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第1026話

Author: 北野 艾
差し出された契約書に踊る金額を一瞥し、詩織の口元に微かな冷笑が浮かぶ。「市場価格より三割も安いですね。私が慈善事業でもやっているとお思いですか?」

「江崎社長、そんな計算の仕方はナンセンスだわ」

真理子は上半身を乗り出し、デスクの上で両手を組みながら、さも善意で忠告でもするかのような口調を作った。

「あなたのところ、今どうしても現金が要るんでしょう?銀行の融資引き揚げ、株価の暴落。華栄のキャッシュフローがどれだけ逼迫しているか、社長自身が一番よくわかっているはずよ。この首が回らないタイミングで、現生をポンと出してくれる人がいる。これは買いたたきなんかじゃない、渡りに船って言うのよ」

『渡りに船』——そう強調した真理子の眼差しには、隠しきれない優越感がちらついていた。

詩織は静寂を湛えた瞳で、真理子の顔を見すえた。

真理子の腹の底など、手に取るようにわかる。

渡りに船などではない。単なる火事場泥棒だ。

さっきの霜花と同じ。弱り切った隙を突き、華栄の息の根を止めようとしているのだ。

現在の華栄の深刻な手元資金不足を見透かした上で、これ以上ないほど安い対価で、詩織が持つ最大
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