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五年愛した彼を捨て、私は私を取り戻す
五年愛した彼を捨て、私は私を取り戻す
Author: みっつ

第1話

Author: みっつ
私は恋人の光一と付き合って5年になる。

その5年間、私は彼に5回、結婚を申し込んだ。

けれど、そのたびに「まだその時じゃない」と断られた。

だから今回、光一が「私にはある」ゲームをしようと言い出した時、誰もが同じことを考えた。

光一は、私がもう一度プロポーズできるように、この場を用意してくれたのだ、と。

私もそう信じていた。

自信満々に5本の指を立て、最初から切り札を出した。

「光一に付き添ってもらって、ウェディングドレスを試着したことがある」

言い終えるなり、みんなが笑った。

「さすが、5年も付き合ってる本命の彼女は違うな。いきなり必殺技かよ」

「美月にそれを言われたら、誰も勝てないって。もう諦めて指を下ろそうぜ」

「光一、今度こそプロポーズから逃げられないぞ」

からかう声と笑いが飛び交い、全員が示し合わせたように指を1本ずつ折った。

頬が熱くなった。次の言葉を口にしようとした時、光一の幼なじみである玲奈が眉を上げた。

「待って!」

玲奈は5本の指を立てたまま手を振った。甘い笑顔には、隠す気もない優越感がにじんでいた。

「それなら、私も光一に付き添ってもらったことがあるよ」

顔に浮かんでいた笑みが、一瞬でこわばった。

個室に響いていたはやし立てる声も、しだいに小さくなった。

玲奈だけは空気の変化に気づかないふりをして、むき出しの悪意を目に宿しながら私を見つめた。

「美月さん、次は私の番ね」

唇に笑みを浮かべ、わざとゆっくりと言葉を並べていった。

「光一と、冬の初雪を見たことがある。

光一から、手編みのマフラーをもらったことがある。

光一の手首のタトゥーは、私の名前のイニシャルなの。

光一の車の助手席は、いつだって私の身長に合わせてある」

そこでわざと間を置くと、玲奈はさらに甘く笑った。

「それから、いちばん大事なこと。このゲームだって、私が喜ぶからって光一が付き合ってくれたの」

玲奈は小首をかしげた。

「美月さんには、どれかある?」

一言一言が、逃げ場もないほど容赦なく突きつけられた。

自分の顔から、少しずつ笑みが消えていくのが分かった。

付き合って5年、光一は私と初雪を見たことがない。

手編みのマフラーをくれたことも、私の名前を手首に刻んだこともなかった。

助手席の高さも、私に合わせてくれたことは一度もない。

私は玲奈より背が高い。乗るたびに足元が窮屈で、背筋を伸ばすことさえできなかった。

それでも5年間、光一が高さを直してくれたことはなかった。

手を強く握りしめ、黙ったままの光一を見た。問いかける声は、乾いてかすれていた。

「玲奈の言ったこと、全部本当なの?」

光一は私を見ようともせず、口元だけで笑った。

「ああ」

たった一言だった。

ひどく軽いその言葉が、頭から浴びせられた冷水のように、全身の熱を奪っていった。

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