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第870話

北野 艾
彼女が秘書に託した伝言は、短く、そして非情なものだった。

『華栄キャピタルは、ココロの全株式を売却する意向です』

その言葉を聞いた瞬間、智也の心はすとんと冷えた。

唇に浮かんだのは、自嘲の混じった虚しい笑みだけだった。

不吉な噂というものは、光よりも速く駆け巡る。

半日もしないうちに、ココロの社長夫妻の泥沼劇はネット上を席巻した。

一時はSNSのトレンドにまで躍り出、関係者が慌てて火消しに回ったものの、時すでに遅し。

勘の鋭いネットユーザーたちは、真理子が「薬を盛って妻の座を射止めた」という後ろ暗い真相を暴き出し、そのスクショは瞬く間にネット中へと拡散されていった。

卑劣な手段で今の地位を手に入れた真理子の過去は、一晩で白日の下に晒された。

富裕層の夫人たちが集うティーサロンでも、この話題でもちきりだった。

口火を切ったのは、河村優杏だ。

「信じられませんわ。あの真理子さんが、あんな汚い手を使って正妻の座に収まっていたなんて。あんなに偉そうに江崎詩織を嘲笑っていたくせに、これじゃあ特大のブーメランじゃない」

すると、この界隈で顔の利く相馬夫人が、ティーカップを置
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