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第575話

Autor: 十一
「すみません、ダンスは苦手で」凛は婉曲に断った。

男子はがっかりして去っていった。

これで終わりかと思いきや、一人去ったと思ったらすぐにまた次の男が現れる。

五人続けて断ったところで、凛は急いで早苗の手を引き、人気のない席に腰を下ろした。

隅の目立たない場所で、しかも照明も暗いため、注目されにくかった。

凛はようやくほっと息をつき、静けさを得た。

「凛さん、人気ありすぎ!私まで一緒に踊りたくなっちゃう、へへ」

「それなら考えてもいいかもね」凛も口元を緩めた。

早苗はすぐに顎を上げ、胸を張った。「そしたら男子たち、羨ましがって大変だろうな!」

「いいんじゃない?」

「最高じゃん~」

最後には二人で笑い転げた。

「食べ物取ってくる!」と早苗が言った。

「わかった」と凛が答える。

凛はテーブルに置かれていたミネラルウォーターの蓋をひねり、二口飲んだ。社交する気分にもなれず、スイーツやドリンクにも興味はなく、結局タブレットを取り出して論文を読み始めた。

食べ物をたくさん抱えて戻ってきた早苗は、その様子を見て「?」という顔をした。

なんだか申し訳ない気分になった。

場所があまりに人目につかなかったせいか、凛たちのテーブルには誰も寄ってこなかった。

ちょうどよかった。

だが、恐れていたことが起こる。考えてはいけないことを考えてしまうと、その途端に崩れてしまうものだ――

「ここ、空いてる?座ってもいい?」

「すみません、私たち――」早苗は断ろうとした。

凛は聞き覚えのある声に、はっと顔を上げた。

「先生?!どうして来たのですか?」

そこには灰色のスーツ姿の陽一がいた。外には黒のコートを着てきたのだろう、今はそれを脱いで腕にかけていた。

陽一が穏やかに言った。「ということは座ってもいい?」

凛は笑顔で頷いた。「もちろん」

早苗は五秒ほど完全に固まってからようやく我に返り、慌てて声をかけた。「庄司先生、こんにちは!先生もイベントに参加するんですか?」

「ああ」陽一は頷いた。

だが――

今日は新入生だけ招待されたんじゃなかったっけ?

やがて交流会が始まり、司会者が「サーチライト」コーナーに入ると宣言した時、二人はようやく陽一がここに現れた理由を知ることになった。

「……それではサーチライトを点灯します!最初に照らされるのは
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