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第0602話

Author: 十一
街灯の下、凛たち三人は歩きながら話していた。

冷たい風が吹きすさび、吐く息はすぐに白い霧となって揺れ昇る。

「凛、タピオカミルクティー飲む?おごるよ〜」浩二が白い歯を見せて笑った。

凛が口を開こうとしたその時、突然一人の男子学生が彼女の前に立ちはだかった。

三人の訝しげな視線を受けながら、その学生はまるで手品のように背中からバラの花束を取り出し、凛に差し出した。

「あ、あの!僕は経済大学の院生三年です。ずっと……ずっと君のことを見ていました。この花束を贈ります。気に入っていただけると嬉しいです!

それと……連絡先を交換してもらえませんか?一目見た瞬間、一目惚れしてしまったんです。突然だとはわかっています。僕自身も信じられないのですが……でも事実なんです。どうかチャンスをください……」

凛は、こんな夜更けに、それも学外でこんな出来事に遭遇するとは思ってもみなかった。

彼女は店を出たとき、今日はようやく海斗や亜希子に偶然出くわさずに済んだと胸をなで下ろしていたのに……まさかこんな形で大物が待ち構えていたとは!

浩二は状況を理解すると、真っ先に時也の表情をうかがった。

なんとまあ、顔はすでに真っ黒だ。

仕方ない。凛があまりにも人気者だから、食事に出かけただけで告白してくる者が現れるのだ。

へへ……

凛は差し出された花束を見つめ、一瞬黙り込んでから言った。「花はきれいですね……」

男子学生はたちまち笑顔になり、目を輝かせた。「じゃあ受け取って――」

「でも残念ですが、受け取れません」

「……ど、どうして?」

凛は静かに続けた。「第一に、私たちは面識もありません。見知らぬ相手から、私にはこの花をいただくことができません」

「僕のことを知らなくても構いませんよ!」男子学生は慌てて言葉を重ねた。「これは、あなたに贈りたいだけなんです!」

「それなら尚更受け取れません。バラは愛を象徴します。今日この花束を私が受け取れば、その意味は誰にでもわかってしまいます。ですから申し訳ありません」

「そうじゃないんです、花を贈ったのは、すぐに彼女になってほしいって意味じゃなくて……」

凛は静かに返した。「でも結局、目的はそれですよね?」

男子学生は言葉を失った。

それでも諦めきれず、「じゃあLINEだけでも交換してもらえませんか?」と食い下がった。

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