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第883話

Author: 北野 艾
「ご迷惑でしたか?」と詩織が尋ねる。

「とんでもない。迷惑をかけたのは僕のほうだ」響太朗は深く感謝の意を示した。「君の協力がなければ、僕は小春の親権を守り切ることはできなかった。それに、僕を助けるために君を何度も危険な目に遭わせてしまったしね。高坂の家はこの恩を決して忘れない。力になれることがあれば、遠慮なく何でも言ってくれ」

「見返りを求めてお力添えしたわけではありませんよ。かつて、百合子さんが私を無条件に信じ、助けてくださったように、私もそうしたかっただけですから」

詩織の眼差しは穏やかで、その佇まいには落ち着きがあった。

堂々としたその風格は、かつての亡き妻・百合子の面影を思わせる。

響太朗は彼女を見つめながら妻を思い出し、ふと悲痛な色をその目に滲ませた。

「ただ、突然の婚約解消となれば、君のビジネスに多少なりとも影響が出るはずだ。まだこの本港市で完全に地盤を固めきったわけではないだろう?」

しかし、詩織はさして気にする様子もなく答えた。「今の私には、事業の成功よりも優先すべき、大切なことがあるんです」

もちろん、本港市で響太朗という確固たる後ろ盾があったほうが、
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