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第203話

Author: 北野 艾
詩織はこの日のために、わざわざスケジュールを空けていた。すべては海雲への敬意とお祝いのためだ。

以前、柊也からこの件について水を向けられた際は無視を決め込んだが、それは単に彼の相手をするのが億劫だったからに過ぎない。

今日の訪問は、あくまで詩織個人の意思であり、柊也の「ついで」などでは決してなかった。

賀来家の屋敷を訪れるのはずいぶんと久しぶりだが、その静謐な佇まいは記憶の中と変わっていない。

門はわずかに開かれており、少し力を込めるだけで詩織を招き入れてくれた。

リビングの掃き出し窓越しに、ソファに腰掛けた海雲がこちらの姿を認める。彼が傍らに控える家政婦の松本に何かを囁くのが見えた。

すぐに松本が満面の笑みで出迎えてくれた。

「詩織さん、お待ちしてましたよ。さあ、どうぞ中へ。あなたが揃えば全員集合ですから」

私が揃えば?

まさか、柊也も来ているのだろうか。

詩織の足が一瞬止まりかけたが、すぐに思い直した。

二人は親子なのだ、柊也が実父の祝いで顔を出すのは当たり前のことだ。

気になるのは、志帆まで同席しているかどうかだが……

いや、誰がいようと関係ない。

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