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第1199話

Auteur: リンフェイ
「そうよ、唯花さん、昨日は本当にありがとう。あなたがいなければ、恭弥と陽ちゃんは今頃……この二人に何かあったら、私も生きていけないわ」

佐々木母も英子と同じく唯花にとても感謝していた。

唯花は「おばさん、英子さんも昨日もうお礼をしてくれましたよね。陽ちゃんは私の甥だから、守るのは当然のことですから」

恭弥もクソガキとはいえまだ子供だから、彼女も見て見ぬふりをすることなどできなかった。

あのような状況で、自分に何かできることがあるなら、誰だって無視するようなことはしないだろう。

「昨日のお礼だけじゃ足りないわ。唯花さん、お時間はあるの?私たちあなたを誘って食事したいと思ってるのよ」英子は笑顔で尋ねた。「あなたのお姉さんも呼んでさ、あなた達二人にご馳走したいわ。そうだ、それからお宅のボディガード二人って外にいるあのお二人かしら?彼らにも直接お礼をしなくちゃ」

「英子さん、食事は結構です。ボディガードは確かに外にいる二人ですよ。田村さん、中野さん、入ってきてちょうだい」

ボディーガードに頼んで恭弥の救出に向かわせたのは唯花だ。しかし、実際に恭弥を救い出してくれたのはあの二人のボディーガードだから、佐々木家は直接彼らに礼をするべきなのだ。

ボディーガード二人は唯花に呼ばれると、外から店の中に入ってきた。

「若奥様、お呼びでしょうか」

二人は礼儀正しく唯花の呼びかけに答えた。

唯花は言った。「こちらの一家があなた達二人にお礼を言いたいんですって。昨日はあなた達のおかげで恭弥君が助かったんだからね。ここにある物はあなた達に対する感謝の気持ちだそうよ。受け取ってあげてちょうだい」

佐々木家が持って来たお礼の品を唯花は受け取りたくないのだ。しかし、佐々木家に金を使わせたこの機会を逃したくはないので、恭弥を助けた張本人であるこの二人のボディーガードにあげてしまおうと考えたのだった。

「あなた達は命の恩人です。昨日は本当にありがとうございました」

佐々木家は二人のボディーガードに自らきちんとお礼の言葉を述べると、持って来た物を半分ボディーガードたちに渡し、残り半分を唯花に残しておいた。

そして英子はのし袋を取り出し、唯花とボディーガードたちに渡そうとしたが唯花はそれを拒否した。しかし、彼女は英子からの感謝の気持ちをボディーガードたちに受け取らせた。

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