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12話

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-04-30 11:36:52

 ある曇りの日、近くの神社で祭りが行われる。曇天だというのに、祭り会場は雲を跳ね返しそうなほど賑やかだ。

「やっぱり祭りはいいね。騒がしくて、いるだけで楽しい」

 会場を見回し、トキは子供のようにはしゃぐ。

(トキさん、可愛い)

 サクはあたたかい気持ちで、きょろきょろ見回すトキの横顔を見る。

 以前、彼が祭りや人混みが好きだと言っていたのを思い出す。死や孤独を何よりも嫌うトキらしい。

 サクは人混みが苦手だが、祭りの雰囲気は好きだ。お囃子や掛け声を聞いていると、こちらまで明るい気分になれる。

「お、団子売りだ!」

「ちょっとトキさん!」

 練り歩く団子売りを見つけると、トキは目を輝かせて走り出してしまう。

「もう、困った人」

 そう言いながらも、サクの口角は上がっていた。想像以上の人の多さに戸惑いはしたが、楽しそうなトキを見れたのだから、来たかいがあったというものだ。

 はぐれないように小走りでトキに近寄ると、彼は団子を手に、嬉しそうに振り返った。

「サク、一緒に食べよう」

「はい」

 邪魔にならないよう、隅に移動し、人々を眺めながら団子を頬張る。

「んー、賑やかな外で食う団子は格
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  • 冷たい唇に紅と熱   43話

    「最後に、化粧を施そうか。今度は絶対、綺麗にするからな」  トキは新品のおしろいを選び、水で解いていく。彼女には、真新しい化粧品を使ってほしかった。おしろいを解きながら思い出すのは、サクにせがまれて化粧をしてやった時のこと。あの時は、我ながら呆れ返るほどにひどい出来だった。「まずはおしろいだ」  はけでおしろいを丁寧にぬっていく。慣れた感覚がサクの死を実感させてきてつらいが、泣いてばかりでは、彼女を美しくしてやれない。 「前より出来てる……。今度は均一に塗れてるから、安心してくれ」 次に粉おしろいを生え際にはたきこむ。 「おしろいはこれくらいでいいか」  頬紅を塗り、目元も紅で彩っていくと、死人とは思えないほど血色が良く見える。 「最後に、紅を塗るからな」  婚礼のために買った紅を。指先につける。いつもは筆でやるが、そっとなぞるように塗った。 「あぁ、綺麗だ……。生きてるお前に施したかった……。あの後、自分の顔で練習してたんだよ。白無垢を着たお前に、化粧をしてやりたくて。サク、前に言ってただろ? 化粧をしてくれる恋人は素敵って。結構上達してきたんだ」 練習用に化粧品を買い、時間を見つけては練習していたのを思い返しながら、サクの髪を優しく撫でる。 「けど、もう叶わなくなっちまったな……。俺はなんとか上手くやってくから、心配しすぎて残ったりするなよ? お前が来る前は、ひとりで全部やってたんだ。だから、お前は安らかに眠れ」 サクが極楽浄土で安らかに過ごせることを祈りながら、彼女の冷たい唇に、自分の唇を重ねた。

  • 冷たい唇に紅と熱   42話

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