Share

第441話

Author: リンフェイ
内海唯花は少し考えて言った。「陽ちゃんをかくまってもらえる場所なんてある?」

彼女の住んでいるところは佐々木俊介に知られている。

内海家の実家のほうには頼れる人はいない。姉があの親戚たちのところに息子を預けて安心できないのは言うまでもなく、もちろん唯花も安心できない。

牧野明凛は言った。「姫華さん、彼女に頼んでみたらどう?彼女って神崎家のご令嬢でしょう。住んでいるところはどれもセキュリティーがかなりしっかりしているお宅だと思うの。それに神崎グループという巨大な後ろ盾もあるから、佐々木家のやつらがどんだけ度胸があっても、神崎家とは事を構えたくないでしょ。

あいつらだって陽ちゃんが神崎家にいるなんて思ってもみないわよ。姫華さんも陽ちゃんを気に入っているし、陽ちゃんが姫華さんのところにいれば、きっとしっかり面倒を見てくれるはずよ」

内海唯花はそれを聞いて両目をキラリと輝かせた。「そうだわ。姫華がいるじゃない、後でお姉ちゃんと相談して、それでいいって言われたら、姫華に陽ちゃんのお世話をお願いしてみよう」

「姫華さんも言ってたじゃない。何か彼女の力が必要な時には遠慮せずに相談してくれって。唯花、時には現実に逆っても、どうしようもないことってあるよね。この不公平な世の中じゃ、お金持ちで権力がある人のほうがうちらみたいな人よりも簡単に物事を進められるわ」

牧野明凛がこの時、もし何も構わずに言っていたら、こう言ったことだろう。「神崎姫華ができることなら、遠慮せずに頼んだ方が手っ取り早い」と。

内海唯花は仕方がなく、親友の話を受け入れるしかなかった。

電話を終えて、内海唯花はLINEを開き、神崎姫華が昨日彼女に送ってきた姫華の母親姉妹の小さい頃の写真を見た。彼女はその時、山荘で遊んでいて、ちらりとその写真を見ただけで、じっくりとは見ていなかったのだ。

今もう一度その写真を見てみた。内海唯花は姫華の叔母が小さい頃は本当に純粋で可愛いと思った。スカートを穿いていて、髪は左右におさげを作り、無邪気に笑っていた。

それを見つめているうちに、神崎姫華の叔母は少し陽に似ていると思った。子供が小さい時というのはみんな同じ感じなんだろうか?

「プルプルプル……」

電話の呼び出し音に急かされて、内海唯花はその疑問から引き戻された。

それは姉からの電話だった。彼女は急いで電話
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Kaugnay na kabanata

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第442話

    「お姉ちゃん、効果があるかはわからないけど、とりあえず警察に通報して処理してもらいましょう」「わかったわ。今から警察に電話する」「佐々木俊介の両親たちは?」「陽を車で連れ去って行ったわ。たぶん俊介のところに行ったんじゃないかしら。あいつ昨日は一晩中帰ってこなかったから」内海唯花は少し考えてから言った。「お姉ちゃん、警察に電話して。私と理仁さんで佐々木俊介の実家のほうへ行ってみるわ。あとあいつの姉の家にも。あいつらが陽ちゃんを連れ去ったのなら、きっと彼らの実家のほうへ帰っているはずよ」姉と佐々木俊介はもうすぐ離婚する。子供の親権はまだどちらが持つのか決まっていない。佐々木家側が陽を連れ去っても、警察に通報したとして、恐らく和解を勧められるだけだろう。もしそれができなければ、裁判での離婚訴訟中に一気に解決するしかない。佐々木家側の人間は、確かに陽の家族ではあるが、陽は生まれてからというもの、ずっと唯月姉妹が面倒を見てきた。だから陽の佐々木家に対する感情は深くない。陽は初めて行く場所に行って、母親や叔母の姿が見当たらないと、絶対に怖がって泣きわめくことだろう。その時に佐々木家の人間がどのように陽を扱うかわかったものではない。「お姉ちゃん、あいつらが陽ちゃんを連れ去る時、他に誰かその様子を見ている人はいなかった?」内海唯花が結城理仁と一緒に佐々木英子の夫である柏木家に行ったとしても、陽が見つからないかもしれないと心配していた。そして、相手はどうしても自分たちが連れ去ったという事実を認めず、逆に姉がちゃんと子供を見ていなかったせいで、子供が失踪してしまったと彼女を責め始めるかもしれない。「見ている人はいたわ。義母が私に彼女をおばあちゃんなのに孫に会わせてくれないから、孫のことが恋しくなってしかたなく、このような方法を取るしかなかったとか言ってきてね。周りの人たちは他人の家庭内のことだと思って、巻き込まれたくないから私のために口を合わせてくれることなんてないと思うわ」「お姉ちゃん、焦っちゃだめよ。落ち着いて、先に警察に連絡して。私と理仁さんが今から柏木家のほうへ行ってみるわ。あなたは通報したら、佐々木俊介に電話して、彼に陽ちゃんにこんなことをするのは良くないって、陽ちゃんを驚かせちゃうって伝えて」唯月は恨むように言った。「あいつには電

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第443話

    結城理仁と内海唯花は急いで家を出て行った。理仁は歩きながら結城辰巳に電話をかけた。朝早い時間で、結城辰巳はまだ夢の中だった。電話がしばらく鳴り響き、結城辰巳はようやく電話に出た。「兄さん、何か用?」結城辰巳は目を開けて着信表示を見て電話に出ると、また目を閉じた。週末は何もないから、彼は昼まで寝てからようやく起きてくるのだ。「辰巳、一番下の奴以外、全員に連絡しろ。みんな……内海さん、お姉さんの夫の家のほうへは高速に乗る必要があるかな?どこから乗ったらいい?」「ええ、乗るわ。高速で四十分くらいの道のりよ。XXインターチェンジから乗って」結城理仁はまた電話の向こうの弟に言った。「お前ら全員XXインターの入り口で俺と内海さんが来るのを待っていてくれ。ちょっと厄介なことが起きた。お前たちの助けが必要なんだ」兄弟、従兄弟九人が必要だと聞いて、いや、一番年下の奴は未成年だから、その中には含まれないな。結城辰巳は心配して尋ねた。「兄さん、何があったんだよ?」兄弟、従兄弟たちが勢揃いする必要があるなんて一体どういうことだ。「内海さんの甥っ子が連れ去られた。内海さんの姉さんは旦那と離婚途中で、まだ成立していない。夫側が離婚前に子供を連れ去ったんだ。この状況だから、警察に通報してもほとんど意味がないだろう。俺らは自分で陽君を取り返すしかない」結城家と唯月一家三人は家で集まり一緒に食事をしたことがある。結城辰巳は陽への印象が深かった。その陽が連れ去られたと聞いて、彼の眠きは一気に吹き飛び、ベッドから起き上がると、下りながら言った。「兄さん、奥さんに心配しないでって伝えてくれよ。俺、すぐにあいつらに連絡するからさ」「あいつらに急いでXXインターに来るように伝えてくれ。一緒に佐々木俊介の実家に行くぞ。陽君はきっと奴の実家のほうに連れて行かれているはずだ」「わかったよ」通話を終えた後、結城辰巳は家族のグループチャットで弟たちに連絡しようと思ったが、この時間はまだ朝早く、みんながグループチャットには気づかないと思ったので、直接一人一人に電話をすることにした。週末だから、結城家の坊ちゃんたちは、みんな星城にいた。兄嫁の甥が連れ去られたと聞いて、電話で連絡を受けた彼は全くためらわず、どれも急いで家を出て、XXインターの入り口に走り

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第444話

    おばあさんと清水の二人は久光崎に着くと、すぐに唯月の家へと向かった。エレベーターを降りた瞬間、喧嘩している怒声が聞こえてきた。それに驚いた隣近所の多くの人たちが家の玄関前に来て野次馬になっていた。「俊介、このクソ野郎、息子を返しなさい。佐々木家一家はみんなクズ揃いね!普段は陽のことをおもちゃの人形かなにかと思ってるくせに、自分らが陽と遊びたい時だけちょっと遊んで、いつも陽を泣かせたら、さっさと立ち去るくせに。陽はもう2歳5か月よ。あんたら祖父母として彼に洋服を買ってくれたことがある?おもちゃすら買ってくれたことないでしょ?それなのに、今になって陽のことが恋しくなったって?陽のことを思っているなら、今まであんたらが陽に会うのを私が邪魔したことなんかあった?」唯月は佐々木俊介の両親と姉に、彼女が俊介に殴りかからないようしっかりと掴まれていた。彼女はまるで狂ったかのように、力いっぱいもがき、泣きながら罵声を上げていた。おそらくおばあさん達が到着する前に、彼女は彼らとひと悶着あったようで、彼女はこの時、髪の毛が乱れ、声は枯れていた。それでもまだ懸命に彼らの制止を振り切ろうともがいていた。「パンパンッ――」佐々木英子は手を大きく振り上げ、唯月に二発のビンタを食らわせた。そして彼女は罵った。「陽ちゃんはうち佐々木家の孫なのよ。あんたと弟はもうすぐ離婚するだろ。離婚したら陽ちゃんは当然うちら佐々木家のものよ。うちらが佐々木家の孫を連れて行くのはうちらの勝手だろうが。それ以上泣き叫ぶってんなら、あんたの舌を切り落としてやろうか」唯月は義姉に二回ビンタをされて、さらに激しさを増し、必死に彼らの制止を振り切ろうともがいた。それで佐々木家の父と母は彼女を押さえ込むことができなくなった。佐々木英子はそれに気づいて急いで両親を加勢した。おばあさんと清水は人込みをかき分け、玄関先へとやって来た時、ちょうどこのシーンを目撃してしまった。おばあさんの血圧は最高潮に達して血が噴き出るほどだった。そして、おばあさんは何も考えずに突っ込んで行き、清水はその後に続いた。神崎怜凰の言葉を借りて言えば、結城家のおばあさんは若かりし頃、かなりの情報通で、彼女に知らないことなどないくらい、とてもすごい人だったらしい。退職してからは誰かに手を出したことはなかったが

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第445話

    佐々木父と母も娘を手助けすることができなかった。彼らが助けに行こうとしたが、おばあさんにまた蹴りを入れられてしまったのだ。佐々木家の面々は驚き呆然としていた。80近いおばあさんだというのに、まさかこんなに勇ましいなんて。おばあさんが勇敢に立ち向かってくれている中、唯月と佐々木英子の二人は激しく殴り合いの喧嘩を繰り広げていた。佐々木英子は普段口は悪いが、本気で喧嘩しようとしたら、彼女はまったく唯月の足元にも及ばなかった。唯月のあの体重は有利になるし、彼女に覆いかぶさられてしまえば、英子はまったく身動きが取れなかった。唯月が手を休めた時、佐々木英子はまるで獣から逃げ惑う小さな野ネズミのように相当に狼狽えていた。「俊介、こんなクソ女とまだ一緒にいてどうするのよ。さっさと離婚よ、離婚して追い出してしまいな。これはあなたの家だから、こんな女、さっさと追い出すのよ、出て行け!」佐々木英子は今までにこのような侮辱を受けたことがなかった。こんなに多くの人が見ている中、彼女は唯月に殴られ、同じように髪は乱れ顔には青あざもでき、鼻は腫れていた。唯月に力いっぱい押さえ込まれ、全身が死にそうなほど痛んだ。「英子」佐々木父と母は急いで娘を助け起こしに行き、彼女の有り様を見てとても心を痛めた。おばあさんは清水に言いつけた。「清水さん、あなた周りのご近所の方たちにこの佐々木家の悪行を話してちょうだい。私たちのほうがいじめていると思われないようにね。私たちはまだ劣勢だわ。彼らは男二人、女二人、私たちはか弱い三人の女性だし、私に関しては年寄りのおばあさんよ。歩くのも杖をつかないといけないくらいなのに、彼らのほうこそ、私たちをいじめているのよ」野次馬「……」おばあさん、あなたは一人で一家四人をやっつけていましたよね。自分がお年寄りであることを利用して、自分でわざと地面に倒れ込み、佐々木家を陥れ、責任を持ってもらうぞと佐々木俊介をさっき脅していたではないか。清水は内海唯花の傍で数日過ごし、唯月夫婦の件に関してはよく知っていた。唯月が浮気現場を押さえに行く時は、彼女が唯月に代わって陽の面倒を見たのだ。それで、彼女は知っていることを全て話した。佐々木俊介の家庭内暴力に関して、この付近に住む人はみんな知っていた。佐々木俊介が唯月に暴力を振るった時

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第446話

    佐々木英子は体が自由になり、おばあさんに対して相当な恨みを持っていた。もしこのクソばあさんが突然ここに現れなければ、唯月に殴られることはなかったというのに。おばあさんは唯月の手を引いて、ソファに座り、上から目線で相手を見下すように佐々木英子をちらりと見て、冷ややかに言った。「まったくこの世にあんたみたいなクズがいるなんて、この年になって新たに気づかされたわ。私に話しかけないでくれるかしら、誰かが見たら、私が豚とでも喧嘩してると勘違いされちゃうわ」佐々木英子は怒りでまた喧嘩を始めたい衝動に駆られた。「姉ちゃん」佐々木俊介は姉を引き留めた。さっきおばあさんが言っていた言葉は姉の耳に入っていないのかもしれない。「姉ちゃん、この人はあの結城理仁の祖母だぞ」佐々木俊介はそれを聞いた瞬間、すぐに結城理仁のあのいつも氷のように冷たく、まるで獲物を狙う鷹のような鋭い目つきを思い出し、萎縮してしまい、怒りが少し収まった。「結城おばあさん……」佐々木母は言った。「これはうちの俊介と唯月二人の問題です。私たちは手を出さないことにするというのはどうですか?」「私はまだ手を出していませんよ。私が手を出すところなんか見ましたか?」おばあさんはそう聞き返した。おばあさんはここに来てから、ただ足を出しただけで、実際に手は出していない。佐々木母はおばあさんからこう言い返されて、何も言えなかった。「義母であるあなたは、余計なことに首を突っ込みすぎだと思うわよ。それからあんたのあの娘もね。もうお嫁に行って実家を出てるっているのに、弟夫婦のことにまで口を出すだなんて。普段から裏でこそこそと悪口を言ってるんじゃないの?あのね、佐々木家のご夫人、あなたはどう娘に教育をしてきたわけ?あなた、娘が結婚して新しく親戚関係になった相手に恨みでもあったんじゃない?だからこんな娘を彼らのもとに嫁がせたんでしょ」佐々木母「……」「私たちは陽ちゃんの祖父母です。私たちは陽ちゃんと一緒にいたくて、彼を迎えに行ってしばらく一緒に暮らそうと思っただけですよ。それなのに唯月ときたら、まるで私たちが人攫いかなにかのように騒ぎ立てて、警察に通報までしたんですよ」佐々木父は口を開いた。唯月が通報した後、警察がやって来て事情を尋ねた。彼らは家庭内のいざこざだとわかり、少しア

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第447話

    唯月は車を持っていない。妹と電話をした後、妹夫婦は陽を探しに行き、彼女のほうは佐々木俊介と決着をつけに来たのだ。ただ彼女はたった一人で、佐々木俊介のほうは一家総出で来ていたので、彼女のほうが劣勢だった。幸いにもおばあさんと清水が駆けつけてくれて、彼女の危機をなんとか回避できた。佐々木俊介はタイミングを見計らい、彼が昨晩作成した離婚協議書を取り出して、唯月に言った。「唯月、俺がお前にやっちゃいけないことをしたってのは認める。お前が許してくれるとは思ってねえよ。俺ら二人はお互いに何の感情もなくなってしまったんだ。この結婚生活もこれ以上続けていくことはできない、スッキリ別れようじゃないか。これは俺が作った離婚協議書だ。見てくれ、問題がなければ、そこにサインをしよう。来週の月曜日、市役所に行って離婚手続きをするんだ」唯月は冷たい顔でその離婚協議書を手に取った。一目見て、彼女はまた佐々木俊介を殺したいほど怒りが込み上げてきた。おばあさんも佐々木俊介が作ったその離婚協議書を手に取り目を通した後、彼女は何度も深呼吸をして自分の怒りを抑えようとした。佐々木家は本当に一家揃ってクズばかりだ!佐々木俊介は唯月が怒りに満ちた顔になっているのを見て、図々しく言った。「この家は俺が結婚前に個人で買った財産だし、不動産権利書には俺一人の名前しか記載されていない。だから、家は俺のものだ。車も俺が買ったもんだから、当然俺のもんだろ。お前は今働いているが、働き始めてまだ数日しか経っていない。試用期間ですらまで終わっていないから、お前の収入が安定してるって証明はできない。だから、俺がちょっと損してもいいぜ。陽の親権は俺がもらうから、お前は離婚した後は毎月四万の養育費を出すだけで勘弁してやる。陽はまだ2歳ちょっとだから、まだミルクを飲まないといけないし、夜寝る時だって、まだオムツが必要だ。3歳になって幼稚園に通い出したら、幼稚園の費用はだんだん負担が増えてるし、小学校、中学校は授業料はタダだけど、高校、大学に上がったら金がかかるだろ。大人になったら、結婚して家を買ったりするだろうし、俺が一部分は負担してやらないといけないから、一生金がかかるんだよな。俺は陽の親権をもらうから、お前には毎月四万の養育費だけでいいって言ってるんだ。もうかなりお前には譲歩してやってる

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第448話

    唯月は冷ややかに笑った。「私が出したリフォーム代を返してもらえば、私のほうから勝手に出て行くわ。別にあんたらに追い出していただく必要はないわよ」「リフォーム代は一円たりとも返さないよ!」佐々木英子は大声で叫んだ。そうすると顔にもっと痛みが走った。唯月は顔を氷で冷やしているが、彼女の分はないので、余計に痛かった。彼女の両頬はヒリヒリと火照って痛かった。鏡を見るまでもなく、この時の彼女の顔がまるで豚のようにぶくぶくと腫れあがっているのがわかった。唯月の奴!絶対に一生幸せな生活など送らせないからな!「法廷で会いましょう」おばあさんが口を開いた。「あんたたち佐々木家は人を苦しめるにもほどがあるわ。話し合いで決着がつかないというなら、もうこれ以上続ける必要はないわ。唯月さん、離婚訴訟を起こして、裁判で決着をつけましょう」佐々木俊介は唯月を脅して言った。「唯月、本気で裁判沙汰にしようっても、お前には全くメリットはねえぞ。てめえの妹もこいつらもお前の助けにはならねえよ。ここまでの騒ぎにもってきやがって、今後、陽に会えるとは思わないことだな」もし唯月が離婚訴訟を起こして、財産分与を求めるなら、彼は陽をどこかに隠して、彼女には一生息子と会えないようにするつもりだ。唯月は冷たく彼を睨みつけた。彼のその威嚇にはまったく関心を向けていないようだ。彼女が訴訟を起こすなら、財産の分与、息子の親権、全てにおいて彼女が得られるものはすべて奪うつもりだ。絶対に佐々木俊介と成瀬莉奈に美味しい思いをさせてはいけない。唯月と佐々木俊介の離婚話がなかなかまとまらない中、内海唯花のほうは結城理仁と彼の兄弟、従兄弟たちを連れて英子の夫の家である柏木家に到着していた。陽は柏木家が連れて帰っていた。内海唯花は彼らが陽を佐々木家のほうではなくて、柏木家の実家のほうに連れて行くと読んでいたのだ。柏木家は三階建ての一軒家で、外も内側もかなり豪華な造りだった。村の中では一際目を引く建物だ。佐々木英子の夫が陽を連れ去って帰ってきてから、そう長くは経っていなかった。彼は唯月姉妹が陽はここにいるとわかっていても、ここまで陽を取り返しにくるはずがないと考えていた。佐々木家が唯月姉妹の邪魔をするはずだからだ。だから、彼は陽を連れて帰ってきた後、陽を自分の息子と遊ばせ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第449話

    内海唯花は彼らのところまで駆け寄って行き、両手で柏木智哉の手から陽を奪い返した。そして、片手をあげて、その手を大きく振りかぶり彼の顔を力強くビンタした。柏木智哉は10歳くらいだが、背が高めなので、見た感じは14、5歳の少年と同じ感じだった。突然内海唯花にビンタを食らって、怯えるどころか逆に頭に血を上らせて、まるで狂ったかのように唯花のほうへと飛びかかってきた。しかし、彼は内海唯花に触れることすらできず、飛びかかっていった途中で、突然両足が地面につかなくなり持ち上げられた。まったく反応することができず、彼は壁に完全に押し付けられてしまった。顔は壁と向かい合う形で、両手は後ろに押さえ付けられてしまい、彼がもがこうとしても、ガッチリと身動きが取れないくらいに体を固められてしまった。押さえ付けられた両手は、だんだん痛みを増していった。「放せ!」智哉は、わあわあと大声を上げた。「よくもこんなことする度胸があるな。俺をさっさと放せ、勝負してやる!」弟の智哉が壁に押さえ付けられたのを見て、彼の姉が何も考えずに弟を助けに行こうとしたが、そこへやってきた数人に壁を作られて行く手を阻まれてしまった。彼女がはっとして見てみると、いつの間にか、彼女の家には背の高い男たちが集まってきていた。その男たちは全員イケメンだった。彼女はまだ12歳だが、カッコイイ男には目がなかった。普段同級生たちとどの男性アイドルがカッコイイかをよく話し合っているのだ。彼女は目の前にいるイケメンたちを見て、ぼうっとしてしまった。これは、テレビの中の芸能人たちがここに現れたのか?本当に、イケメン揃いだ!「あ、あなた達は誰ですか?」さっき、陽のことをほったらかしていた柏木家の父親と母親が現れて、家に多くの人がやって来たのを見て、驚いていた。内海唯花は彼らのことは無視し、陽のほうへ顔を下へと向けた。陽の両頬は智哉に叩かれて赤く腫れあがり、赤いくっきりとした手の痕が残っていた。しかも口を切ったらしく血まで出ていた。いつもキラキラと輝かせている無邪気な瞳はこの時、恐怖に怯えていた。陽は口を開いて泣きたい様子だったが、かなりのショックを受けているようで、呆然としてしまい、泣くことすらできなかった。その瞬間、内海唯花の瞳からは涙が溢れ出した。彼女は顔を

Pinakabagong kabanata

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第596話

    その時、聞いていて我慢できなくなった人が英子に反論してきた。「そうだ、そうだ。自分だって女のくせに、あんなふうに内海さんに言うなんて。内海さんがやったことは正しいぞ。内海さん、私たちはあなたの味方です!」「こんな最低な義姉がいたなんてね。元旦那が浮気したから離婚したのは言うまでもないけど、もし浮気してなくたって、さっさと離婚したほうがいいわ、こんな最低な人たちとはね。遠く離れて関わらないほうがいいに決まってる」野次馬たちはそれぞれ英子を責め始めた。そのせいで英子は怒りを溜め顔を真っ赤にさせ、また血の気を引かせた。唯月が彼女に恥をかかせたと思っていた。そして彼女は突然、力いっぱい唯月が支えていたバイクを押した。バイクは今タイヤの空気が抜けているから、唯月がバイクを押すのも力を入れる必要があった。それなのに英子が突然押してきたので、唯月はバイクを支えることができず、一緒に地面に倒れ込んでしまった。「金を返せ。あんたのじいさんがお母さんから金を受け取ったのを認めないんだよ。じいさんの借金は孫であるあんたが返せ、さっさとお母さんに金を払うんだよ」英子はバイクと一緒に唯月を地面に倒したのに、それでも気が収まらず、彼女が持っていたかばんを振り回して力を込めて唯月を叩いた。さらには足も使い、立て続けに唯月を蹴ってきた。唯月はバイクを放っておいて、立ち上がり乱暴に英子からそのかばんを奪い、狂ったように英子を殴り返した。彼女は英子に対する恨みが積もるに積もっていた。本来離婚して、今ではもう佐々木家とは赤の他人に戻ったので、ムカつくこの佐々木家の人間のことを忘れて自分の人生を送りたいと思っていた。それなのに英子は人を馬鹿にするにも程があるだろう、わざわざ問題を引き起こすような真似をしてきた。こんなふうに過激な態度に出れば、善悪をひっくり返せるとでも思っているのか?この間、唯月と英子は殴り合いの喧嘩をし、その時は英子が唯月に完敗した。今日また二人が殴り合いになったが、佐々木母はもちろん自分の娘に加勢してきた。この親子は手を組んで、唯月を二対一でいじめてきたのだ。「警察、早く警察に通報して!」その時、誰かが叫んだ。「すみません警備員さん、こっちに来て喧嘩を止めてちょうだい。この女二人がうちの会社まできて社員をいじめてるんです」

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第595話

    唯月がその相手を見るまでもなく、誰なのかわかった。その声を彼女はよく知っている。それは佐々木英子、あのクズな元義姉だ。佐々木母は娘を連れて東グループまで来ていた。しかし、唯月は昼は外で食事しておらず、会社の食堂で済ませると、そのままオフィスに戻ってデスクにうつ伏せて少し昼寝をした。それから午後は引き続き仕事をし、この日は全く外に出ることはなかったのだ。だからこの親子二人は会社の入り口で唯月が出てくるのを、午後ずっとまだか、まだかと待っていたのだ。だから相当に頭に来ていた。やっとのことで唯月が会社から出てきたのを見つけ、英子の怒りは頂点に達した。それで会社に出入りする多くの人などお構いなしに、大声で怒鳴り多くの人にじろじろと見られていた。物好きな者は足を止めて野次馬になっていた。唯月はただの財務部の職員であるだけだが、東社長自ら採用をしたことで会社では有名だった。財務部長ですら、自分の地位が脅かされるのではないかと不安に思っていた。唯月は以前、財務部長をしていたそうだし。上司は唯月を警戒せずにいられなかった。さらに、唯月が東社長に採用されことで、上司は必要以上に彼女のことを警戒していたのだ。唯月は彼女にとって目の上のたんこぶと言ってもいい。周りからわかるように唯月を会社から追い出すことはできないから、こそこそと汚い手を使っていた。財務部職員によると、唯月は何度も上司から嫌がらせを受け、はめられようとしていたらしい。しかし、彼女は以前この財務という仕事をやっていて経験豊富だったので、上司の嫌がらせを上手に避けて、その策略に、はまってしまうことはなかった。「あなた達、何しに来たの?」唯月は立ち止まった。そうしたいわけじゃなく、足を止めるしかなかったのだ。元義母と元義姉が彼女の前に立ちはだかり、バイクを押して行こうとした彼女を妨害したのだ。「私らがどうしてここに来たのかは、あんた、自分の胸に聞いてみることだね。うちの弟の家をめちゃくちゃに壊しやがって、弁償しろ!もし内装費を弁償しないと言うなら、裁判を起こしてやるからね!」英子は金切り声で騒ぎ立て、多くの人が足を止めて野次馬になり、人だかりができてきた。彼女はわざと大きな声で唯月がやったことを周りに広めるつもりなのだ。「あなた方の会社の社員、ええ、内海唯

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第594話

    「伯母さんはあなた達が簡単にやられてばかりな子たちだとは思っていないわ。ただ妹のためにも、あの人たちをギャフンと言わせてやりたいのよ」唯花はそれを聞いて、何も言わなかった。それから伯母と姪は午後ずっと話をしていた。夕方五時、詩乃はどうしても唯花と一緒に東グループに唯月を迎えに行くと言ってきかなかった。唯花は彼女のやりたいようにさせてあげるしかなかった。そして、唯花は車に陽を乗せ自分で運転し、神崎詩乃たち一行と颯爽と東グループへと向かっていった。明凛と清水は彼らにはついて行かなかった。途中まで来て、唯花は突然おばあさんのことを思い出した。確か午後ずっとおばあさんの姿を見ていない。唯花はこの時、急いでおばあさんに電話をかけた。おばあさんが電話に出ると、唯花は尋ねた。「おばあちゃん、午後は一体どこにいたの?」「私はそこら辺を適当にぶらぶらしてたの。仕事が終わって帰るの?今からタクシーで帰るわ」実はおばあさんはずっと隣のお店の高橋のところにいたのだった。彼女は唯花たちの前に顔を出すことができなかったのだ。神崎夫人に見られたら終わりだ。「おばあちゃん、私と神崎夫人のDNA鑑定結果がでたの。私たち血縁関係があったわ。それで伯母さんが私とお姉ちゃんを連れて一緒に神崎さんの家でご飯を食べようって、だから今陽ちゃんを連れてお姉ちゃんを迎えに行くところなの。おばあちゃんと清水さんは先に家に帰っててね」「本当に?唯花ちゃん、伯母さんが見つかって良かったわね」おばあさんはまず唯花を祝福してまた言った。「私と清水さんのことは心配しないで。辰巳に仕事が終わったら迎えに来てもらうから。あなたは伯母さんのお家でゆっくりしていらっしゃい。彼女は数十年も家族を捜していたのでしょう。それはとても大変なことだわ。伯母さんのお家に一晩いても大丈夫よ。私に一声かけてくれるだけでいいからね」唯花は笑って言った。「わかったわ。もし伯母さんの家に泊まることになったら、おばあちゃんに教えるわね」通話を終えて、唯花は一人で呟いた。「午後ずっと見なかったと思ったら、また一人でぶらぶらどこかに出かけてたのね」年を取ってくると、どうやら子供に戻るらしい。そして唯月のほうは、妹からのメッセージを受け取り、彼女たちが神崎夫人と伯母と姪の関係で

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第593話

    昔の古い人間はみんなこのような考え方を持っている。財産は息子や男の孫に与え、女ならいつかお嫁に行ってしまって他人の家の人間になるから、財産は譲らないという考え方だ。息子がいない家庭であれば、その親族たちがみんな彼らの財産を狙っているのだ。跡取り息子のいない家を食いつぶそうとしている。それで多くの人が自分が努力して作り上げた財産を苗字の違う余所者に継承したがらず、なんとかして息子を産もうとするのだった。「二番目の従兄って、内海智文とかいう?」詩乃は内海智文には覚えがあった。主に彼が神崎グループの子会社で管理職をしていて、年収は二千万円あったからだ。彼女たち神崎グループからそんなに多くの給料をもらっておいて、彼女の姪にひどい仕打ちをしたのだ。しかもぬけぬけと彼女の妹の家までも奪っているのだから、智文に対する印象は完全に地の底に落ちてしまった。後で息子に言って内海智文を地獄の底まで叩き落とし、街中で物乞いですらできなくさせてやろう。「彼です。うちの祖父母が一番可愛がっている孫なんですよ。彼が私たち孫の中では一番出来の良い人間だと思ってるんです。だからあの人たちは勝手に智文を内海家の跡取りにさせて、私の親が残してくれた家までもあいつに受け継がせたんです。正月が過ぎたら、姉と一緒に時間を作って、故郷に戻って両親が残してくれた家を取り戻します。家を売ったとしても、あいつらにはあげません!」そうなれば裁判に持っていく。今はもうすぐ年越しであるし、姉が離婚したばかりだから、唯花はまだ何も行動を起こしていないのだ。彼女の両親が残した家は、90年代初期に建てられたものだ。実際、家自体はそんなにお金の価値があるものではないが、土地はかなりの値段がつく。彼女の家は一般的な一軒家の坪数よりも多く敷地面積は100坪ほどあるのだ。彼女の両親がまだ生きていた頃、他所の家と土地を交換し合って、少しずつ敷地面積を増やしていき、ようやく100坪近くある大きな土地を手に入れたのだった。母親は、彼女たち姉妹に大人になって自立できるようになったら、この土地を二つに分けて姉妹それぞれで家を建て、隣同士で暮らしお互いに助け合って生きていくように言っていたのだ。「まったく人を欺くにも甚だしいこと。妹の財産をその娘たちが受け継げなくて、妹の甥っ子が資格を持っ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第592話

    姫華は唯花たちが引っ越し作業を終えてから、ようやく自分がそんなに面白いことを逃したのだと知ったのだった。だから彼女は明凛と唯花に不満を持っていた。明凛は唯花に姫華にも教えるよう言ったが、唯花が彼女はお嬢様だから家をめちゃくちゃにするという乱暴なシーンは見せたくないと思い姫華には伝えなかったのだ。確かに姫華は名家の令嬢であるが、神崎姫華だぞ。神崎姫華は星城の上流社会ではあまり評判が良くない。他人が彼女のことを横暴でわがまま、理屈が通じないというくらいなのだから、そんな彼女が家を壊すくらいのシーンで音を上げるとでも?逆に、彼女自身も機嫌が悪い時にはハチャメチャなことをしでかすというのに。「姉がもらうべき分はしっかりと財産分与させました。ただ内装費に関しては佐々木家が拒否したので、私たちが人を雇ってその内装を全て剥がしたんです」詩乃はそれを聞いて「それはそうすべきよ。どうして佐々木家においしい思いをさせる必要なんてあるかしら」と唯花たちの行動を当たり前だと言った。そして最後にまた残念そうにこう言った。「もし伯母さんが知っていれば、あなた達の家族として、大勢で彼らのところまで押しかけて内装費を意地でも出させてあげたものを。これは正当な権利よ」この時、唯花はふいに姫華の性格は完全に母親譲りなのだと悟った。「唯花ちゃん、もうちょっとしたらお店を閉めて私たちと一緒に神崎家に帰りましょう。家族みんなで食事をするの。そうだ、あなたの旦那さんはお時間があるのかしら?彼も一緒にいらっしゃいよ」唯花は「夫は今日出張に行ったばかりなんです。たぶん暫くの間帰ってきません。彼が帰ってきたら、一緒に詩乃伯母さんのお宅にお邪魔します」と返事した。「出張に行ってらっしゃるのね。なら、彼が帰って来てからお会いしましょう」詩乃はすぐに姪の夫に会えなくても特に気にしていなかった。彼女にとって、二人の姪のほうが重要だったからだ。今、彼女は姪を見つけることができて、姪二人にはこの神崎詩乃という後ろ盾もできた。ちょうど唯花に代わってその夫が頼りになる人物なのか見極めることができよう。「あなたのお姉さんは五時半にお仕事が終わるのよね?」「ええ」神崎夫人は時間を見て言った。「お姉さんはどこで働いていらっしゃるの?」「東グループです」神崎夫人は「そ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第591話

    姫華は父親である神崎航と一緒に母親を気にかけていたので、理紗が忘れずにこの鑑定結果を持ってきたのだった。唯花は理紗から渡された鑑定結果を受け取って見た。彼女はその結果を見た後、少しの間沈黙してからそれをテーブルの上に置いた。「唯花ちゃん、あなたは私の姪よ。私のことは詩乃伯母さんって呼んでね」今世では妹と再会を果たすことはできなかったが、妹の娘である二人の姪を見つけることができただけでも、神崎詩乃(かんざき しの)にとっては一種の慰めになった。彼女は唯花の手をとり、自分のことを「詩乃伯母さん」と呼ばせた。「唯月ちゃんは?それから陽ちゃんも」神崎詩乃はもう一人の姪のことも忘れていなかった。「姉は昼にはここへは来ないんです。夕方五時半に退勤したら帰ってきますよ」唯花はそう説明して、明凛のほうを見た。明凛が陽を抱っこして近づいて来て、唯花が彼を抱っこした。「神崎おば様……」唯花がそう言うと、詩乃は言った。「唯花ちゃん、私のことは詩乃伯母さんって呼んでね。私はずっとあなた達を見つけられるのを夢見ていたのよ。ようやく見つけたんだから、そんな距離感のある言い方で呼ばれると寂しいわ」唯花は少し黙った後「詩乃伯母さん」と言い直した。DNA鑑定結果はもう出てきたのだ。彼女が神崎詩乃の血縁者であることが証明されたのだから、神崎夫人はまさに彼女の伯母にあたるのだ。本当にまるでドラマのようだ。詩乃は唯花に詩乃伯母さんと呼ばれて、目をまた赤くさせた。そして姫華がこの時急いで言った。「お母さんったら、もう泣かないで。陽ちゃんもいるのよ、お母さんが泣いたりしたら、陽ちゃんを驚かせちゃうでしょ」明凛と清水はみんなにお茶とフルーツを持ってやってきた。詩乃は陽を抱っこしたいと思っていたが、陽のほうはそれを嫌がり、背中を向けて唯花の首にしっかりと抱きついた。「陽ちゃん、こちらはおばあちゃんのお姉さんなのよ」詩乃は立ち上がって、陽をなだめようとした。「いらっしゃい、おばあちゃんが抱っこしてあげる、ね」しかし陽は彼女の手を振り払い「やだ、やだ、おばたんがいいの」と叫んだ。詩乃は陽が過剰な反応をしたのを見て、諦めるしかなかった。そして少し前の出来事を思い出し、彼女はまた容赦なくこう言った。「あの最低な一家が、陽ちゃんにショックを

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第590話

    数台の高級車が遠くからやって来て、星城高校の前を通り過ぎ、唯花の本屋の前に止まった。隣の高橋の店で暇だからおしゃべりをしていた結城おばあさんが、道のほうに目を向けると数台の高級車がやって来ていた。そしてすぐに顔をくるりと元の位置に戻し、わざと頭を低くした。あの数台の車から降りてきた人に見られないようにしたのだ。「唯花、唯花」姫華が車から降りて、唯花の名前を呼びながら店の中へと小走りに入ってきた。その時は隣の店でおしゃべりしていた結城おばあさんを全く気にも留めていなかった。その後ろの車から降りてきた神崎夫人の夫の神崎航がボロボロに泣いている妻を支えながら、娘の後ろに続いて店の中に入ってきた。理紗はボディーガードたちに入り口で待機するように伝え、それから彼女も店の中へと入ってきた。唯花は三分の一ほどビーズ細工のインコを作り終えたところで、姫華に呼ばれる声を聞き、その手を止めて姫華のほうへ視線を向けた。「姫華、来たのね。ご飯は食べた?もしまだなら……」その時、神崎夫人が夫に支えられて入ってきて、夫人が涙で顔を濡らしているのを見て、唯花は状況を理解した。神崎夫人はDNA鑑定の結果を手にしたのだ。神崎夫人のその顔を見れば、聞くまでもなく彼女と神崎夫人には血縁関係があるのだということがわかった。「唯花ちゃん――」神崎夫人は急ぎ足で、レジ台をぐるりを回って彼女のもとへとやって来て、唯花を懐に抱きしめ泣きながら言った。「伯母さんにもっと早く見つけさせてよ――」彼女はそれ以上他に言葉が出てこないらしく、ただ唯花を抱きしめて泣き続けた。唯花は彼女に慰める言葉をかけたかったが、自分もこの時何も言葉が出せなかった。「私の可哀想な妹――」神崎夫人は妹がすでに他界していることを思い、また大泣きした。唯花は彼女と一緒に涙を流した。明凛は陽を抱っこして清水と一緒に遠くからそれを見守っていた。陽は全くどういうことなのかわかっていない様子だった。姫華と理紗も目を真っ赤にさせていた。神崎航がやって来て、妻を唯花から離し、優しい声で慰めた。「泣かないで、姪っ子さんが見つかったんだ、良かったじゃないか。私たちは喜ぶべきだろう。そんなふうにずっと泣いてないで、ね」神崎夫人は夫に支えられて椅子に腰かけた。妹の不幸な境遇と、二人の

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第589話

    「内海のクソじじい、あんたはしっかり私から百二十万受け取っただろうが。現金であげただろう、あれは私がずっと貯めていたへそくりだったんだよ。あの金を受け取る時にあんたは唯花を説得してみせると豪語してたじゃないか。それがあんたは何もできずに、うちの息子はやっぱり唯月と離婚してしまったんだぞ。だからさっさと金を返すんだよ。じゃないと本気で警察に通報するわよ」佐々木母は内海じいさんがどうしても認めようとしないので、怒りで顔を真っ赤にさせていた。内海じいさんは冷たい顔で言った。「もし通報するってんなら、通報すりゃええだろ。俺がそんなことを怖がるとでも思ってんのか。俺はお前から金を受け取ってないし、もし受け取っていたとしてもそれが何だって言うんだ?それは唯月が結婚した時の結納金の補填だろう。うちの孫娘がお宅の息子と結婚する時に一円も出しゃあしなかったくせによ。結納金に代わって百万ちょいの補填だけで済んだんだぞ。お宅にも娘がいるだろ。その娘が結婚する時に一円も結納金を受け取らずにタダで娘を婿側に送ったのか?」佐々木母はそれを聞いて腹を立てて言った。「なにが結納金だ、お前は唯月を育ててきたのか?そうじゃないくせに結納金を受け取る資格があんたにあるとでも?彼らはもう離婚したってのに、馬鹿みたいにあんたらに結納金を今更補填してあげるわけないでしょうが。さっさと金を返すんだよ!」「金なんかねえ。命ならあるけどな。それでいいなら持って行くがいい」内海じいさんは、もはやこの世に何も恐れるものなど何もないといった様子で、佐々木母はあまりの怒りで彼に飛びかかって引き裂いてやりたいくらいだった。そこに英子が母親を引き留めた。「お母さん、あいつに触っちゃダメよ。あいつはあの年齢だし、床に寝転がりでもされちゃったら、私たちが責任を追及されちゃうわよ」「ああ、じいさんや、私はすごくきついよ。もう息もできないくらいさ。こいつらがここで大騒ぎしたせいで私まで気分が悪くなってきたみたいだ。死にそうだよ……」病床に寝ていたおばあさんが突然、気分が悪そうな様子で胸元を押さえて荒い呼吸をし始めた。内海じいさんはすぐにナースコールを押して、医者と看護師に来るように伝えた。そして、佐々木母たち三人に向って容赦なく言った。「もしうちのばあさんがお前らのせいで体調を悪化させた

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第588話

    唯花は笑って言った。「姫華が言ってたの、九条さんって情報一家らしいわ。彼と一緒にいたら、ありとあらゆる噂話が聞けるわよ。あなたって一番こういうのに興味があるでしょ。九条さんってまさにあなたのために生まれてきたみたいな人だわ、あなた達二人とってもお似合いだと思うけど」明凛「……」彼女が彼氏を探しているのは、結婚したいからなのか、それとも噂話を聞くためなのか。「そういえば、お姉さんの元旦那のあの一家がまた来たって?」明凛は急いで話題を変えた。親友に自分の噂話など提供したくないのだ。「お姉ちゃんと佐々木のクソ野郎が離婚して、お姉ちゃんがあの家から出て行ったでしょ。あいつらは待ってましたと言わんばかりに引っ越して来ようとしてたわけ。だけど、今は部屋を借りるかホテル暮らしするか、はたまた実家に帰るしかなくなったでしょ。あの一家は絶対市内で年越ししたいと思ってるはずよ。実家には帰らないでしょうね」佐々木一家は絶対に実家のご近所たちに、年越しは市内でするんだと言いふらしていたはずだ。だから、住む家がなくとも、彼ら一家は部屋を借りるまでしてでも、市内で正月を迎えようとするに決まっている。唯花は幽体離脱でもして佐々木家に向かい、彼らの様子を見てみたいくらいだった。「あの人たち、家の内装がなくなってめちゃくちゃになった部屋を見て、きっと大喜びして失神したことでしょうね」唯花はハハハと大笑いした。「そりゃそうね」唯花が今どんな状況なのか興味を持っている佐々木家はというと、この時、すでに内海じいさんがいる病院までやって来ていた。内海ばあさんは術後回復はなかなか順調で、もう少しすれば退院して家で休養できるのだった。佐々木母は娘とその婿を連れて病室に勢いよく入っていった。佐々木父は来たくなかったので、ホテルに残って三人の孫たちを見ていた。ただ佐々木父は恥をかきたくなかったのだ。「このクソじじい」佐々木母は病室に勢いよく入って来ると、大声でそう叫んだ。内海じいさんは彼女が娘とその婿を連れて入ってきたのを見て、不機嫌そうに眉をしかめた。彼の息子や孫たちはどこに行ったのだ?誰もこの狂ったクソババアを止めに入りやしないじゃないか。「これは親戚の佐々木さんじゃないですか、うちのばあさんはまだ病気なんで、静かにしてもら

Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status