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第2話

Auteur: 憂鬱みかん
拓海が再び私のことを思い出したのは、私が火葬される当日だった。

彼は坂本に電話をかけ、冷えきった声で言った。

「坂本さん、雪乃のアシスタントを新しく手配してくれ。詩織は怪我をしているんだ。これ以上、彼女に無理はさせられない」

電話の向こうで、坂本がぞっとするほど冷たく笑った。

「詩織はもう来なくていいわ。あなたもよ。二人まとめて藁人形にでもして、雪乃のところへ送ってあげる」

拓海は眉をひそめ、吐き捨てるように言った。

「坂本さん、何を言ってるんだ。芝居をするにしても、いい加減にしてくれ。今になってもまだ、雪乃が死んだなんて言っているのか」

その言葉に、坂本の堪忍袋の緒が切れた。電話越しでも分かるほどの怒りをにじませ、彼を容赦なく責め立てた。

私は拓海のそばに漂いながら、不思議でならなかった。どうして彼は、私が死んだとそこまで認めようとしないのだろう。

拓海は電話口から浴びせられる罵声を聞きながら、苛立たしげに顔を手でぬぐった。

「もういい。雪乃がどこにいるのか教えてくれ。見に行けばいいんでしょう!」

電話の向こうで、坂本は一瞬黙り込んだあと、火葬場の名前を告げた。

電話を切るなり、拓海は眉間を押さえ、あからさまに鼻で笑った。

彼は独り言のようにつぶやいた。

「さすが芸能界でやっているだけはあるな。芝居がうまい。いいだろう、本当に死んだのか、この目で確かめてやる」

拓海がようやく向かう気になった。

彼が私の死を目の当たりにしたとき、どんな顔をするのか――私はどうしても見てみたかった。

けれど出かける前に、詩織が母親に支えられながら、足を引きずって歩いてきた。声はおどおどとしていた。

「拓海くん、どこへ行くの?」

拓海が口を開くより先に、詩織の母親が意地の悪い口調で言った。

「拓海くん、詩織は小さい頃からあなたのそばにいた子でしょう。いくら奥さんでも、この子につらい思いをさせるようなことは許しちゃだめよ」

そう言うと、彼女は詩織の袖口をまくり、あれこれ指差しながら続けた。

「見てちょうだい。こんなに大きな傷痕が残ってしまって。これからうちの詩織はどうやって恋愛すればいいの?将来、恋人に嫌がられたらどうするのよ!」

言い終えると、二人は顔を見合わせた。そっくりな二組の瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。か弱く泣くその姿は、誰が見ても守ってやりたくなるようだった。

拓海はしだいに口元を引き結び、詩織の手を握ると、詩織の母親に向かって言った。

「おばさん、安心してください。もう二度と詩織につらい思いはさせません」

拓海は少しためらってから、さらに続けた。

「しばらくは俺が詩織のそばにいます。雪乃のほうは、詩織がよくなってから見に行きます」

私はただ静かに立ち尽くし、彼らの和やかな様子を見ていることしかできなかった。

昔からずっとそうだった。拓海と詩織は一緒に育ち、どんなことがあっても、彼はいつも彼女を守った。

詩織は、しおらしく物分かりのいい表情を浮かべた。

「でも、雪乃さんは拓海くんの奥さんでしょう。会いに行ってあげるべきだと思う」

拓海の表情が一瞬歪んだ。

「雪乃は芸能人だろ。周りに面倒を見たがる人間なんて、いくらでもいる。俺一人いなくたって困らない。

それに、あいつの性格は俺が一番よく分かってる。指先をちょっと切っただけで、夜中に病院へ連れていけって泣きついてくるような女だ」

詩織の目が揺れた。珍しく、彼女は本当のことを一つだけ口にした。

「でも、あの日の雪乃さんも、たくさん血を流していたわ」

私はそばでそれを聞き、冷ややかに笑った。

そうよ。私の体からは、たくさんの血が流れていた。でもその血を自分の体に塗りつけたのは、あなたじゃない。

拓海は冷笑した。

「詩織、君は優しすぎるんだ。どうせ今回も、どこかに少し大きめの傷ができただけで、大げさに騒いでいるんだろう」

私はどう反応すればいいのか分からず、ただ胸が締めつけられるようだった。

前にファッションショーに出たとき、私は舞台裏で誤って手の腱を傷つけ、泣きながら拓海に病院へ連れていってほしいと頼んだ。

けれど詩織から一本電話が入っただけで、拓海は呼び出されて行ってしまった。彼は雨の降る夜、私をその場に置き去りにした。

すぐに治療を受けられなかったせいで、私の手はもう以前のようには動かない。

拓海の中では、詩織はいつもかよわくて、善良な存在だった。

そして私は、何をしても拓海の目には、わざとらしくて性格の悪い女にしか映らなかった。

けれど、拓海がそんなふうに決めつけていた私は、彼自身と、彼が大事に守ってきた「か弱い詩織」によって殺されたのだ。

拓海は病院で、詩織に四日間つきっきりで付き添った。

二人の間の空気は、ますます甘く危ういものになっていった。

退院の日、迎えに来たのは詩織の母親だった。

三人は車の中で楽しそうに話し、笑っていた。詩織はときどき首にかけた指輪を取り出してもてあそび、それからまた大切そうに襟元へしまい込んだ。

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