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偽りの愛を断ち、私は新生する
偽りの愛を断ち、私は新生する
Auteur: 霜月氷雨

第1話

Auteur: 霜月氷雨
私、浅見清香(あさみ さやか)は、高城凛人(たかぎ はやと)と結婚して七年になるが、夫に対して数億円という巨額の借金を背負っている。この家では、食事を一口多く食べるだけで借用書を書かされるのだ。

泣いて抗議したこともあったが、凛人の表情は冷淡なままだった。

「あの日、妙子の身代わりとして無理やり嫁いできたのはお前だろう。金目当てかどうか試しているだけだというのに、もう我慢の限界か?」

浅見妙子(あさみ たえこ)。彼女こそが浅見家の本物の令嬢であり、私はその婚約を掠め取った偽物の令嬢に過ぎない。

彼のその一言で私は反論する気力を失い、従順に彼の子を産むことさえ受け入れてきた。

だが、実の母の桐谷明美(きりたに あけみ)が重病に倒れた今、私は彼にひざまずき、震える声でもう二千万円の借用書を書かせてほしいと懇願している。

七歳になる息子の高城湊斗(たかぎ みなと)は、あからさまに軽蔑した様子で顎をしゃくった。

「ママって、お金をせびる手口ばっかりだね。パパからの信用限度額はもうゼロだってば!

妙子ママに席を譲るって約束するなら、パパに申請を通してもらえるよう説得してあげてもいいよ」

父子揃って妙子のために心血を注いでいる様子は、かつて私が重病を患った際に見せてくれた献身そのものだった。

私はもう、涙を一滴も流さなかった。ただ静かに離婚協議書を彼らの前に置いた。

協議書に重さなどないはずなのに、まるで巨大な岩が空気を押し潰したかのように、呼吸することさえ苦しくなるほどの圧迫感を放っていた。

凛人は指を絡ませ、その瞳からは一切の感情を読み取ることができなかった。

湊斗は腕を組み、不満げに顔を歪めた。

「子供だと思って馬鹿にしないでよ。ママは貧乏な実家に帰りたくなくて、高城家のお金は一円も使わないって契約してまでパパと結婚したんでしょ。今さら高城夫人の座を捨てるわけないじゃない!

そうやってパパの優しさに付け込んで、いじめてるんだ!」

私と凛人は幼馴染だ。実の母が私を訪ねてきたとき、唯一手放せなかったのが彼だった。

高城家は婚約の継続を認める条件として、私が高城家の金を一切使わず、外で働くことも禁じ、専業主婦として凛人に尽くすことを要求した。

月々に使える額はわずか一万円。

だが、たった一万円でどうやって家庭をやり繰りできるというのか。

私はてっきり、これが凛人の必死の説得の末に得られた妥協案だと思っていたが、実際は私の真心を試すための残酷な手段にすぎなかったのだ。

脇に垂らした手がゆっくりと握りしめられ、爪が深く手のひらに食い込む。だがその痛みも、心臓を抉られるような痛みに比べれば微々たるものだった。

凛人の表情がふっと緩み、その瞳に無関心の色が混じった。

「俺と妙子の関係を公表したところで、お前の高城夫人としての地位が揺らぐわけではない。今の俺の立場なら、面倒を見てくれる人間が複数いても不自然ではないだろう。

それに、お前はもう子供を産めない体なんだしな」

空気が一瞬、凍りついた。

かつて凛人が事業で重大な過失を犯し、家を追い出されたことがある。

その時、浅見家の反対を押し切り、彼と共に狭くて湿っぽい地下室で暮らしたのは私だ。

彼の負債を返すために朝から晩まで働き詰め、ついには医師から過労が原因で妊娠は難しいと宣告された。

借金を完済したあの日、彼は私の肩に顔を埋め、熱い涙をこぼした。

「清香、子供がいるかどうかなんて関係ない。お前だけが俺の唯一の妻だ」

しかし時は流れ、妙子が戻ってきてからというもの、凛人の真心は少しずつ移ろっていった。

私はそっと下腹部に手を当て、お腹に宿る小さな命の鼓動を感じた。再び身ごもったことを彼に伝える言葉を飲み込み、ただ離婚協議書をさらに前へと押し出した。

「サインして。もう、お互い自由にさせてもらいましょう」

湊斗が勢いよく書斎へ駆け込み、一束の紙切れを抱えて戻ってくるなり、それを私の体へと容赦なく叩きつけた。

【三月二十一日、義母の誕生日。金のネックレス一本の購入申請。借主:浅見清香】

【四月三日、湊斗の衣替え。費用六万円の申請。借主:浅見清香】

【五月十六日、凛人のプロジェクト成功祝賀会。開催費用四十万円の申請。借主:浅見清香】

湊斗は凛人そっくりの、冷ややかな視線を向けた。

「パパが言ってたよ。離婚したいなら、まずこのお金を返してからだって!」

親戚への付け届けの費用。

湊斗の医療費。

このすべてはこの家のために使ったものだというのに、今では私の首を絞める無形の縄となっている。

凛人はこの茶番を静かに見守り、その瞳の奥には湊斗の振る舞いに対する満足げな色が浮かんでいた。

あまりの理不尽さに眩暈を覚え、長年の積もり積もった悔しさで思わず目頭が熱くなる。

「このお金のうち、私自身のために使ったものが一円でもあるの?」

私は一着の古着を何年も着回しているというのに、湊斗と凛人には毎シーズンの新作を買い与えた。

私のファンデーションは容器の底を削り取るようにして使っているのに、彼らはカフスボタン一つでさえ二度と同じものは身に付けない。

凛人は眉を上げ、充血した私の目を見て何かを言いかけた。

その時、机の上のスマートフォンが鳴り、画面に妙子の名前が表示された。彼の目元が瞬時に優しく和らいだ。

私に対する態度とはあまりにも違うその姿を見て、私の心は完全に死んだ。

電話を切った凛人は、悪びれる様子もなく私の手を引いた。

「妙子が新人デザイン賞を受賞した。今夜はうちで一緒に祝いたいそうだ。準備をしておいてくれ。パーティーの費用については、借用書を書かなくてもいい」

妙子はデザインなど一日たりとも学んだことがない。それなのに、一体どうやって新人デザイン賞を取れたというのか?

数ヶ月の間、不眠不休で描き上げて提出したあのデザイン画が脳裏をよぎり、私は驚愕に目を見開いた。

「私のデザインの署名を書き換えたの?あの賞金が、お母さんの治療に必要だって知っていたはずなのに!」

凛人が唇を引き結び、反論すらしないその態度は、私の心の底に残っていた最後の希望の火を完全に消し去った。

私は目を赤く腫らしながら、力任せに凛人の頬を平手打ちした。笑いながら、ぼろぼろと涙が溢れ出した。

「凛人、あなたって人は……本当に最低ね!」

凛人は口の端から滲み出た血を拭い、顔色一つ変えなかった。

「もういい。お前は妙子を喜ばせさえすればいい。明美さんの医療費は俺が出してやる」
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