婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました

婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました

last updateÚltima actualización : 2026-07-24
Por:  るなActualizado ahora
Idioma: Japanese
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ジュエリーデザイナーの桜井知英は、大学時代からの恋人の的場優一と先日婚約をし、幸せ絶頂な日々を過ごしていた。しかし、その幸せは優一の裏切りにより見るも無惨に崩れ去った。 幸せの絶頂から絶望へと突き落とされた知英は、行くあてもなく街を彷徨った。そんな時、突然の雨が降りだし、傘を持っていない知英は目の前のホテルに駆け込んだ。この場所で知英の運命を変える人物と出会うとも知らずに…… 裏切りから始まるシンデレラストーリー開幕!

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Capítulo 1

裏切りの雨

なぜ、私がこんな目に……まるで、この雨は今の私の心のようだ。このまま、涙も、苦しみも、虚しさも、私の感情ごと全部捨ててしまえたらどんなにいいか……

時は数時間前に遡る。

私の夢は、幸せな花嫁になること。そんなことを小さい頃、本気で願っていた。26歳になった今もその夢は絶賛継続中だ。そして、遂にその夢を叶える日がもうすぐそこまで来ていた。私の未来の夫である的場優一によって。

優一は大学の2個上の先輩だ。講義をひとりで受講していた私に、優一が声を掛けてくれた。それが私たちの始まりだ。あれから8年。順調に愛を育んだ私たちは婚約をした。私の左手の薬指には優一からもらった婚約指輪が輝いている。

「お疲れ様でした。お先に失礼します」

「桜井さん、お疲れ様。彼、気に入ってくれるといいわね」

「はい!」

私は先輩社員に笑顔を向け、足早にエレベーターに乗り込んだ。

私の仕事はジュエリーデザイナーだ。そのスキルを活かして、結婚指輪をデザインした。まさに世界に一つだけの結婚指輪。早速、私は完成したデザインを優一に見せるために、サプライズで彼の自宅に向かっていた。

ここ一ヶ月ほど、お互いの仕事が忙しく、私たちはすれ違いの日々を過ごしていた。だからこそ今日は、定時に上がり、久しぶりに優一に手料理を振舞おうと思う。最寄り駅に着いた私は、優一の自宅近くのスーパーに寄った。ベタではあるが、優一の好物の肉じゃがを作ることにした。そして、食材を購入した私は、足取りも軽やかに優一の自宅へ向かった。

優一の部屋はマンションの4階だ。エレベーターを降りた私は部屋の前に着くと、鞄から合鍵を取り出し、玄関の鍵を開けた。すると、玄関には女物のサンダルがあった。嫌な予感がした。女の勘とでもいおうか。私は音を立てないようにリビングのドアを開けた。そこは、明かりはついているものの、優一の姿はなかった。この時、私は既に察していた。この後に起こる最低な裏切りを。

自分でも驚くほど冷静に寝室のドアを開けた。するとそこには裸で抱き合う優一と親友の友華が居た。私の幸せはこの瞬間、儚くも崩れ去った。

「…………優一、友華……どうして…?」

言いたいことは山ほどあるのに声が出ない。

「あーあ、なんで今、来るかな。ほんと空気が読めない女」

「友華……?」

「だから、そういう所がうざいんだよ。分からない?あんたは私のお飾りでしかないの。それなのにあんたばっかり愛されて、幸せになるなんて許さない」

「そんな……だって、友華は私の……親友だって……」

「親友?ははっ、思ったことなんて一度もないから」

友華が大きな声で笑った。その隣に居る優一も笑っていた。

「優一、嘘でしょ?だって、ほら、指輪もくれたじゃない。私たち結婚するよね?」

「はぁ?するわけないだろ。もう隠すの意味ないから言うけど、お前のこと好きじゃない。出てけよ」

「だって。聞こえたぁ?ちーえーちゃん」

「わたしは……」

私は両手に拳を握り俯いた。怒りと絶望が入り交じり、全身が震えた。しかし、言いたいことは山ほどあるのに、上手く言葉が出てこない。

「何度も言わせないで。優一はあんたじゃなくて、私を選んだの」

自慢の恋人だった。

大切な親友だった。

だけど、この二人によって私の幸せは壊された。

「知英、バイバイ」

優一の一言で絶望に突き落とされた私は、その場に婚約指輪を投げ捨て部屋を飛び出した。

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裏切りの雨
なぜ、私がこんな目に……まるで、この雨は今の私の心のようだ。このまま、涙も、苦しみも、虚しさも、私の感情ごと全部捨ててしまえたらどんなにいいか……時は数時間前に遡る。私の夢は、幸せな花嫁になること。そんなことを小さい頃、本気で願っていた。26歳になった今もその夢は絶賛継続中だ。そして、遂にその夢を叶える日がもうすぐそこまで来ていた。私の未来の夫である的場優一によって。優一は大学の2個上の先輩だ。講義をひとりで受講していた私に、優一が声を掛けてくれた。それが私たちの始まりだ。あれから8年。順調に愛を育んだ私たちは婚約をした。私の左手の薬指には優一からもらった婚約指輪が輝いている。「お疲れ様でした。お先に失礼します」「桜井さん、お疲れ様。彼、気に入ってくれるといいわね」「はい!」私は先輩社員に笑顔を向け、足早にエレベーターに乗り込んだ。私の仕事はジュエリーデザイナーだ。そのスキルを活かして、結婚指輪をデザインした。まさに世界に一つだけの結婚指輪。早速、私は完成したデザインを優一に見せるために、サプライズで彼の自宅に向かっていた。ここ一ヶ月ほど、お互いの仕事が忙しく、私たちはすれ違いの日々を過ごしていた。だからこそ今日は、定時に上がり、久しぶりに優一に手料理を振舞おうと思う。最寄り駅に着いた私は、優一の自宅近くのスーパーに寄った。ベタではあるが、優一の好物の肉じゃがを作ることにした。そして、食材を購入した私は、足取りも軽やかに優一の自宅へ向かった。優一の部屋はマンションの4階だ。エレベーターを降りた私は部屋の前に着くと、鞄から合鍵を取り出し、玄関の鍵を開けた。すると、玄関には女物のサンダルがあった。嫌な予感がした。女の勘とでもいおうか。私は音を立てないようにリビングのドアを開けた。そこは、明かりはついているものの、優一の姿はなかった。この時、私は既に察していた。この後に起こる最低な裏切りを。自分でも驚くほど冷静に寝室のドアを開けた。するとそこには裸で抱き合う優一と親友の友華が居た。私の幸せはこの瞬間、儚くも崩れ去った。「…………優一、友華……どうして…?」言いたいことは山ほどあるのに声が出ない。「あーあ、なんで今、来るかな。ほんと空気が読めない女」「友華……?」「だから、そういう所がうざいんだよ。分からない?あんたは私のお飾りでしかないの。
last updateÚltima actualización : 2026-07-07
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裏切りの雨
優一の部屋を飛び出した私は、夜の街をあてもなく彷徨った。愛していた恋人と信じていた親友に裏切られた私は、失意のどん底に居た。もう何を信じたらいいのか分からない。いっその事、このまま全ての感情を捨ててしまいたい。存在ごと消えてしまいたい。すると、突然、雨が降ってきた。傘を持っていない私は、雨をしのぐため、目の前のホテルに足を踏み入れた。その場所は今の私には到底、似ても似つかない空間だった。煌びやかな雰囲気を直視出来なかった。私はいたたまれない気持ちで俯いた。その時、私の目から涙が流れた。惨めな自分が情けない。こんなはずじゃなかった。私はただ、好きな人と幸せになりたかった。それだけなのに……ドンッ俯いて、涙で視界が滲んでいた私は、前から歩いてくる男性に気づかず、ぶつかってしまった。「す、すみません……」私は恐る恐る顔を上げた。「あの……」「泣いてるのか?」スーツを身につけた美形の男性が私に尋ねた。「あ、これは……」「わるい、」「え?」すると、男性は突然、私の腰を引き寄せた。「ちょっと、何するんですか!」「静かに。事情は後で話す」いつもの私なら、この男性を思い切り突き飛ばしていただろう。しかし、今日の私にはその気力さえも残ってはいなかった。「桐生さん、その方は……?」「彼女は私の恋人です」えー!?恋人?さっき、ぶつかっただけの名前も知らないこのイケメンな男性が私の恋人!?私の身に何が起きているというのか?私は縋る様な目で彼を見た。「あなたにも恋人がいらっしゃったんですね」私は女性の言葉に違和感を覚えた。「元々、親同士が勝手に決めたお見合いです。桐生さんにもお相手がいるのならば、この話は無かったことにしましょう。私にも心に決めた方がいるので」「そうでしたか。奇遇ですね」私は桐生と呼ばれているこの男性と、美しい女性との会話に聞き耳を立てた。「それでは私はこれで失礼します。父には私から話しておきますので」「ありがとうございます」そう言い残して、彼女は颯爽とホテルの外で待機させていた車に乗り込んだ。「あ、あの……」「巻き込んでしまって申し訳ございません」男性は私の腰に触れていた腕を離し、私と向き合った。私は男性を見て思わず息をのんだ。洗練された佇まいに、誰もが振り返るルックスの持ち主。この方の恋人のふりを私が一瞬でもし
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捨てる神あれば拾う神あり
「先程は本当にありがとうございました」「いえ、お役に立てたのなら良かったです」「あなたは私の救世主です。感謝してもしきれません」 「そんな私なんて……」「今日、出会った人があなたで良かった」「桜井です。桜井知英と申します」私は名刺を取り出し、桐生に手渡した。 「桜井さんとお呼びしてもよろしいですか?」「はい、もちろんです」「ここのホテルの料理はどれも絶品なんです」「そうなのですね」「苦手な食べ物はありますか?」「特には」「分かりました。お酒も飲めますか?ワインは?」「はい」私は緊張のあまり上手く話すことが出来なかった。「桐生さんにお任せします」「分かりました」やっと出た一言に、桐生は笑顔で応じてくれた。見た目だけでなく、振る舞いまでもが完璧な彼を世の女性は放っておかないだろう。やはり、私のような人間がここに来るべきではなかった。いたたまれなくなった私は、窓の外を眺めた。このレストランはホテルの最上階にある。憎らしいほどに夜景が美しかった。それに比べて私は、恋人と親友に裏切られて、婚約破棄された女。その現実が重くのしかかり、私は涙を流した。「あ、私……ごめんなさい。迷惑ですよね」私は流れてくる涙を指で拭った。しかし、涙は止まるどころか溢れてくるばかりだ。「……帰ります」ここに私が居たら、桐生に迷惑がかかる。私は席を立った。すると、桐生が立ち上がり、私の左腕を掴んだ。「大丈夫。桜井さんのことを迷惑だなんて思わない」「どうして桐生さんは私に優しくしてくれるのですか?今日会ったばかりなのに……」今、優しくされたら桐生に縋ってしまう。何も無くなった私に手を差し伸べてくれる彼に。「僕は桜井さんのことを何も知りません。だからこそ、僕に話せることがあるかもしれない」桐生の言葉が私の胸に刺さった。お互いに何も知らないからこそ先入観なしで話せる。私はグラスに運ばれてきたワインをごくごくと飲み干し、ゆっくりと口を開いた。「私、婚約してたんです。もうすぐ結婚する予定でした」「はい」桐生は私の目を見て、真剣な表情で相槌を打ってくれた。 「でも、裏切られてしまった。私だけ知らなかったんです。婚約者と親友の関係を。馬鹿ですよね。愛されてなかったのに。舞い上がって……」話してて虚しくなった。所詮、愛なんて形ないもの。信じるだけ無駄だ
last updateÚltima actualización : 2026-07-07
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捨てる神あれば拾う神あり
桐生のような完璧な男性が、私なんかを選ぶはずがない。今日の出来事で懲りたはずだ。人を信用してはいけないと。「優しい言葉をありがとうございます。例え嘘でも嬉しかったです。桐生さんのお陰で少し気持ちが楽になりました」「嘘じゃないです」「え……?」「だから、僕が言ったことは全部本心です。信じてもらえないなら、信じてもらえるまで何度でも言います」「どうして?私には何もないのに……」今の私は、桐生の言葉を素直に受け取ることが出来なかった。彼を信じて、もし裏切られたら、今度こそ私は生きていけない。それに私と桐生は住む世界が違う。私は私の居るべき場所に帰ろう。「すみません、私、やっぱり帰ります」私は立ち上がった。だが、上手く足に力が入らない。意識が朦朧とする。その時、私に強い目眩が襲った。「桜井さん!」「桐生さん、すみません」桐生は立ちくらみを起こした私の身体を支え、心配そうな表情を浮かべた。「謝らないで。それより少し休みましょう」「大丈夫です。すぐによくなりますから」「だめです。顔色が真っ青だ。今だけ、僕の言うことを聞いてください。お願いします」桐生が真剣な表情で私に訴えた。「……はい」「ありがとうございます。歩けますか?」「……はい」とは言ったものの、身体に力が入らず桐生に寄りかかってしまった。「すみません」「大丈夫。桜井さんは謝らなくていい」すると、桐生は私の腰をしっかりと支え、ロビーまで付き添ってくれた。「ここに座っててください。すぐ戻ります」「あの……もう一人で平気なので」「さっき言いましたよね?僕の言うことを聞いてください。あなたを一人にしたくない」「……分かりました」私はどうかしている。今日、絶望を味わったばかりだというのに、素直に桐生の言うことを聞くなんて。だが、正常な思考も、意識が朦朧としている今の私にはできなかった。私は薄れゆく意識の中、フロントへ向かう桐生の後ろ姿を眺めた。「お待たせしました。行きましょう」「行くってどこに……?」「大丈夫。何もしません。約束します」なぜだろう。桐生の声が心地よく聞こえた。私は桐生に抱き抱えられ、エレベーターに乗った。引き返すなら今だと私の心が叫んだ。「桐生さん……」「はい」「私……」 「着きました」エレベーターの扉が開いた。ふいに顔をあげると壁に〝26
last updateÚltima actualización : 2026-07-07
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夢から醒めて
ピピヒピピピ……スマートフォンのアラームが起床時刻を告げた。私は眠気まなこを擦りながら目を開けた。昨夜は意識が朦朧としていて気づかなかったが、高価な家具に囲まれ、部屋全体をシャンデリアが照らしていた。桐生は帰ったのだろうか?私はゆっくりとベッドから起き上がった。そして、部屋のドアをそっと開けた。「桜井さん、おはようございます。体調はいかがですか?」桐生が心配そうな表情で問いかけた。「おはようございます。お陰様ですっかり良くなりました。ご心配お掛けしました」「それは良かった。コーヒー飲みますか?」「はい、いただきます」「ははっ、そこに立っていないでソファーで寛いでください。すぐコーヒーお持ちしますね」「ありがとうございます」至れり尽くせりなこの状況に慣れない私は、ぎこちなく部屋の真ん中まで歩き、いかにも高級そうなソファーに腰掛けた。そして、桐生の様子を覗きみた。こんなにも格好いい人が、私に一目惚れするなんてありえない。桐生の誠実ぶりを昨夜体感したが、どうしても彼を信じきれない私がいた。「お待たせしました。熱いのでお気をつけください」「ありがとうございます」桐生は私にコーヒーを手渡すと、ソファーに腰掛けた。私はなるべくソファーの端に座り、桐生と距離をとった。至近距離で見れば見るほど、桐生は美しく、仕草ひとつとっても優雅で洗練されていた。それに加えて、桐生グループの御曹司だ。こんなにも完璧な人間がこの世に存在することを私は初めて知った。「あの、ホテルの代金をお支払いするので……」「ん?」桐生は私の言葉に驚いた表情を浮かべた。「昨日から迷惑をかけてばっかりなので、桐生さんに看病までさせてしまったし……」「それは僕がしたくてしたことです。桜井さんの事が心配だったので。ホテル代も請求しません。気にしないで」「でも……」「それなら、連絡先を教えてくれませんか?」「それでいいのですか?」「はい。もちろんです。言いましたよね?あなたのことが好きだって」「……はい/」私は頬が熱くなるのを感じた。完全に桐生のペースにのまれてしまった。「また僕と会ってくれますか?」「それは……」「これっきりにしたくないんです。僕にチャンスをくれませんか?」断ればいいだけの話だ。何を言われても会う気はないと。それなのに、なぜか桐生の真剣な眼差
last updateÚltima actualización : 2026-07-10
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抱き締められて
桐生は私の欲しい言葉をくれる。癒してくれる。だから、桐生の言葉は私の心を揺さぶる。しかし、こういう時こそ自分の気持ちをしっかり持つのだ。桐生の優しさに流されてはいけない。 「勝手なことを言っているのは分かっています。私から、その……キス、したのに。だけど、私が桐生さんに甘える訳にはいきません」 「どうして?」 「それは……」 「すぐに次の恋に踏み出せないことは理解しています。だけど、僕は桜井さんに甘えて欲しい。辛い時にあなたに寄り添える存在になりたい」 「桐生さん、私と会ったばかりですよね?私のこと何も知らないのに、どうしてそんなに優しくしてくれるのですか?」 私は桐生を見つめ、彼の返事を待った。 「僕自身を見てくれたから」 「それは、桐生さんが初対面の私の話を真剣に聞いてくれたからです。私は桐生さんに救われました。一人では到底抱えきれなかったから」 すると、桐生は私の腕を掴み自分の胸に引き寄せた。 「あの……/桐生さん?」 「こんなにも嬉しいこと初めて言われたから」 私は桐生の鼓動を感じた。私と同じくらい桐生の鼓動もはやかった。 「すみません。桜井さんのこと離したくない」 桐生は私を抱き締めている腕の力を強めた。そして桐生は私の耳元で問いかけた。 「桜井さんのことを知りたいし、僕のことも知って欲しい。だめですか?」 その聞き方はずるい。桐生に流されてしまう。 「……だめではないです」 「良かった」 桐生が心底、安心した声音で呟いた。すると、桐生は私を抱き締めていた腕の力を弱めて、私と向き合った。 「桜井さんを必ず振り向かせますので、覚悟しててくださいね」 「顔が近いです/」 私は桐生に至近距離で見つめられ、頬を赤らめた。 「わざとです。桜井さんの反応が可愛いので」 「もう//」 「ははっ、そうやってこれからは僕に桜井さんの色んな表情を見せてください」 「桐生さん、ずるいです。さっきから嫌って言えない」 私は恥ずかしさのあまり俯いた。 「そういうこと、僕の前以外で言わないでくださいね」 「言いません/桐生さん以外に言う人なんていませんから」 「本当にあなたって人は……」 「桐生さん?」 「ん?」 桐生とふと目が合った。桐生に見つめられると平常を
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シンデレラの靴
「どうぞ」 桐生が助手席のドアを開けた。昨夜から至れり尽くせりのこの状況に私はどうしても慣れない。 「ありがとうございます」 「ドア、閉めますね」 「はい」 桐生に職場まで送ってもらうことになった私は、車内で昨日と服装が同じことに気がついた。これはまずい。同僚に詮索されるのも面倒だ。その上、同僚は私が婚約破棄したことを知らない。桐生に頼んで自宅まで送ってもらうのがいい気もするが、出会ってすぐに自宅を教えるのもどうなのだろうか?私はひとり思考を巡らせた。 「桜井さん、どうかしましたか?」 察しのいい桐生が私に問いかけた。 「その、着替えをしたくて……」 「ああ!そういう事ですか」 「はい……」 「桜井さん、お時間ありますか?」 「私は大丈夫ですが、桐生さんは11:00に会議ですよね?」 「まだ1時間以上あります」 すると桐生は職場と反対方向に車を走らせた。 ______________________ 「いらっしゃいませ」 桐生に連れてこられた場所は、普段の私が足を踏み入れる事はないであろう高級ブティックだった。 「桜井さんの好きなものを選んでください」 「それは申し訳ないです」 「あなたが選ばないなら、僕が選びますよ?」 桐生は有無を言わせぬ笑顔を浮かべて私に言った。咄嗟に私は目の前にある白いワンピースを手に取った。上品ではあるが、可愛さもあり洗練されたデザインが私の目を引いた。だが、私に似合うはずがない。私はそのワンピースを元に戻そうとした。 「似合いそう」 「え?」 「そのワンピース。桜井さんに似合うと思います」 すると桐生は店員を呼んだ。 「この服に合う靴とバッグを持ってきてください」 「かしこまりました」 「桜井さん、試着してきて」 「……分かりました」 私は桐生の強引さに負け、試着室に入った。ワンピースをハンガーから外した時、不意に値札が見えた。 「え……高い……」 私の給料の何ヶ月分もあろうそのワンピースを私は見つめた。さすがに、桐生に高級な服まで買ってもらうのは申し訳なさ過ぎる。どうやって断ろうかと考えていると、外から桐生が声を掛けた。 「桜井さん、大丈夫?気分わるい?」 「あ、えっと……大丈夫です」 私は急いでワンピースに着替え、試着室のカーテンを開けた。 「お待たせしました」
last updateÚltima actualización : 2026-07-13
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あと1分だけ
「送っていただきありがとうございました」「こちらこそ楽しい時間をありがとう」私はシートベルトを外し、助手席のドアに手をかけた。早く会社に行かなければ。それなのに私はこのドアを開けることを躊躇した。「知英さん」桐生に名前を呼ばれて、私は振り向いた。 「目閉じて」「え……//」私は桐生に言われた通りに目を閉じた。目を閉じているせいか物音が耳に響いた。桐生がシートベルトを外し、ゆっくりと私に近づいてくる気配がした。桐生が付けている香水が微かに香った。「いいですよ、目開けて」私はそっと目を開けた。「うん、似合ってる」「え、いつの間に……」「知英さんが試着してる時に」私はサイドミラーに映る自分を見つめた。両耳に白いパールがあしらわれた上品なデザインのイヤリングがついていた。「桐生さん、ずるいです」「何が?」「こんなことされたら、嬉しくなってしまいます」「僕は知英さんの喜ぶ顔も見たいので」「でも、私は桐生さんに何も返せていません」「それなら、その服を着て僕と食事に行きませんか?今晩の予定は?」「特には……」 「仕事が終わったら連絡してください。迎えにいきます」「でも桐生さん、仕事忙しいでしょ?」「知英さんと会うために早く終わらせます」桐生はいつも真っ直ぐな言葉を私にくれる。それを嬉しいと思う私がいた。「分かりました。18:00過ぎには退勤できると思います」「今夜も知英さんと会えるんですね。嬉しいな」桐生は微笑んだ。不覚にもその笑顔に私の胸はざわついた。「私、そろそろ行かないと。本当にありがとうございました。また、夜に」「はい。本当は今日の知英さんを他の人に見せたくないのですが、仕事なら仕方ないですね」すると、桐生は私の右頬にそっと触れた。「もうつねったらだめですよ。これは現実だから」「はい/」「やっとちゃんと僕のこと見てくれた」「それは……恥ずかしくて/」「どうして?」「桐生さん、格好いいんです」「おお!僕のこと、格好いいとは思ってくれてるんですね」「初めて会った時から思ってます」「え……」私の言葉を聞いた桐生が目を泳がせた。「どうかしましたか?」「本当にあなたってひとは……」「ん?」「知英さんは自覚が無さすぎる」桐生は私を見つめた。狭い車内に私の逃げ場はない。桐生は私にゆっくりと顔を近
last updateÚltima actualización : 2026-07-14
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救世主
「おはようございます」「おはよう、桜井さん。あら?雰囲気変わった?」「そ、そうですか?」「うん。そのワンピースとっても似合ってる」「ありがとうございます」先輩社員の言葉に私の顔は綻んだ。桐生が居なければこの服に袖を通すことは無かっただろう。桐生は私の知らない世界を見せてくれる。気がつけば私は桐生の事ばかり考えていた。「桜井さん、この資料コピー頼める?」「はい」私は資料を受け取ると席を立った。今は仕事に集中しなければ。今夜は定時で上がるのだ。なぜなら……「あ、もう。何してるんだろ」桐生との約束に遅れないために、仕事を早く片付けようとしている自分に心底呆れた。桐生とは昨日、出会ったばかりだ。桐生のことを何も知らないのに、心が乱されるなんてありえない。トゥルルルルルル……突然、私のスマートフォンが震えた。着信の相手は優一だった。私を裏切った優一と今更話すことなど何もない。私はスマートフォンの電源を切った。━━━━━━━━━━━━━━━気がつけば、時刻は18:00を回ろうとしていた。私は帰り支度を終えると急いでエレベーターに乗った。そして、朝から電源を切ったままのスマートフォンを起動させた。「なにこれ……」そこには、50件を超える優一からの着信があった。私は背筋がゾッとした。思い返せば、優一には束縛が激しい一面があった。普段は穏やかな優一だが、私の帰りが遅いと必ずスマートフォンを隅から隅までチェックしていた。それだけではない。私の交友関係を全て把握しないと気が済まないのだ。胸騒ぎがする。だけどどうすればいい?桐生に迷惑をかけたくないが、今はこの方法しか私には思いつかなかった。「もしもし、桐生です」「桜井です」「知英さん、仕事終わりましたか?」「はい」「では今から迎えに行きますね」言わなければ、電話が切れてしまう。「あの!助けてください」私は震えながら桐生に訴えた。「元婚約者から、大量の着信履歴が……この人、怒ると何するか分からなくて、それで、私……どうしたらいいか」「分かりました」桐生の声色が変わった。先程の優しい声とは別人のようだった。「桐生さん?」「大丈夫。すぐ行きますので、知英さんは外に出ないでください」「……はい」桐生との通話を終えた私は、一階のロビーのソファーに腰掛けた。また桐生に頼ってしまった。自分
last updateÚltima actualización : 2026-07-15
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救世主
外に飛び出した私は、桐生とすれ違った。すると桐生は私の腕を掴んだ。 「あの男ですか?」 「はい」 桐生は何をするつもりなのだろう。桐生はゆっくりと優一の車に近づいた。それに気づいた優一が車のドアを開けた。 「大丈夫。僕に任せて」 「……はい」 私は桐生の後ろに隠れた。 「お前誰だ?」 「知英さんの友人の桐生と申します」 「はぁ?知英、俺の知らない間に男の友達つくってたのか?」 優一が私に近寄ろうとしたが、それを桐生が制止した。 「まだ僕との話が終わってませんよ」 「お前、知英と友達って嘘だろ」 「本当です。だから、あなたのことも聞きました。知英さんを裏切った元婚約者だと」 「はぁ?知英、こんな奴に話したのかよ!」 優一が声を荒らげた。優一からの暴言は日常茶飯事だった。今すぐにでも耳を塞ぎたい。だが、ここで逃げたら何も変わらない。私は深呼吸をして口を開いた。 「私は本当の事を話しただけ。元婚約者が私の親友と浮気したから婚約破棄したって。いや、元親友か。あんたも、友華も私には必要ない。もう私と関わらないで」 「おい!知英!いつから俺にそんな口叩くようになったんだよ!お前は俺のいいなりだっただろう?」その通りだ。私は優一に虐げられても、彼の傍から離れなかった。私の中心は優一だった。だけど、出会った頃の優しい優一はもう何処にもいない。私の目に涙が滲んだ。「彼女が嫌がってる。お引取りを。このまま騒ぐようなら警察を呼びます」「桐生さん……」すると桐生は私の右手を握った。桐生の背中は大きく、頼もしかった。そして桐生は驚くべきことを口にした。「どこかで見たことある顔だと思ったら、的場優一さんではありませんか」桐生が優一を知っている?どうして?私は2人の会話を固唾を呑んで見守った。「なんで俺のこと知ってるんだよ」「あなたこそ僕を知らないのですか?桐生コーポレーション本社の本部長であろうお方が。ですが、残念ですね。人の気持ちを踏みにじるような人間は僕の会社には必要ない」「え……」桐生の言葉に優一の顔は青ざめた。「まさか、桐生って……」「世間は狭いですね。それと今は知英さんの友人ですが、あなたより僕の方が彼女を幸せにできる自信があります」「おい、待てよ……俺がどれだけ苦労して今の地位を手に入れたと思ってる」「自分の蒔いた種だ。
last updateÚltima actualización : 2026-07-16
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