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第1076話

Author: 雪吹(ふぶき)ルリ
綾音は頷いた。「うん、すぐに行こう」

「綾音、私が港まで送っていくわ」

「うん」

二人は一緒にアパートを出て、大通りへと出た。舞はどうやって真司にこの情報を伝えるか、必死に頭を回転させている。

直接真司に電話をかけるのは危険だ。そんなことをすれば、真司に疑われる可能性がある。自分の手は絶対に汚してはいけない。

しかし、今は綾音がすぐそばにいて、下手に動けば怪しまれる。どうすれば自分の正体を隠しつつ、真司に情報を伝えられるのか。

その時綾音が言った。「舞、早くタクシーを拾おう。のんびりしてる時間はないわ!」

そう言って彼女は先に歩き出し、道路脇で手を挙げてタクシーを止めようとした。

そのとき、舞の足元に一つのボールが転がってきた。次の瞬間、ある小さな女の子が走ってきて言った。「お姉ちゃん、それ、私のボールです」

舞の顔に笑みが浮かんだ。焦っている時にこの子がやってきた。

彼女にとってこの子はまるで天からの助けだ。この子は利用できる。

舞はすぐに計画を立てた。ちらりと綾音の方を見ると、綾音は前方でタクシーを探しており、こちらには気づいていない。今がチャンスだ。

舞はしゃがみ込み、ボールを拾い上げた。「このボール、あなたのなのね?」

女の子は頷いた。「うん。さっきボールを蹴りすぎちゃって、お姉ちゃんの足のところに行っちゃったの。返してくれる?」

舞は唇を緩めながら口を開いた。「もちろん返すわ。でも……」

彼女はさらに声を潜めて言った。「ちょっとだけお姉ちゃんを手伝ってくれない?」

女の子は首をかしげた。「なにを?」

舞はそっと女の子の耳元に顔を寄せ、囁いた。「お姉ちゃんの代わりに、電話を一本かけてほしいの」

女の子は目を丸くした。「電話?」

舞はすぐに困ったような顔を作り、泣き出しそうな声で言った。「お姉ちゃんね、今ちょっと困ってるの。助けてくれない?あなた、いい子でしょ?」

女の子は胸を張った。「もちろん、いい子だよ」

「じゃあ、いい子なら困ってる人を助けてくれるよね?お姉ちゃんがお願いする電話を一本かけてくれたら、お姉ちゃんは助かるの」

女の子は素直に頷いた。「うん、わかった」

舞は真司の電話番号を教え、そして念を押すように言った。「この番号、ちゃんと覚えた?お姉ちゃんの言ったこと、忘れないでね」

そう言い終わり、彼女は
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