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第71話:すぐには否定しない

Author: Sunny
last update publish date: 2026-08-19 19:37:15

「惹かれているんです。エマさんに」

玲の言葉が落ちたあとも、エマはすぐに返事ができなかった。

美術館の廊下には、空調の低い音だけが流れている。

窓の向こうでは夏の光が中庭の植栽を照らし、白い床へ葉の影を落としていた。

こんなにも真っ直ぐに、誰かから想いを伝えられたのはいつぶりだろう。

エレナだった頃ではない。

朝倉エマとして。

過去を持たない女としてこの町へ来てから、誰かの好意には気づかないふりをしてきた。

奏の優しさにも。

時折向けられる視線にも。

恋愛というもの自体を、自分の人生から遠ざけてきた。

だから。

今の自分が動揺している。

その事実に、エマ自身が戸惑っていた。

しかも相手は。

誰より近づいてはいけない人だ。

この人にだけは、朝倉エマの内側へ入らせてはいけない。

やはり、きちんと言葉にしなければ。

「神崎さん、私は——」

「困らせるつもりはなかったのですが」

玲が先に口を開いた。

「……つい」

珍しく、言葉の終わりが曖昧だった。

エマが顔を上げる。

玲は少し眉を寄せていた。

先ほどまで真っ直ぐに感情を伝えていた男と同じ人とは思えないほど、今度は何かを考え込んでいる。

そし
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