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第24話

Author: 槇瀬光琉
last update Last Updated: 2025-09-09 19:49:30

「あれ?ここは?」

目が覚めて、ここがどこだか分らなかった。

「起きたのか、寝てて起きないから寮に連れて帰ってきた」

そんな言葉が飛んできて驚いて飛び起きたら、メガネをかけた状態で、机に向き合ってたのか椅子に座ったままで大我がこっちを見てた。

「あれ?俺またそんなに寝てたのか?」

目を冷やしながら寝ちゃったのは自覚してるけど、そこまで寝てるとは思わなかったんだ。

「まぁ、動かしても起きないぐらいには深く寝てたな」

大我の言葉に項垂れた。またしても俺はそこまで深く寝てたのかって…。

「大我は何やってんの?」

俺が寝てる間に何やってるのかなって気になったんだ。別に深い意味はない。

「ん?あぁ、仕事。見るか?」

なんて言いながら大我は椅子を動かし、ベッドの傍まで来た。その手に持ってるものを見せてもらいポカーンってしちゃった。

「唯斗を養うためには仕事しないとな」

なんて、言いながら意地悪い顔で笑う。それでもそんな顔もカッコいいとか、げせぬ。

「これデザイン画?」

数枚ある絵を見て聞けば

「そう。あの話し合いの後で頼まれたやつ。唯斗が寝てるから今のうちにって思って描いてた」

なんて言いながら違う紙も渡されてそれ見てびっくり。なんかかわいいイラストが沢山描いてあるやつだった。

「これも仕事?」

イラストは鉛筆で描かれてるやつだけど、もしかしたらって思ったんだ。

「こういうの唯斗好きだろ?」

なんて聞かれて素直に頷いた。大我が描いてた可愛いイラストは確かに俺が好きなタイプのやつだったからだ。

「なんで知ってんの?ホントに…」

毎度毎度、大我には驚かされっぱなしだよ。

「どっかの誰かさんが教えてくれてるくせに自分で忘れてるんでね」

なんて耳が痛いことを言ってくれた。そう、本当に自棄を起こしてた頃の俺は大我に甘えると記憶が無くなってたんだ。甘えたということ自体を忘れるぐらいには軽く記憶喪失になっていた。最近ではというか、大我とちゃんと付き合うようになってからは、大我が印をつけてくれているのと、自分自身が覚えていられるようにはなっている。3回に1回程度だけどさ。それでも覚えていられるようになった分だけ偉くない?って思うけど、肝心なことを忘れることがあるから大我には呆れられるんだ。

「でも、大我って本当に俺が知らない間にやってたんだ」

大我の実家で聞いたときは驚いたけど、こうして本当
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