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第3話

Author: 灯り
二度目の延期の際、博一が囲っていた三人の女たちが揃って大きなお腹を抱え、式場に乗り込んできた。私は知り合いたちの笑いの種になった。

三度目は、私が二人目の子を予期せず授かった時だった。

彼は式の前夜、外で作った女たちの出産に私を立ち会わせた。

分娩室を出た時、私の下半身はすでに血に染まっていた。

その後も、彼は次々と身重の女を私の前に連れてきた。

争いと諍いが日常となり、いつしかどちらも式の話題を口にしなくなった。

私が十年も待ち続けても手に入らなかった結婚式を、美香はいとも容易く手に入れる。

これまでの私の執着も迷いも未練も、すべてが滑稽な笑い話のようだ。

私は瞬きをして、こみ上げる涙を無理やり押し戻した。

そして、口角を上げて軽く微笑んでみせた。

「いいわよ」

博一は一瞬呆然とした。私があまりにもあっさりと受け入れるとは思っていなかったのだろう。

彼は私の手を握り、優しい声で話しかけた。

「秋奈、今回はすまない。いつか必ず、お前に最高の結婚式をプレゼントするからな」

私はさりげなくその手を引き抜いた。

「もう疲れた」

目を閉じ、それ以上彼にかまわなかった。

罪悪感からか、彼は珍しく不機嫌になることもなく、私の布団を整えてくれた。

「ゆっくり休め。今夜はずっとそばにいてやるから」

返事はしなかった。

だが五分もしないうちに、唐突な着信音が響いた。

博一は迷うことなく立ち上がり、低い声で「美香」と呼んだ。

彼が去っていく時に巻き起こした風を肌で感じながら、私は目を開けた。

彼が消えていく背中を見送り、スマホに届いた美香からの挑発的なメッセージを見つめた。

【離婚したなら、さっさと荷物まとめて出ていってよ。いつまで私の家に居座るつもり?】

【ばばあ、見苦しいわね。離婚してもまだ可哀想なふりして、人の彼氏を誘うわけ?】

【私が電話一本すれば、博一は這いつくばってでも私のところに戻ってくるわよ。試してみる?】

博一が去っていった方向を眺め、自嘲気味に口元を歪めた。

分かっている。彼はもう、今夜は戻ってこない。

美香がインスタに投稿した。

写真には、膝をついて彼女の足を洗う博一の姿が写っている。

彼女は得意げにこう書き添えている。

【体を屈められないから、社長様に手を煩わせちゃった】

わざわざ私をタグ付けして。

コメント欄には、博一の友人たちが美香を「奥さん」と呼び、親しげに囃し立てている。

「いいね」を押しているは、すべて私の知っている人だ。

博一はとうの昔に、美香を自分の親族や友人に紹介し終えていたのだ。

私だけが、まるで赤の他人のように扱われている。

以前の私なら、きっと取り乱していただろう。

けれど今は、ただ淡々と「いいね」を押し、スマホを閉じた。

博一という男そのものに未練がなくなった今、彼が誰の足元に跪こうと、私にはどうでもいいことだ。

翌朝、美香が勢いよく病室に駆け込んできた。

彼女は一通の離婚協議書を私の顔に叩きつけた。

その顔は怒りに満ちている。

「なんであなたが博一の財産の半分をもらう権利があるのよ!

博一は、財産はすべて私の息子に継がせるって約束してくれたわ!

一円だって、あなたになんか渡さないんだから!」

私はゆっくりと顔にかかった書類をどけ、一文字ずつはっきりと告げた。

「残念だけれど、そうはいかないわ。

あなたが住んでるあのマンションも、私名義よ。

昨夜は返信を忘れてたけれど、出ていくべきなのはあなたの方よ」

美香は顔を真っ赤にして激怒し、私の鼻先に指を突きつけて罵倒した。

「この泥棒猫!

子供も産めない役立たずのくせに、三人もの子供を死なせた疫病神の分際で、財産を分けるなんて図々しいわ!

そんなに強欲だから、子供に罰が当たったのよ!」

その瞬間、激しい怒りが込み上げ、私は美香の頬を思い切り叩いた。

だが同時に、私の頬にも強い衝撃が走り、口の中に鉄の味が広がった。

博一は血走った目で美香を抱きしめながら、私を睨みつけている。

「彼女に手を上げるなんて、絶対に許さない!」

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