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第112話

Author: るるね
last update publish date: 2026-04-27 23:31:43

 長く失望を重ねてきたせいか、母はもう怒ることさえ億劫になっているようだった。

 父のことを多くは語ろうとせず、先ほど落としてしまった袋の中身を整えると、陽菜と一緒に家の中へ入る。

 それでも、ぽつりぽつりと漏れる言葉から、父がいまだ入院していることは分かった。

 今回も強いストレスを受け、心臓発作を起こしかけたらしく、今は安静にしているという。

 重症ではない。命に別状はない――。

 陽菜の顔が曇るのを見て、母はあまり考えすぎるなとたしなめた。

「お父さん、歳は取ったけど、そこまで弱くないわよ」

「お母さん……」

「来るなら早く言ってくれれば、あなたの好きなもの、もっと買ってきたのに」

 話題を変えるように、母は買ってきた野菜を片づけ始める。

 袋から橙を取り出し、一つずつ丁寧に果物皿へ並べながら、ふと陽菜に視線を向けた。

「大丈夫。私、好き嫌いないから」

「昔はそうじゃなかったでしょう。ちゃんと食べさせるのに、どれだけ苦労したか」

「それ、小さい頃の話だよ。中学に入ってからは、そんなことなかったでしょ」

「中学生にもなれば、もう半分は大人みたいなものだもの。多少わがまま言っても、
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