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第1186話

Author: リンフェイ
動物園なら人が多いので、簡単に騒動を起こしてその隙に子供を誘拐しやすい。

賑やかな市内の中心地では、監視カメラが設置されているところもあるし人の目もあるから、相手はそう簡単に手を出してこないだろう。軽率に動くことは避けるはずだ。

理仁は相手が再び行動を起こそうとするなら、少なくとも数カ月先だと推測していた。

唯花は少し考えてから言った。「それもそうね。なら、動物園での事は偶発的なことだと考えて、普段通りに生活をしておくわ。ゆっくり穴の中の蛇をおびき出しましょう」

理仁はそれに満足した様子で彼女の額にキスをした。「俺の奥さんはどんどん賢くなっていくな」

「つまり以前は馬鹿だったと?」

「そんなわけないだろう、同じくらい賢くて、ずっと聡明な人だ。俺はそんな君の聡明さに惹かれたんだからね」

殺されないようにそう言っておいた。

「私は馬鹿だったと思ってるけどね、じゃなかったらあなたにあそこまで騙されていなかったはずよ」

理仁は急いで彼女の唇を塞いだ。

キスをした後、彼は優しく彼女の唇に触れて、落ち着いた声で言った。「唯花、寝よう。もうこんな時間だ」

「おやすみ」

深くキスをし唯花のご機嫌を取ると、彼女はそれ以上古傷をえぐるようなことはせず、彼におやすみの挨拶をして夢の中に再び戻っていった。

理仁は片手を彼女の腰に回し、我慢できずに彼女の顔にまたキスをしてから、夫婦二人は一緒に眠った。

理仁夫妻がぐっすりと眠っていたころ、別の場所で借りた部屋で暮らしている成瀬莉奈は、ベッドの上で何度も寝返りを打って寝付けなかった。

彼女が毎回寝返りを打つ時は俊介を起こさないようにゆっくりと動いていた。

ずっと落ち着かない様子で携帯を手に持ち確認していた。しかし知らない番号からの電話も、メッセージも来ていなかった。

彼女はあの名前も知らない女がまた次の行動に移るか見当もつかなかった。

今日の計画が失敗に終わったのは彼女のせいではないが、成瀬家の家族が巻き添えを喰らわないか心配だったのだ。

彼女はすでに相手の言われた通りに行動はした。

唯花はボディガードを連れていて、騒動が起きた当初、ボディガードが彼女たちを守る形で海洋館を出ていったのだ。

恭弥が連れ去られたのは、それを使ってボディガードを彼女たちから引き離し元のターゲットである陽を連れ去るためだろう。
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