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第1章

last update publish date: 2026-09-13 08:06:41

私はドアの前で立ち尽くしていた。

まるで、身体が動くことを拒んでいるようだった。喉の奥で息が止まり、目の前で起きている光景から目を離すことができなかった。

数メートル先に、ジュリアンがいた。

彼は別の女性を腕に抱いていた。

二人はキスをしていた。

まるで、私だけが彼と分かち合っていると思っていた優しさを、その女性と分け合うように。

両手に持っていた小さな箱が、ゆっくりと指から滑り落ちた。

カタン!

床に落ちた箱の音が、部屋中に響き渡った。

二人はすぐに離れた。

ジュリアンがゆっくりとこちらを振り向いた。

一瞬、私は彼の目に恥じらいが浮かぶことを期待した。

後悔の色でもいい。

ほんの少しのためらいでもよかった。

けれど、そこには何もなかった。

彼はただ小さくため息をついた。

まるで、私が現れたことで楽しい夜を邪魔されたかのように。

「マリー・ローズ……」

彼の声は落ち着いていた。

あまりにも落ち着きすぎていた。

私は一言も口にすることができなかった。

若い女性もこちらを振り向いた。

驚いている様子も、気まずそうな様子もない。

それどころか、彼女は唇の端に薄い笑みを浮かべながら、ジュリアンの腕に自分の腕を絡ませた。

まるで、彼がもう自分のものだと私に分からせるかのように。

ジュリアンは数秒間、私を見つめた。

そして尋ねた。

「もっと遅くに来ると思っていたけど?」

私は呆然としたまま彼を見つめた。

「ジュリアン……これは……何なの? 私が今、見ているものは何?」

彼は一瞬だけ視線を落とし、それから再び私を見た。

その表情には何の感情も浮かんでいなかった。

「君が見ているのは、真実だよ」

その言葉を聞いた瞬間、心臓を引き裂かれたような気がした。

私はゆっくりと首を横に振った。

「お願い……説明して……」

彼は何の感情も見せずに腕を組んだ。

「説明することなんて何もない」

その返事は、たった今目の前で見たキスよりも私を傷つけた。

三年間、私は彼と人生を共にしてきた。

心の底から彼を愛していた。

それなのに今、彼はまるで私が完全な他人であるかのように話している。

私は彼に一歩近づいた。

手が震えていた。

「ジュリアン……私の目を見て。全部、誤解だったって言って」

彼は静かに首を横に振った。

「違う。誤解じゃない」

重い沈黙が、私たちの間に落ちた。

目には涙が溜まっていた。

それでも、私は二人の前で泣くことだけは拒んだ。

そんな満足を、二人に与えるつもりはなかった。

「じゃあ……私たちが一緒に過ごした時間は……あなたにとって何の意味もなかったの?」

彼はただ肩をすくめた。

「人は変わるんだ」

たった三つの言葉。

その三つの言葉だけで、三年間の愛が消し去られたように感じた。

私は床に落ちている、開いたままの箱へ視線を落とした。

中には、私が三周年記念のために買った高級腕時計が、まだ光っていた。

何か月もお金を貯めた。

彼にこのプレゼントを贈るために、たくさんのものを諦めた。

それなのに今では、何の意味も持たなくなっていた。

私はゆっくりと腰をかがめ、腕時計を拾い上げた。

立ち上がったとき、初めてジュリアンの隣にいる女性と目が合った。

胸の奥が締めつけられた。

私はこの顔を知っていた。

あまりにもよく知っている。

「ヴァネッサ……?」

彼女は一瞬だけ目を伏せ、それから再び私を見た。

「ごめんなさい……」

その声には、少しの誠意も感じられなかった。

私は苦い笑いを漏らした。

「違う……あなたは悪いと思ってなんかいない」

彼女は黙ったままだった。

ジュリアンが一歩前に出た。

「彼女を責めるのはやめろ」

私は意味が分からず、彼を見つめた。

「いつから……?」

彼は迷うことなく答えた。

「八か月前からだ」

八か月。

八か月もの間、二人は密かに会っていた。

その八か月の間、ヴァネッサはほとんど毎日のように私へ電話をかけてきた。

私たちの関係がどうなのか尋ねてきた。

恋愛についてアドバイスまでしてくれた。

ジュリアンと喧嘩するたびに、私を慰めてくれた……。

その時にはもう、彼女はジュリアンと人生を共にしていたのだ。

全身に悪寒が走った。

突然、足が鉛のように重くなり、立っていることさえ難しくなった。

「どうして……?」

私の声は、かすかな呟きになっていた。

ジュリアンは視線をそらしてから答えた。

「もう君を愛していないからだ」

私は目を閉じた。

ずっと聞くことを恐れていた言葉だった。

再び目を開けたとき、私の中で何かが変わっていた。

痛みはまだ耐えられないほどだった。

胸の奥を、今も引き裂かれているようだった。

それでも、小さな声が私に繰り返していた。

私は、この男よりもっと大切にされるべきだ。

私は何も言わず、彼からもらった指輪を外した。

そして彼の手を取り、その指輪を手のひらに置いた。

「全部、返すわ」

彼はしばらくの間、指輪を見つめていた。

そして、完全に無関心な声で答えた。

「そのほうがいい」

私はゆっくりとうなずいた。

「ええ……あなたの言う通りね」

彼は驚いたように私を見た。

私がこんなにも冷静に反応するとは、きっと思っていなかったのだろう。

私は深く息を吸い込み、最後に彼を見つめた。

「ありがとう、ジュリアン」

彼は眉をひそめた。

「ありがとう?」

私は悲しみに満ちた笑みを浮かべた。

「ええ。私があなたの妻になる前に、本当のあなたを見せてくれてありがとう」

彼が答える時間を与えなかった。

私は背を向け、その場を後にした。

誰も私を引き止めようとはしなかった。

一歩進むだけでも、途方もない力が必要だった。

ホテルの扉を抜けると、夜の冷たい空気が頬を撫でた。

街は何千もの光に照らされていた。

車はいつも通り走り、人々は何事もなかったかのように笑っている。

けれど、私にとってはすべてが崩れ落ちたばかりだった。

それまで必死にこらえていた涙が、ようやく頬を伝い始めた。

ホテルの前で止まった最初のタクシーに乗り込んだ。

行き先さえ考えていなかった。

ただ、ここから離れたかった。

この場所から遠くへ。

すべての思い出から遠くへ。

自分自身よりも愛した男から遠くへ。

私は、この夜が人生で最もつらい夜になるのだと思っていた。

けれど、そのときの私はまだ知らなかった。

運命はすでに、私の人生を大きく変える準備をしていたのだ。

それは、予想もしなかった、決して忘れることのできない出会いによって――。

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