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第83話

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修也は月子が気持ちを切り替えられると分かっていたが、それでも無意識に心配になり、思わず彼女の方を見てしまった。

すると、月子は堂々とあちらを見ていた。

離婚したばかりの頃は、会うたびに傷ついていたから、月子が彼に会いたくないと思うのは当然だ。

しかし、彼女は徐々に立ち直り、心境も変化していった。

それに、離婚したからといって一生会わないわけではない。今後、静真と一緒に市役所へ離婚届を出しに行かなければならない。会うことさえ怖がっていたら、話にならないのだ。

月子の視線の先には、知り合いばかりが集まっていた。

静真、一樹、颯太。長身でハンサム、それぞれ違った経歴を持つ3人の男性がタキシード姿で入ってくると、確かに人目を引く光景だった。

渉も同じくスーツ姿で静真の後ろをついてきたが、月子は彼に視線を向ける気にもならなかった。

静真と颯太の間には、華やかなドレスを纏った霞の姿があった。

全身にクリスタルがちりばめられたドレスは、華やかで眩いばかりに輝き、それに合わせたアクセサリーが彼女を一層輝かせている。遠くから見ても、とても高貴な装いだ。

天音が言っていた数億円の衣装のことを、月子は知っていた。

静真だけでなく、理恵も気を遣ってくれたのだ。

だけど、それもこれも月子はとっくに全部受け入れていた。

ちらりと見て、冷淡に視線を戻した。

修也は月子が気にしていない様子だったが、それでも一歩前に出て、彼女と静真たちの視線を遮った。

月子が不快な思いをするのを避けたかっただけではない。

同時に、静真たちが月子に向けている、あまり友好的ではない視線にも気づいていたのだ。

修也は、そんな傲慢な視線が好きではなかった。

周りの心配や気遣いは、月子に自分が立ち直れないという錯覚を抱かせ、人生のどん底に立ち向かうことができず、守られ、慰められる必要があるように思わせてしまうようだ。

しかし、実際のところ、彼女はしっかりと立ち向かい、しかも上手く対処している。

修也の細やかな気遣いは彼女にとって必ず必要ではなかったが、彼の好意は彼女には十分に伝わっていた。

彼は、彼女と静真との関係も知っていたからだ。

月子は言った。「あと半月で、手続期間が終わる。その時になったら、彼と離婚届を出して、これで静真とは完全に関係なくなるからあまり心配しないで」

修也
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