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第142話

Author: こふまる
アシスタントの膝上のノートパソコンには追跡車両の詳細が映し出されていた。スカイネットシステムで即座に車両を特定したのだ。

夕月は思わず額に手を当てた。

元夫ってば、本気で病んでるんじゃない?

凌一の漆黒の瞳に、かすかな笑みのような感情が宿る。

「君の元夫は、随分と執着が強いようだね」

その言葉には妙な響きがあった。まるで冬真が甥ではなく、まったくの他人であるかのような。

「本当に……病気としか思えません」

夕月は凌一の前で、冬真への罵倒を必死に抑え込んだ。

凌一は前を向いたまま、アシスタントに淡々と指示を出した。「好きにさせておけ」

黒いセンチュリー ノブレスは凌一の邸宅へと向かう。

敷地から半径五キロ圏内は、人工衛星による厳重な監視下に置かれていた。

その範囲内には監視所が点在し、邸宅から一キロ圏内に入ると、十歩ごとに警備員が立っている。

車窓の外では、巡回車両が絶え間なく行き交うのが見えた。

地下駐車場へと滑り込むセンチュリー ノブレス。

凌一が何か言う前に、夕月は期待に輝く目で尋ねた。

「先生、ここに連れてきてくださったということは……日興研究センターへの採用が!?」

夕月の頭の中では、凌一邸に掲げられた国旗の前で、守秘義務と忠誠を誓う自分の姿が浮かんでいた。

「違う」凌一の一言で、夕月の夢想は一瞬で砕け散った。

「でも、私、金賞を取りましたよ?」夕月は食い下がる。

「たかがコンテストごときが、日興の門戸を開くわけではない」

夕月は霜に打たれた茄子のように、すっかり意気消沈してしまった。

上唇を軽く噛みながら、鼻筋に落ちた髪の毛を息で払う。

薄暗い車内で、凌一はそんな彼女の仕草を興味深げに見つめていた。

彼自身も気付いていなかったが、その眼差しには思わず優しさが滲んでいた。

「これからは家で資料でも見ていけばいい」

その言葉を聞いた途端、夕月の表情が見違えるように明るくなった。

今にも凌一の足にすがりつきたい気持ちを必死に抑える。

凌一の邸宅は、彼女にとって知識の宝庫そのものだった。

車のドアが開き、夕月は瑛優の手を引いて急いで降りた。

振り返ると、秘書が凌一を車から車椅子へと移すのが目に入った。

動かない両足を見つめる夕月の瞳に、悲しみの色が浮かぶ。

車椅子の凌一が彼女の前を通り過ぎながら、冷たく
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Comments (1)
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良香
このアシスタントさん、ほんに優秀。 腕も立つし頭もキレて、且つ心を見る力も十分。両足がダメであろう叔父様の護衛としても優秀なんだろうなあ。 で、星来君?星来ちゃん?あなたはだあれ?
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