代がグレードアップしたのだ。

 自分で交通費を出さなくていいというのは大きい。

 事実、女性の町内会員の中に、不安の声があったからだ。

 貸し切りとなると、女性が男性に襲われた場合どうするのか?

 部屋分けがあるとはいえ、その不安は大きかった。

 世間では、女性の暴行事件と言うのは多発しており、その原因の多くは、男性の性的不満によるものだった。

 女性とかかわりを持てなくなった、男性がその不満を爆発させ、暴行事件、殺人事件を起こすようになったのであった。

 森も、男性を危険視まではしていないが、小学校のころに比べて、距離を取るようになったとは思う。

 男女の間で不信感が社会全体を覆っているのだ。

 まあ、なんにせよ、女性だけで貸し切りのホテルが使えるのはありがたい。

 森は仕事を済ませ、旅行の身支度をした。

 森は、元気よく、町内会もとい、婦人会が用意したバスに乗り込んだ。

 移動中は、基本的にスマホを触っているか、マダムたちの詰問に、答えるだけであった。

 そして、バスを降り、新鮮な空気に身を包まれた。

 きれいな海であった。

 島ということもあって、潮のにおいも、都会の喧騒を忘れさせるものになっているのだろう。

 女たちは、ホテルに荷物を預け、昼食まで自由時間となった。

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