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第74話

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そして彼女は一呼吸を置いた後、「忍さん、今は仕事があるので会社に戻らないと」と言った。

そう言うと、月子は踵を返した。

忍は唖然とした。

くそ、なんてクール女だな。

「ちょっと待て」

忍は陳列棚のそばまで歩いて行き、月子がちらっと見ていたのを思い出し、「北極星」を指さして、「これはあなたが送ったのか?」と探った。

もし認めたら、忍はもっととんでもない妄想をしそうだ。

そう見抜いた月子は「違う」と否定した。

「本当に違うのか?」

月子は忍に少々うんざりしながら、微笑みながら答えた。「忍さんは想像力が豊かだね。でも、本当に違う」

そして、今度こそ彼が何か言うのを待たずに、本当に出て行った。

忍は閉まったドアを見つめ、口元を歪めた。そして「北極星」を手に取り、カップの底をひっくり返すと、【Polaris】という英語が目に入った。

そして彼はまたカップを陳列棚に戻した。

忍の直感は彼に間違っていないと告げていたが、月子の顔からは少しもボロを覗けなかった。

この不動の冷静さは、あのあざといヤツにそっくりだ。

忍は心に秘めておくことができず、すぐに隼人に電話をかけた。
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