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MIRAとNeck

ผู้เขียน: 世界
last update วันที่เผยแพร่: 2026-03-31 12:55:40

「――で、どうしてこのお店だったの?ソロ。食事をしたかったって訳じゃないみたいだし。うん、お肉美味し!さすが一番のお肉ね……モグモグ」

 運ばれてきたステーキを一口大に切って、ジャンヌがそれを口に運んでいる。そんな動きをしながらなのに、彼女は食器から一切音を立てていないし、食べこぼしなどもない。その上、紙ナプキンでエレガントに口元を拭く仕草が様になっている所といい、ジャンヌという女性がかなり高等なマナーの教育を徹底されてきた証と言えるだろう。とても酔っ払いの腕を捻り上げて突き飛ばすような、粗野な行いをする人物の食事風景とは思えないものだが、ソロにとってそんな彼女のチグハグさはもはや慣れっこだ。それに対して特に触れる事もなく、アーデ用の肉を食べやすいようにカットしてやるばかりである。そのアーデは机の上に移動して、大きな体なのにちょこんと座ってソロが肉を切り終えるのを待っている。

 ちなみに、先程の立ち回りを目の当たりにした他の客達は、ジャンヌ達に関わるのは危険と判断したのか出来るだけ二人を見ないようにしていた。中々、処世術に長けた客達のようだ。

 手早く肉を切り終えたソロは、おもむろにトントンとテーブルの角を指先で叩いてみせた。すると、美味しそうに肉を啄んでいたアーデがクルリと首を半回転させて後方を向く。その視線の先には、一人の男が黙って静かに酒を呷っていた。

 アーデの瞳孔が大きく開き、カメラのレンズのように動いてピントを合わせると、男の顔がその瞳にハッキリと映りこんだ。すると、今度はその視界がソロとジャンヌに共有され、二人は男の方を見る事なくその顔を確認する事ができた。

「……誰?見た事ないけど」

「あいつは|Neck《賞金首》だ、名前はオルソラ・カンバス。少し前からこの国の商人|組合《ギルド》から賞金が掛かっている。手配書と人相が少し違うのは、顔を整形で少し変えたからだろう。この街には、そこそこ優秀な外科医がいるらしいからな。ただ、骨格までは変えていないようだが」

 ソロはそう言うと、再びテーブルを指先でトンと叩いた。すると、首だけで後ろを向いていたアーデは前を向き、機嫌よく食事に戻った。ソロとジャンヌも視界の共有を解いて、何食わぬ顔で自分達の食事を再開しながら会話を続けた。

「ふーん。でも、わざわざ商人|組合《ギルド》が賞金をかけるなんて、アイツ一体何をしたわけ?」

「なに、よくある話さ。オルソラの奴は根っからの詐欺師のようでな、実際には金も商品もないのに口八丁だけで何人もの商人の懐に入り込み、自分がさも大商人であるかのような嘘をついて出資や物品の横領を行っていたらしい。そうしていくつかの領を跨いで悪事を重ねた結果、いよいよこの国の商人達のほとんどを敵に回してしまったって訳だ」

「あっきれた。そんなにたくさん騙される方もどうかと思うけど」

 ジャンヌはそう言うと、背もたれに寄りかかってスーを一口含んだ。さっきまでの上品な食事方法とは打って変わった行儀の悪さだが、いつの間にか自分の食事は終えていて、もう取り繕う必要もないということだろう。こうした生まれの良さと育ちの悪さから来るアンバランスさが、彼女をちぐはぐに見せている要因の一つだ。とはいえ、ジャンヌはそれを自覚して直そうと言う気もないようだが。

「でも、大した詐欺師にしてはそんなにお金持ってるようには見えないわよ?」

「さてな。詐欺で集めたあぶく銭だけあって散財してるのかもしれんし、どこかに隠し財産として貯め込んでいる可能性もある。……どっち道、その金については俺達には無関係だ。奴を捕まえて俺達の懐に入るのは賞金だけ、そうだろ?」

「ま、それもそうね。……ところで、アイツ、|い《・》|く《・》|ら《・》なの?」

「オルソラにかかってる賞金額は200万ドルゴだ。生きたまま捕まえるのが条件だけどね」

「200万!?……それだけあれば、服と装備を新調してもお釣りがくるわね!」

「それと、当面の宿代も心配いらないな」

 ジャンヌはそう言うと、ボロ同然の自らの装いに視線を落として溜息を吐いた。ちなみに、この国の一般市民の平均月収は20万ドルゴ程である。剣や鎧といった装備は当然自腹だが、MIRAが稼げる職業と言えるかは人によって答えが別れるところだろう。

 そう聞いたジャンヌは、オルソラのような口先だけの男が相手なら、今回はボロい儲けだと考えたようだ。いくら多くの商人を手玉にとった詐欺師だとしても、力で負けるはずはない。見たところ、オルソラは華奢でそう若い男でもないのだ。取り押さえるだけなら武器も必要ないだろう。

 ジャンヌはカップに冷めて残ったスーをぐいと飲み干すと、おもむろに席を立った。そのままスタスタと、まるで洗濯物でも取り込むかのような軽い足取りでオルソラの元へ歩いて行く。先程、ジャンヌに手酷くやられた男を見ていた周囲の客達はジャンヌの動きを注視しているが、席が離れていたオルソラや、彼の近くにいた者達はジャンヌの事を知らない。その為、ジャンヌが近づいてくるまで、誰も気にも留めていなかった。

「……なんだい?アンタ」

「失礼、あなたに聞きたいことがあるの。ちょっとお話いいかしら?」

「こっちにゃ話なんかねぇな。俺は一人酒を楽しんでんだ。別に女にゃ困ってねぇし、よそへ行きな」

「あら、つれないじゃない。でも、その辺の女に困ってなくても、|私《・》は一味違うかもしれないわよ?」

「ふん、確かに、そんな薄汚れた娼婦は見た事がねぇ。火事で焼け出されたみたいじゃねぇか。妓楼が焼けて追い出されでもしたか?」

「お生憎様、そういう仕事はしてないのよ。……この格好はまぁ、名誉の負傷ってトコね」

「それで金に困って……か。どうせならもっと金のありそうな奴のところへ行けばいいものを」

「あら?あなたは十分お金持ちでしょ。色んな人から巻き上げて、たっくさん稼いでるって聞いたわ。ね、|詐《・》|欺《・》|師《・》|で《・》|N《・》|e《・》|c《・》|k《・》|の《・》|オ《・》|ル《・》|ソ《・》|ラ《・》|さ《・》|ん《・》」

「テメェ……!MIRAかっ!?」

「ご名答っ!」

 ジャンヌの言葉と動きに素早く反応したオルソラが、慌てて立ち上がる。よほど整形で変えた顔に自信があったのか、まさか見破られるとは思ってもみなかった様子だ。だがその一方で、懸賞金がかけられるだけあって、オルソラは警戒心が強く逃げを打つまでの反応や判断は極めて速い。ジャンヌの正体を見破るや否や、立ち上がるついでにテーブルの上の酒瓶をジャンヌに向けて投げつけた。

「よっ、と!そんなもの、当たる訳ないでしょう?大人しくしなさい、今ならちょっとだけしか痛くしないであげるから」

「くっ……化け物が!」

 投げつけられた複数の酒瓶を、ジャンヌはまるでジャグリングでもしているかのように片手で払い、その全てを受け止めた。何とも器用な指捌きだが、その隙にオルソラはジャンヌから数メートルほど距離を取ってしまった。とはいえ、その距離はたった数メートルである。ジャンヌが本気を出せば、一足飛びにオルソラを捕らえられる間合いだ。しかし、オルソラはそんな僅かなアドバンテージで満足し、不敵な笑みを浮かべてみせた。

「ずいぶん余裕そうじゃない。このくらいで私から逃げられると思ってるの?」

「ああ、十分だ。これだけあれば、たかが女のMIRAに怯えることなどあり得ねぇ。さぁ『|お《・》|前《・》|ら《・》、|こ《・》|の《・》|女《・》|を《・》|捕《・》|ま《・》|え《・》|ろ《・》』!」

「っ?!なに!?」

 オルソラが叫んだ途端、周囲の客達が一斉に立ち上がり、ジャンヌに向かって襲い掛かってきた。喧騒と享楽に満ちた酒場は、一気に怒号が飛び交う修羅場へと変貌するのだった。

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