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第1514話

Author: リンフェイ
唯花は辰巳に電話をかけて、彼が出るとこう言った。「辰巳君、咲さんは携帯番号を変えたらしいわ。午前中に二回お店に行ったけど、彼女いなかったの。あなたは彼女に会えた?」

辰巳は答えた。「今、ルナカルドで花の配達に来てもらうのを待ってるんです」

辰巳も咲の新しい番号を知らないし、店員も教えようとしなかった。それでブルームインスプリングの固定電話の番号を覚えておいて、ルナカルドの店長から店に電話をしてもらい、咲に花束を届けてもらっているのだ。

こうすることでしか、彼は彼女に会えない。

「咲さんが一人で?」

「もう一人いる店員がバイクで彼女を送ってくれるそうです。唯花さん、ありがとうございました」

唯花も咲に会うことができず、二人の仲を取り持つような話を咲にできなかった。それでも、辰巳のために午前中に二回もブルームインスプリングまで行ってくれたことを辰巳はとても感謝していた。きちんと自分のことを考えてくれているのだと感じたのだ。

「家族なんだし、そんなお礼なんていらないわ。咲さんに会えたら、彼女を驚かせるようなことしちゃだめよ」

「今すっごく後悔しているんです。もう二度とあんな過ちは犯しません」

まだ咲の心を攻略できていないというのに、彼はキスをしてしまったのだから、間違いであり、彼女を驚かせてしまった。

辰巳はカッとなってしまった自分を何度も罵っていた。

唯花は安心して、通話を終わらせそのまま車を運転して本屋に戻った。

そして一方おばあさん達はというと。

彼女は晴と共に小松家に行き、招待状を渡した後、そのまま小松家から近い神崎家へ向かった。

おばあさんが神崎家に到着した時、ちょうど善も隣人訪問という形で神崎家にお邪魔していて、食事まで居座ろうとしているようだった。

結城おばあさんと晴が来たと聞き、詩乃夫妻は自ら出迎えにいった。

「いらっしゃるのなら、事前にひとことおっしゃってくれればよかったです。先にお迎えにそちらへ行きますのに」おばあさんが車を降りた後、詩乃が前に進み出ておばあさんの体を支え、笑いながらそう文句をこぼした。

それを聞いておばあさんは笑って言った。「うちの晴が付き添っているから、あなた達に迷惑かけることもないのよ」

「迷惑だなんてそんな。おばあ様をお出迎えできてとても嬉しいのに。晴君ね、とってもカッコよく成長しちゃって。お
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