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009話

last update publish date: 2026-09-04 11:06:28

 ※

 桐生エンタテインメント70周年パーティの企画書にサインを終えた時、社長室のドアがノックされ、柊也は顔を上げた。

「入れ」

 と短く柊也が言うと、顔を出したのは秘書の田迎だった。

「社長、ご報告が」

 神妙な表情で田迎が告げた。

「奥様が、離婚届を提出されたそうです」

 柊也は眉ひとつ動かさず、万年筆のキャップをカチリと閉めた。

「受理されたのか?」

 試すような問いに、秘書は即座に答えた。

「いえ。『不受理届』により、即座に却下されました」

 柊也の口元に、穏やかな笑みが浮かぶ。

「なら問題ない」

 返答があまりに落ち着いていることに、田迎は息を呑んだ。

「奥様が離婚届を提出したこと、驚かれないのですね」

「妻は最近不安定なんだ。気分が滅入って離婚届を提出したんだろう――不受理届を出しておいてよかったよ」

 田迎は一瞬の逡巡しゅんじゅんののち、意を決して訊ねた。

「差し支えなければ
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