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第23話

Author: 槇瀬陽翔
last update Last Updated: 2025-09-07 17:46:15

「気付かないわけないだろ。俺は唯斗と一緒にいる時間が多いから、そういうのにはちゃんと気付いてる」

大我の言葉にそうだよなって妙に納得しちゃった。

大我は俺が自分でも気が付いてない自分の変化に気付くぐらいには俺のことを見てくれてたんだった。俺が自棄を起こしてるあの時からずっと…俺を守るかのように見てくれていたんだった。

「でも、俺、大我と遊びに行きたいって思ってるからな」

これだけはちゃんと伝えておかないとダメだよな。

「わかってる。だからあのイベントの約束しただろ?」

って、笑いながら言われちゃったよ。

「うん、絶対だからな」

俺は念押ししといた。だってあれは本気で行きたいって思ったイベントだから。青い世界が見たいって思ったんだ。

「わかってる。ちゃんと連れて行くから楽しみにしてろ」

笑いながら頭を撫でられた。なんだか恥ずかしいけど、嬉しかったんだ。大我がちゃんと約束を守ってくれるってわかったから。

「ゆいの場合は幼少期の出来事が原因で、行きたいのに行きたくないって思うんだと思うんだよな」

なんて、大我から出てきた言葉に驚いた。

「なんで、知ってんのぉ~。俺がいつも葛藤してるやつを…」

そこまで気づかれてるなんて思わないじゃん普通さぁ。

ホントに大我さんは一体どこまで俺のこと知ってるんですかね?

「ん~、中学の頃に自棄起こしてる唯斗くんがポツリポツリと話してくれたからなぁ。まぁ、本人は全くそんなこと覚えてないんですけどね」

なんて、やっぱりな言葉が返って来て俺はガックリと項垂れた。

「やっぱり俺って色々とやらかしてるんだ…」

こうやって改めて聞くと、俺って一体どれだけ大我に迷惑かけてたんだろうって思う。

「まぁ、色々とな。甘えて記憶を失くすぐらいだし、色々とやらかしてるな」

なんて言われれば、俺は一体どれだけのことを大我にやらかして来たんだろうか?って思う。

「覚えてないならそれでいい。それだけ唯斗は俺を必要としてくれてたってことなんだからな」

一人で自分の考えに浸ってたらぐしゃって大我に頭を撫でられて我に返った。

「そうやって大我が甘やかすから俺が抜け出せなくなったんだからな」

少しだけ膨れて言えば

「今度からはみんなが甘やかすことになるから覚悟しろよ」

なんて恐ろしいことを言われた。

「えぇ~!!それは怖いよ」

本気で怖いと思った。これ以上、甘やかされたら本気
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