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第27話

閑雲
ほぼすべてのキャンバスに、「S」が刻み込まれていた。

陽咲の心が重く沈んだ。

彼女はスマホを取り出し、その絵を写真に収めた。

近いうちに、心理カウンセラーをしている親友の白瀬絃葉(しらせ いとは)に相談へ行こうと決めた。

陽咲の直感が告げている。紬希の身に起きた出来事の裏には、極めて巨大な陰謀が渦巻いていると。

紬希の看病をしている最中、栞奈からメッセージが届いた。

ある人物が例の作品を見初め、十億円で買い取りたいと申し出ているという。

陽咲はそれを承諾した。

ほどなくして、陽咲の口座に栞奈から十億円が送金された。

陽咲は紬希の熱が下がりきるのを待って、一階へと下りた。

思いがけないことに、本宅には怜央の姿があった。

彼はリビングのソファに腰を下ろしている。

そしてその目の前のテーブルには、あの五つの茶碗が置かれていた。

陽咲の動きがぴたりと止まった。

あの茶碗を競り落としたのが怜央だったとは思いもよらず、彼女は思わずその横顔を凝視してしまった。

「今日はどこへ行っていた?」

怜央が尋ねる。

陽咲は彼の疑念を察知し、冷淡に言い放った。

「午後から紬希
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