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第0690話

Author: 十一
「足の調子はどうだ?」陽一が実験室から戻ると、玄関に開封済みの段ボールが置いてあるのを見つけ、凛が退院したことを悟った。

「医者からは大したことはない、薬を塗って、一週間後に再診すればいいと言われました」

何かを思い出したように、凛は俯きながら言った。「あの日……先生と瀬戸社長がいてくれなかったら、私、あれ以上耐えられなかったかもしれません……」

特にその後、熱まで出てしまったからだ。

しかも解熱剤も陽一が持ってきてくれたものだと聞いた。

夜中には高熱が下がらず、頭はぼんやりしていたが、完全に意識を失っていたわけではない。

陽一が風除けの柱の後ろに自分を移動させたことも、陽一と時也が自分を囲んで体を温めてくれたことも、アルコールとガーゼでひたすら体を冷やしてくれたことも……

凛は全て知っている。

病院に運ばれてからの出来事や、交わされた言葉まで、凛には記憶がある。

「君が事故に遭った日、川村さんから電話があったんだ。最初は出られなくて、遅れてしまって悪かった」

「でも結局来てくれましたよね?」凛が顔を上げた。

視線が合うと、凛は軽く唇を緩めた。「先生、謝らなくていいのです。先生に私を助ける義務なんてないんですから。むしろ私が感謝すべきです。知り合ってからこれまで、何度助けられたか数え切れないくらいです」

「わかった。それならもうお互い貸し借りなしにしよう」

「そうしましょう!」

「そうだ、渡したいものがある。ちょっと待って……」

凛の訝しげな視線の中、陽一は一旦自宅に戻り、ショッピングバッグを持ちながら現れた。

バッグは大きかったが、中身はさらに大きく、黒いビニール袋に包まれている。

バッグからはみ出るほどの大きさだ。

「これは何でしょうか?」凛は瞬きした。

「開けてみればわかる」

「はい」

凛に招かれ、陽一は慣れた様子で、スリッパに履き替えて、凛の家へ入った。

ビニール袋を開ける前に、凛は黒い袋の形から既に予感していたが、完全な形の豆果を見た瞬間、やはり驚きを隠せなかった。

「これは……」

凛はこの豆果が以前に種子を取ったものより大きく、色も濃く、何より無傷であることに気づいた!

「先生、どこから持って来たんですか?!」

「あの日君を見つけた後、近くにエンタダの林があった。おそらく君はそれが原因で道に迷ったんだろ
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Comments (1)
goodnovel comment avatar
ワタナベ イネコ
軽く1000話行ってしまいそう! 私も敏子様の件が進んでほしいのに~ 一ちゃんも恵まれてほしいし でもハルかや牧夫も後々でてくるだろうし 陽一さんとも進んでほしいのに~   お金ばかりかかりそう(泣)
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